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取引極悪犯女子刑務所  作者: レイジー
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スノー元副隊長の英断

 エヴァンスはモニタ画面に映る少数軍隊を見てそう呟いた。


「何ぃぃ!!?そ、それって、お前がいた特殊部隊じゃねぇか!ってことは元同僚か?」

「…あぁ」


 さらに空気を重くする室内。

イロヨクが提案を出す。


「こっ、こうなったらミトンを狙ってる黒幕がいることを正直に話そう!」

「危険だ。敵の正体も分かってないのに」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ?じゃどうすんだよ?」

「分からない…」


 エヴァンスは大きく首を落とす。


「アッ、アンタこいつらの元隊長なんだろ?なら色々知ってよな?それなら何とかしろよ!」

「知っているからこそ分かるんだ、もう打つ手が無いと…」

「おいおいおいおい、冗談よしてくれ。これまでの勇ましいアンタはどこ行ったんだよぉ??」

「俺は連行される。イロヨク、後は頼んだぞ」

「はぁ??おっ、おい!!!」


 そう呟いてエヴァンスは断腸の思いの元、正面門を開錠した。

一気に雪崩れ込んでくる8人のSHRT部隊は一目散に監視室へと迫ってくる。


「頼んだぞって何だよ?アンタはこれからどうなるんだよ??」

「…さぁな」


 やがて監視室に辿り着いたSHRT部隊。

隊長と思しき男がエヴァンスの姿を視界に捉えると、どこか感慨深い様な表情を見せ口を開いた。


「エヴァンス隊長…お久しぶりです!」

「今の隊長はお前だろ、スノー」


 旧知の仲を思わせる挨拶を交わした2人。

どこか気まずい雰囲気が周囲に広がる中、2人の会話は続く。


「本部から連絡があり我々が今回の主体部隊となり動くことになりました。ここから60km程離れた軍の秘密中継基地よりハッキングの反応を検知したとのことです。エヴァンス隊長、何かご存知ではないですか?」

「…さぁ…知らないな」

「あの基地の存在を知るのは我々含め一部の上位軍のみです。勿論貴方もその存在は知っているはず。元国家諜報部員である囚人が脱獄した直後にその基地からハッキングを検地した。エヴァンス隊長、それでも本当に何も知りませんか?」

「…」


 エヴァンスの発言に注目が集まる。


「…あぁ。心当たりは無い。悪いな」

「…」


 隊長の男は真っ直ぐにエヴァンスの目を見つめたまま大きく息をついた。

するとその男は意外な事を口走り始めた。


「ふぅ、そうですか。分かりました。それではもし何か分かりましたら直ぐに我々か政府本部へ知らせて下さい。我々はこれから調査捜索に乗り出しますので、これにて一旦失礼します」

「!?」


 エヴァンスは驚いた表情を見せた。

2人の様子を黙って見守るイロヨクとブラック。

エヴァンスは隊長の男に問い掛ける。


「…俺を連行する命令じゃないのか?」

「えぇ、そうですが現場の判断は私に一任されています。貴方が犯人である十分な証拠は無い。現時点では貴方を尋問するよりも、あまり時間が経過していない今の内に全員で捜索を進める方が優先と判断します」

「スノー…」

 

 現SHRT部隊隊長スノーはやはり真っ直ぐな目でエヴァンスを見ていた。


「まぁ…”今は”ですが。今後貴方を連行しないで済む事を祈ってます」

「…そうか。そうだな」


 そしてSHRT部隊隊長のスノーは昔話を始めた。


「エヴァンス隊長…あの時の命令違反、自分は貴方の勇敢な判断と行動に今でも強く尊敬と敬意の念を抱いています。あの時の少女は今でも元気に暮らしています。もう一度貴方に会ってお礼が言いたいと言っていました」

「…」


 この時エヴァンスは久しく見せていなかったささやかな笑顔を見せた。


「…そんなこと言ってると出世しないぞ」


 スノー隊長はエヴァンスに歩み寄り耳元で小声を放つ。


(隊長、我々は任務を遂行しなければなりません。あまり時間は無い。何かお考えがあるならばお早めに。では)


 そう言い残しスノー隊長を含めた8人のSHRT部隊は監視室を後にして行った。

九死に一生を得た3人は一気に全身の力を失った。


「ふひぃぃぃぃ~…。よ、よ、良かったあぁぁぁ…。あと少しでちびりそうだったぜぇ~…」

「ふぅ~。スノーって言ったかい?話の分かるいい男じゃないか。お前さんに負けず劣らずだよ」

「…あぁ。そうだな」

「なぁなぁなぁ、アイツ等どうやら俺達の味方ぽいよなぁ?それならこっちにも光が見えてきたんじゃねぇか?」

「いや…状況はそう変わらない。スノーの温情でほんの少し寿命が延びただけだ。彼等は直ぐに2人を見つける。そうなればいずれにしても終わりだ」

「えぇ!?何だよ、アイツ等俺達の味方になってくれたんじゃないのかよ?」

「話したろ。アレが当時の優秀な副隊長、何が何でも任務を成功させる男だ。彼等は政府の命令を受けて派遣されてる、黒幕の正体が分からなければどの道事件の真相を話す訳にはいかない。下手に巻き込めば彼等の命も危ないからな…」

「…ちっくしょう。どうすりゃいいんだよ…」


 するとエヴァンスはある種の決意をその目に宿らせた様子で突如立ち上がった。


「ん?どうしたんだい?」

「…もう1人のはぐれ者に会いに行く…。これしかない…」

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