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取引極悪犯女子刑務所  作者: レイジー
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ミトンは何者?

 懲罰房で待機していた他3人の女囚達も再び監視室に戻り、イロヨクから語られた真相を知った。

それを聞いたブラックは激昂しイロヨクに掴みかかろうとしたが、咄嗟にエヴァンスが正面から肩を抱きそれを制止した。


「ブラック、よすんだ」

「この人殺し!!!ろくでなしがぁ!」

「何だと?よく言うぜ、本当の人殺しはお前達だろうが!一体これまで何人その手で殺したんだよ?俺は脅されて命令に従っただけだ!」

「くたばっちまえ!!!」

「エヴァンス、こいつの指、全部へし折ってもうたれ!」

「あぁ、必要であればな。だが今は違う。みんな落ち着け!それよりももっと優先しないといけない事があるだろ?」


 全員の視線が新人囚人にして窃盗犯のミトンに集中する。

そんな中、エヴァンスが代表し質問を投げ掛けた。


「ミトン、君は一体何者だ?」

「えぇ!?な、何が?」

「どうして君が狙われる?君は政府やこの施設とどう関わりを持ってる?」

「知らないわよ!こっちが聞きたいわ!私はただのホームレスでコソ泥よ!政府だか別の組織だか知らないけど、何をどうしたらそんな連中から命を狙われる様なことになるって言うのよ?」


 エヴァンスはサイコロを見た。


「…嘘は言ってへん。何かを隠しとる様子も無い。この子とは数日の付き合いやけど、普段特別怪しいとこも無かったで」

「…そうか。なぁミトン、ここは政府高官の中でも一部の連中しか知らない極秘施設だ。そんな中でこんな大それた事を断行するのにはそれ相応の大きな理由が必ずある。どんな些細な事でもいい、本当に心当たりは無いか?」

「だから無いってば!」

「…そうか」


 手掛かりを見出せないエヴァンスは小さく溜め息をついた。続けてイロヨクが声を荒げる。


「もう沢山だ!次に連絡があった時にコイツを引き渡しちまおう!」

「自分だけ助かろうってのかい?腑抜けが!」

「うるせぇ、黒人は黙ってろ!!」

「止めるんだ!仲間割れは状況を悪化させる。それにそのままミトンを引き渡すという手筈が通るなら相手も最初からそうしてるはずだ。こんな小細工を弄す辺り何か裏がある。それが分からない内は動けない。ある種ミトンはこちらの切り札でもあるんだ」

「そもそも何でミトンはここに移送されて来たんだい?刑期2年の小物が来る様な場所じゃないんだろ?」

「その通り、あまりにも不自然だ。その上でミトンが狙われる。絶対に何か繋がりがあるはず」

「本当に犯人は政府の人間なのかい?」

「あの専用回線を使えるのは政府だけだ。ほぼ間違いない」

「やはり解せないのは”何故こんな回りくどい方法を取るのか”ということだ。明らかに黒い力が動いてる様に感じる」

「組織の中で単独犯がいるってことだと思うわ」

「!!?」


 突然確信的な発言を放ったのは元政府諜報部員であるハッカーだった。

先程まで口を噤んでいた彼女の声は一同の注目を集めた。

エヴァンスが問い質す。


「…どういうことだ?」

「簡単な話。政府高官組織の中で極秘に動いてる単独犯がいるはず。例え同じ政党であっても中では必ずいくつかの派閥に分かれるものなの、政治っていうのはそうシンプルじゃないから」


 かつて政府内で情報に関する仕事に就いていたハッカーの言葉には強い説得力が宿っていた。


「その黒幕は何かしらの理由でミトンを殺したがってるけど、周りはそうじゃないって状況のはず。堂々と連れ出せないのは正式な手続きを踏んだら他の関係者にミトンを狙ってる事が知られてしまうから。だから闇に乗じて暗殺したがってるんだと思うわ」

「…なるほど。攻めてきた武装兵が国に所属する正式な軍隊じゃなかったのもそのためか」

「多分。内部での派閥争いはよく起こってたけど、ここまで大掛かりな方法を取るってことは相当切羽詰った理由だと思う。こんな事が公になったらそいつは職を失うだけじゃ済まない」

「でも何でミトンを?」

「…皆目検討もつかないわ」


 再び場を重い空気が支配した。

イロヨクが呟く。


「…ックソ。結局フリダシかよ。どうすんだよ?やっぱり何かしらの方法でミトンをこっちから差し出すしかねぇだろ?」

「そ、そんなぁ…。死にたくない…」

「これ以上仲間が死ぬのはゴメンだよ。カイリキが生きてたら断固反対するはずだ。魂だって浮かばれない!」

「んじゃどうすんだよ?」

「戦うのさ!私等はファミリーだろ!」

「馬鹿か?次本気になった連中が何をぶち込んでくるかも分からないんだぞ?こっちは銃を扱える歩兵がたった2人。奴等が遠方からミサイルでも打ち込んで来たらそのデブ腹で跳ね返してくれるってのか?」

「もういっぺん言ってみな、小僧が!!」

「いい加減にしろ!!!」


 エヴァンスの怒声が周囲を静まり返らせた。


「この2日色々と有り過ぎた。今は全員体を休めて頭を冷やせ。これからの事はそれから考える」


 今現時点で成す術が無い事を示唆する発言だったが、それでも一同はその現実を受け入れる他無く、渋々エヴァンスの指示に従い4人の女囚達は懲罰房へと向かって行った。

懲罰房の鍵を施錠したエヴァンスが監視室に戻って来た。

イロヨクと2人きりになった空間。

するとエヴァンスは突然監視室の監視モニタを切った。


「お、おい?何してんだ?」

「緊急事態につき一時的な処置だ。そういうことにしておく」

「あぁ?何言ってんだ?どういうことだよ?」


 すると少しの沈黙見せたエヴァンスから意外なひと言が放たれた。


「ミトンを脱走させよう!」

「!?」

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