女の覚悟
監視室を出たハッカーとミトンはそれから終日2人だけで行動を共にしていた。
時折立ち止まり身を寄せ合って密談をしている様子を各地の監視カメラに収める。
「…ねぇ、上手く行くと思う?」
「…分からないわよ、私だって」
「貴女コンピューター詳しいんでしょ?パソコン使って犯人を特定出来ないの?」
「そんな事が出来るならとっくにやってるわよ!私1人にハッキングされる様な政府なら国として成り立つ訳ないでしょ?」
「そ、そんなに怒らないでよ!」
「…ごめんなさい。でもこんな状況だもの、カリカリだってするでしょ」
「…トイレ行って来る」
ミトンはその場にハッカーを残し最寄のトイレに入って行った。
するとそこには用を足し終えたブラックで洗面所で手を洗っていた。
「おや、ミトン」
「あ、ブラック!」
鏡越しに目を合わせる2人。
するとブラックはミトンの表情に気付き心配そうに声を掛けた。
「…参ってる様だね。大丈夫かい?」
「あ…う、うん。大丈夫」
「みんな参ってる。無理しなくていいよ」
「ありがとう…」
ミトンが個室に入ろうとした時、ブラックは別の心配をミトンに投げ掛けた。
「ミトン、随分ハッカーの奴と仲良くしてるみたいじゃないか?一体どうしたんだい?」
「えぇ!?」
立ち止まり冷や汗を流すミトン。
下手な言い訳は逆効果と悟り言葉少なく返答を返すミトン。
「う、うん。何でもないよ。ちょっと喋ってみたけど意外といい人だったから。こんな状況だし…」
「…」
ブラックは振り返りミトンを見たが、何かを疑っている様子は無くちり紙を取り手を拭き始めた。
「忘れるんじゃないよ、アイツは死刑囚だ。警告はしたからね」
そう捨て台詞を吐きトイレを出て行くブラック。
ミトンはほっと溜め息をつき個室へと入って行った。
同じ日の夕方18時。
夕日が沈み徐々に明かりを落とし始める事、脱獄計画の準備に入るハッカーは1人憂鬱な表情を浮かべていた。
「…はぁ。そろそろか…」
隣に座るミトンが同情を呟く。
「ご愁傷様。頑張ってね。命を懸かってるから…」
「分かってるわよ…。はぁ、これで死んだら死にきれないわ。最後の男があんな冴えない中太りオヤジだなんて…。せめてエヴァンスだったら救われたのに…」
そう言ってハッカーはイロヨクと待ち合わせている小部屋へと赴いた。
そこには鼻息を荒らしながら浮き足立ちハッカーを登場を待ちわびていたイロヨクの姿があった。
表情が引きつるハッカー。
「は、はーい。待った?」
「あ~ぁ。待ったよぉ~。待ちわびたよぉ~。俺の可愛い子猫ちゃん!こっちにおいでぇ~、ゆ~~っくり楽しもうぉ~!」
イロヨクはハッカーに身を摺り寄せ腰を抱き抱えると部屋の奥まで引き摺って行った。
小声で密談する2人。
「ちょ、ちょっと!そんなに強く掴まないでよ!」
「おいおい、そんな怖い顔しちゃっていいのかぁ~?俺達は心も身体も愛し尽くした恋人同士って設定だぜぇ?命の危険を目前にこれが最後かもと思いながら激しく、そして情熱的に全身全霊で愛し合わなきゃならねぇ時なんだぜぇ~?」
イロヨクはハッカーの耳元で囁きながらその両手を丸で蛇の様に全身に這わせ始める。
必死に堪えながら身体をくねらせるハッカーだったが、イロヨクの硬直物を自身の臀部で感じ取りその身を強張らせる。
「うぅ…」
「ほーら、リラックスゥ~。力を抜いて。女優になりなって。今俺様のテクニックで女の悦びを感じながら痺れるのと嘘がバレて電気椅子でビリビリやられちゃうのとどっちがいいんだぁ~?」
「い、生きて出られたらアンタの退職金と年金をゼロに操作してやる…」
「夢だったんだぁ~。アンタみたいなお高い女をこうしてやっつけちまうのがさぁ~!」
こうしてイロヨクの猛攻は止まらず、1枚、また1枚と2人の衣服が床に舞い落ちていく。
正面に向かい合いイロヨクの男魂が全身の血液を集め逞しくそそり立つのを見た瞬間、ハッカーは女の覚悟を決めたのだった。