弱者達の反撃開始
翌朝、監視室には夜勤を終えたイロヨクと起床したエヴァンス、そして呼び付けたブラックの3人が居た。
「ナニにかまけて鍵を取られただぁ?そんで脱獄させちまったってのかい?どこまで馬鹿なんだよ、お前さんは!?」
「おいおい、落ち着けって!」
「これが落ち着いていられるかい!そのせいでサイコロが…。お前のせいでまたファミリーが1人殺されたんだよ?他の2人だって計画も無しに外に出ちまって、無事かどうかも分からないのに!!」
「…ブラック、気持ちは分かるが今は落ち着いてくれ。俺達も首の皮一枚だ、団結が必要なんだ」
エヴァンスの言葉に言葉を飲み込んだブラックは床に転がる三日月の男の死体に視線を移した。
「…このクソ野郎かい?サイコロをやっったのは?…ん!?これは…」
ブラックは男の首に刻まれた三日月のタトゥに気付いた。
「あぁ、三日月のタトゥ。アルバニアの殺し屋だ。実力と仕事ぶりで裏世界では評判のいい連中だ」
エヴァンスが男の正体を指摘しブラックがそれに同調する。
「コイツ等はターゲットは選ばないが客は選ぶ。どデカイ金と権力が絡んでるね…」
「コイツが黒幕なのか?」
「いや、コイツ等は直接政治事に関わりは持たない。中立の立場を守る事でよりデカい仕事を請けやすくするためさ。雇われ仕事をするだけの連中だ、今回も誰かに雇われてるはずだよ」
「取り合えず、一旦政府に連絡しよう!」
「えぇ!?ちょっ、政府が犯人かもしれないんだろ?」
「あぁ、その可能性はやはり高い。だがこの男が死んだ事でどの道犯人は何かしらの形で異変を察知してるはずだ、もしかしたら情報は筒抜けかもしれない。だが今回の脱獄は犯人にとっても想定外、直ぐに大げさな行動は起こさず情報収集に動くはず。その上で本当に政府が犯人なのかも含めて様子と目的を探りたい。リスクはあるがやる価値はある」
「で、でもよ…もし政府が犯人だったら?呼び寄せたら口封じに殺される可能性だってあるじゃねぇかよ!」
「もしそれが出来るなら爆破事件の現場調査の際、既に実行してるはずだ。続け様に武装兵を送り込んで来たのは爆破工作でそいつを殺せなかったから、そしてこんな回りくどい方法を立て続けに取ったのは政府公認の行動じゃないってことでもある」
「…少なくとも、ターゲットはマッドじゃなかったってことかい」
「あぁ。あの時は全員現場に居た。調査に来た政府の連中が黒幕と絡んでいるならあの時に暗殺に動く事も口封じに全員殺す事も出来たはず。しかしそれをしなかったのは来た連中が黒幕とは関わりが無いって事だ」
「つまり、こっちから呼び寄せる政府の人間共は白ってことか。犯人とも意思的な繋がりは無い」
「あぁ。それはこっちから報告をする際、その情報を犯人が操作出来ない事も意味する。もし犯人がこちらの報告無線を操作出来るなら必ず阻止するはず、自分が起こした陰謀を本部に知られては面倒だからな」
「ん~、何かよく分かんねぇけど…。と、とにかく、こっちから呼ぶ政府連中は味方の可能性が高くて、今は政府に連絡するしかないってことだよな?本当に大丈夫なんだろうな?」
「ブラック、房に戻っておいてくれ。今から本部に連絡する」
「あいよ」
ブラックは監視室を出て行った。
エヴァンスは直ぐに本部に緊急応援を要請しそれはすんなりと受理された。
「よし。イロヨク、ミトンを暗殺する指示があった黒幕の存在ことは伏せておくんだ。尻尾を掴み易くするために」
「あっ、あぁ…分かった」
それから約30分後、エヴァンスの要請した政府の関係者が刑務所に到着したのだった。