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取引極悪犯女子刑務所  作者: レイジー
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決断の刻

 運び屋タッカー運転の元、無事隠れ家に辿り着いた3人だったが、ミトンは未だ深い悲しみに溺れていた。


「うぅ…わっ、私のせいで…うぅぅっ…」

「ミトン、アナタのせいじゃないわ。自分を責めないで」


 重苦しい雰囲気の中、3人はテーブル席に腰を下ろした。

やがてタッカーが口を開く。


「それで?これからどうすんだ?唯一の手掛かりを失ったってことだろ?」


 沈黙が流れる。口を開く事が出来ない2人を見てタッカーが続ける。


「なぁ。今回の黒幕が政府ってことなら、政府のデータベースには秘密があるんじゃないのか?」

「秘密どころかありとあらゆる不正の証拠が揃ってるわよ」

「そんじゃそれを手に入れれば形勢は逆転ってことだろ?何か作戦は無いのか?」

「無茶言わないで。内部で諜報部員やってた私が必死な思いでやっと片鱗を掴める様な世界よ?今のこの状況でどうやってそんな国家機密を盗み出せると思うの?」

「けどやらなきゃこのまま一生お尋ね者のまま野垂れ死ぬことになるんだろ?それでもいいのかよ?」

「そんなこと言われなくても分かってるわよ!私だってそんなの絶対にイヤ!」

「なら何か方法を考えろよ。アンタ政府お抱えの情報スパイだったんだろ?」

「簡単に言わないで!政府のネットワークはイントラで独立してるから外からじゃアクセス出来ない。建物の中に入って直接コンピューターを操作するのが絶対条件なのよ?」

「なら侵入すればいいじゃないか」

「侵入ですって?世界最高峰のセキュリティを誇る政府の議事堂に?ご都合主義のスパイ映画じゃあるまいし、無許可じゃ出入り口に辿り着く事すら出来ないわ。それに問題はそれだけじゃない。仮に100歩譲って中には入れたとしても、データを見るにはアクセスコードが必要なのよ。ダウンロードにどれ位の時間が掛かるかも分かったもんじゃないわ」

「それこそ何とかならねぇのかよ?元政府の諜報部員として」

「私は死刑囚よ。コードなんてとっくに消去されてるに決まってるじゃない!」

「おいおい、そんなネガティブ要素ばっかり並べてちゃ助かるもんも助からないだろ?もっと前向きに考える姿勢を見せろよ」

「考えてるわよ!!アナタなんかより遥かに!もしこの作戦が失敗して捕まったら電気椅子に送られるのはアナタじゃないでしょ?命懸けで誰よりも助かりたいと願ってるのは私達よ。私は冷静に現実を見てるの!」


 タッカーがハッカーからの猛追を受け口篭ってしまった中、突然出入り口のドアがノックされる音が響いた。


「!!?」


 椅子から立ち上がり身構える3人。

するとタッカーが玄関に近付き覗き穴から来訪者の姿を確認する。


「…男前の白人だ。いいガタイしてやがるが武器は持ってないみたいだ」

「…!」


 悟った様子のハッカーがタッカーに変わり覗き穴を見る。

そしてその姿を確認すると安心した様子でドアを開けた。


「エヴァンス…」


 そこに現れたのは元秘密部隊SHRTの隊長であるエヴァンスだった。


「…どうなった?何か情報は聞き出せたのか?」

「…」


 一同が暗い表情を見せる中、ハッカーがことの一部始終をエヴァンスに話した。


「…そうか」

「私達、これからどうなるの…」


 ミトンが不安を漏らす。


 その場に居る全員が希望を見出す事が出来ず口を閉じたまま時間は過ぎる。

やがてエヴァンスは立ち上がり1人ベランダに出た、そして外の空気を吸いながら物思いに耽っていると、そこにハッカーも現れた。


「あ、あの…エヴァンス。ありがとう」

「ん?何がだ?」

「いえ、その、脱獄の事。ちゃんとお礼を言ってなかったから。あんな形になちゃったけど、仲間に入れてくれたでしょ?」

「気にするな。脱獄には君も一役かった。お陰でシナリオは信憑性を帯びて大きく時間を稼げてるはずだ」

「ふふ。…この先どうなるか分からないけど、どんな結果になっても貴方には本当に感謝してるわ。命も助けてくれた」

「…」


 エヴァンスはハッカーからの言葉を黙って飲み込んでいる様子だった。

そして言い辛そうに口を開く。

「ハッカー。こんな状況だ、気休めは言わない。はっきり言ってもう時間はそんなに残されていない。決断の時だ…」

「!」

「このままアテと勝ち目の無い戦いを続けながら逃げるか、出頭するか、だ…」

「…前者が成功する確率は?」

「…ほぼ0%だ」

「…いくら私が黒幕のターゲットではないといっても、死刑囚が脱獄した上で出頭して刑を免れる確率は?」

「…0%だ」

「…!」


 改めて絶望に追いやられた事を心底痛感したハッカー。

静かに呼吸は乱れ始め、何かから逃れようとするかの如くあちこちに視線を泳がせる。

しかし直ぐにそれは止み、先程まで泳いでいた目に強い決意を宿らせると、ハッカーは部屋の中に入って行った。

不思議に感じたエヴァンスは後を追い中に入る。

部屋の中でハッカーはラップトップのパソコンを起こしカタカタとキーボードをタイプし始めた。


「何をしてる?」

「やるしかない!」

「!?」

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