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取引極悪犯女子刑務所  作者: レイジー
21/53

大きく狂った計画

 イロヨクとの一戦を終えたハッカーは生気を吸い取られたかの様な表情で部屋を出て来た。

廊下で分かれミトンの元へと戻るハッカー。

心配そうなミトンが声を掛ける。


「お…お疲れ様。あの…」

「それ以上何も聞かないで…」

「ご、ごめん。でも、その…マスターキーは取れた?」


 するとミトンは胸元に忍ばせていたイロヨクのマスターキーをちらつかせた。


「やったぁ!予定通り今夜脱獄ね?」

「えぇ。生き抜こうって気持ちがより強くなったわ。あの早漏野郎に復讐するって目的が出来たからね」

「決行は深夜0時でいい?」

「えぇ。迎えに行くわ」

「おっけ。…ねぇ、変なこと聞く様だけど…見捨てたりしないよね?」

「しないわよ。アナタが生きてる上で今回の事件を解明しないといけないんだから。アナタが殺されたら次は必ず目撃者の私達が消される。アナタは謎の鍵であり切り札なんだから」

「…よかった。それ聞いて安心したわ」

「これからどんな展開が巻き起こるか分からない。利害が一致してる内に協力し合って事件を解決するの。だから絶対に死なないでよ?」

「分かってるよ。私だって死にたくない!」

「おっけー。それじゃそろそろ房に戻りましょう」


 2人が席から立ち上がり中央部屋に戻ろうとしたその時、目の前に1人の女囚が立ちはだかった。


「…サイコロ?」


 そこに立っていたのは心理学者にして精神科医のサイコロだった。

サイコロはどこか不敵な表情を浮かべ2人を見ていた。

そして彼女の口から衝撃の言葉が告げられる。


「お2人さん、脱獄するつもりやろ?」

「!!!」


 サイコロの指摘に表情が固まる2人。


「いきなりえらい仲良しになったなぁ思て不自然に感じてたんや。けど実際はお友達になったんやない。目を合わせる回数少ないし常に周囲を気にしとる」

「か、観察してたの?」

「堪忍やぁ。性分ですねん。コソコソ嗅ぎ回らせていただきましたわ。会話も聞いとったで。今日の夜に脱獄するんやろ?」

「ち、違う!それは…」

「おぉ~っと!無駄な事は止めとき!私の腕前は知っとるはずや。嘘やごまかしは通じひんで!」

「うぅ…」


 サイコロから突き出された掌に弁明を止められたハッカー。


「…何が望み?」


 悔しそうな表情を浮かべ要望を聞くハッカー。


「私も仲間に入れてもらうで」

「!!」


 実質上の終身刑を言い渡されているも同然であるサイコロから当然の要望が放たれた。

しかし2人はこの要望を素直に受け入れる訳にはいかなかった。


「駄目なの!これ以上増えるのはリスクが高まるって。それに隠れ家には2人分の用意しかないのよ!」

「ほなブラックにもこの事バラして全員で共倒れしましょか?」

「!!」


 黒い表情で脅迫を掛けるサイコロ。

追い詰められた2人は再び言葉を失った。


「なぁ私だってこんな事したない。けど助かりたいのはみんな一緒やろ?大丈夫、何とかなるって。私を連れて行った方が絶対道中役に立つさかいに」

「…」


 顔を見合わせた2人は観念した様子を見せ身を寄せ合いサイコロに計画を共有した。


「今夜0時やな?よっしゃ。ほんなら鍵は私が預かるで」

「はぁ?どうしてよ?」

「あんさんらが本当に私の房を開けてくれる保証が無いからや。考えてもみぃ、ミトンは事件の鍵、ハッカーはサーバーにデータって人質がある。それなら私が鍵を持てばバランスが取れるやないか!」

「…」

「見捨てへんって。もしあんさんがサーバー上のデータを拡散させればここがバレてエヴァンスさん達が死ぬ。そうなったら孤立無援になる私達はどの道見付かってお陀仏なのは分かってるって!」

「だ、だからって…」

「…もし渡さへんなら、今この場で大声で叫ぶで?」

「ちょっ!…わ、分かったわよ!」


 ハッカーは渋々自身の胸元からマスターキーを取り出しサイコロに手渡した。


「よっしゃ。ほな0時な。あんじょうよろしゅう頼むで!」


 こうして3人はその場で解散となりそれぞれの房へと入って行った。

それから時は過ぎ消灯時間から2時間が経過した深夜0時。

ブラック以外の5人は運命の時を迎えた。

房の中で静かにベッドから起き上がり周囲を警戒しながら胸元に忍ばせたマスターキーを取り出すサイコロ。

そしてゆっくりと自身の牢を開錠し音を殺しながら外に出た。


「…よっしゃ」


 続けてハッカー、ミトン順に房から助け出し、3人は足音を殺しながら暗闇の廊下を進んで行った。


「今夜の夜勤はイロヨクのシフト。彼は今の時間、武器庫と浴場を見回ってる手筈。このまま真っ直ぐ廊下を進めば誰とも会わずに出られる!」


 颯爽と進み続ける3人。

するとミトンがある疑問を口に出す。


「ね、ねぇ。まさかあのエヴァンスが黒幕とかってことないよね?」

「えぇ?どうして?」

「いや、可能性の話。爆発した時はアノ人だけ現場に居なかったし、武装兵が攻め込んで来た時も護身用の銃だけで相手を制圧出来たんでしょ?少し怪しいなぁと思って…」

「た、確かに…。でも、どうして彼が?」

「分からない。でももし彼が黒幕ならこのまま彼の提案した脱獄計画に沿ってたらまずい事になるんじゃ?」


 すると不安を極める2人にサイコロが助け舟を出す。


「安心しぃ。エヴァンスは白や。私も注意深く観察しとったけど怪しいところは無かった。ついでに言うとイロヨクも本当の黒幕とはほぼ無関係や。ええ様に使われとっただけやで。今の時点ではあの2人は信用して問題無い!」

「そっか!よかった!」

「集中しましょう。兎にも角にも、私達が無事隠れ家まで辿り着けなきゃ全員死ぬんだから!」

「そうだね!行こう!」


 そして3人はそのまま廊下を進み続け中庭にまで躍り出た。

勢いそのままで正面門まで辿り着き、マスターキーを使ってついに脱獄を成し遂げた。


「やったぁ!外やぁ!」


 サイコロが歓喜の一声を放った、次の瞬間、


”ッパン”


「きゃぁぁぁあぁ!!!!!」

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