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取引極悪犯女子刑務所  作者: レイジー
14/53

君、死にたもうことなかれ

 2人の武装兵を倒しイロヨクと武器庫で合流後、他のメンバーを救出するために中央部屋に辿り着いた3人。

出入り口から静かに中の様子を伺うもそこには静寂だけが広がっていた。


「…誰も居ない。みんなちゃんと逃げられたのか?」

「ここまでそう激しい銃声は聞こえてこなかった。上手く隠れられているといいが…」


 すると3人の背後、廊下の奥から女性の声が響き渡ってきた。


「みんな!!」

「!!」


 3人が振り返るとそこにはアート、ミトン、サイコロ、3人の姿があった。

死の恐怖から一転、エヴァンス達の姿を見て安堵に肩を撫で下ろす3人。


「良かった!よし、3人共こっちに来い!」


 エヴァンスの指示を受けエヴァンス達の元に足を進めた3人、次の瞬間、


”ッパン”


「!!!」


 突然3人の背後から轟いた銃声。無慈悲なその銃弾は中央に立つアートの左胸を貫通した。


「アートォォ!!!」

「うぅ…うあぁぁ…」


 その場に膝から崩れ落ち倒れようとするアート、その刹那、アートを助けようとするミトンとサイコロを見てエヴァンスは叫んだ。


「走れえぇぇぇぇぇ!!!」


 エヴァンスの叫びと同時に背後から無数の銃弾が飛び交い始めた。

武装する3人は中央部屋の壁際に隠れ、ミトンとサイコロはエヴァンスの声に反射したかのように全力疾走し始めた。


「きゃぁぁぁぁぁ!!!」


 武装兵から飛んで来る銃弾、応戦する3人が放つ銃弾。

死の雨が降り注ぐ中、辛うじてミトンとサイコロは中央部屋に逃れ、その場に座り込み耳を塞いで怯え始めた。


「きゃぁぁぁぁ!!!」

「カイリキ!アートを回収しろぉ!!」

「援護してくれ!!」

「イロヨク、行くぞ!!」

「あぁぁぁぁあ!!ちっくしょぉぉぉ!!!」


 エヴァンスの合図を元にエヴァンスとイロヨクは身を乗り出し縦横無尽に乱射し始めた。

相手の攻撃が若干の緩みを見せた隙にカイリキは匍匐前進で進み撃たれたアートの元に辿り着いた。

そして全身の力を振り絞るようにしてアートの体を中央部屋まで引き摺って行った。

狂気の銃撃戦が繰り広げられる中、カイリキはアートの止血に取り掛かる。


「アート!アート!おい、しっかりしろ!」

「っあ、っあ、っあ…っぐふぁぁ!」


 アートの口から大量の血が溢れ出して来た。


「アート、おい、アート!!寝るなよ?目を閉じるな!…っくそぉぉ!!しっかりしやがれぇぇ!!」

「っあ、っあ、っあ…マッ、マッ、ママァ…」


 その言葉を最後にアートの荒い呼吸は止まった。

目と口は大きく開いたまま予想だにしない死を受け入れられていない様な表情をしていた。

カイリキは力なく止血の手を止め、脱力しその場にしりもちを着いた。

しかし次の瞬間、込み上げる怒りがカイリキの脳と体を支配し、武器を取り叫びながら銃撃戦の最前線へと躍り出て行った。


「うわぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「カイリキィィ!!よせぇぇ!!戻れぇぇぇ!!!」


 エヴァンスの制止を振り切りカイリキは最前線に立った。

咄嗟に繰り出した捨て身の行動は敵の意表を突き、迫る一人の武装兵を仕留めることに成功した。


「っぐぁぁあ!!」


 しかしその身を曝け出す形となったカイリキは敵の標的となり、その体に数発の銃弾を浴び、その場に倒れてしまった。


「カイリキィィィ!!!」

「クソォ!!」


 すると敵陣に残りの武装兵が集まって来た。

攻撃がさらに激化すると思われたが、突如異変を見せ始める。


「既に2人やられてる!」

「…クソォ。時間切れだ、撤退!!」


 合流して来た兵から報告を受けた隊長らしき男はそう号令を掛けた。

すると5人の武装兵達は倒れた仲間を置き去りにしその場から撤退して行った。

廊下の置くに消えた様子を確認したエヴァンスとイロヨクはゆっくりと銃を収め、緊張の途切れからその場にへたり込んだ。


「カイリキ!!」

「!!」


 敵兵に撃たれ虫の息となっていたカイリキ。エヴァンスを始め全員が駆け寄り、その姿を沈痛な面持ちで見ていた。


「うぅっ、っがはっ、っがはぁっ…。ばぁっ、ばぁっ…っぐ…グゾォ」

「カイリキ、しっかりしろ!すぐに止血する!気を確かに持て!!」


 カイリキを抱き抱えるエヴァンスはそう声を掛けたが、その表情はとても痛ましいものだった。

自身の死を悟っていたのか、カイリキはどこか冷静な表情で喋り始めた。


「あぁっ、あぁ…。っは。目は…開いてるよな?…けど殆ど見えてねぇよ…。痛みも無ぇ…。ははっ…くそっ…」

「カイリキィ、いやぁ…いやぁ!!」

「へ、へへへへへ…。せ、戦場に出たいなんて言ったからバチでも当たったかな…」

「カイリキ…」

「お、弟には…し、知らせないでくれよ。また、余計に悲しませたくないからさぁ…。頼んだよ…」


 その言葉を最後にアート同様、カイリキも静かに息を引き取った。

悲壮に沈む一同。するとハッカーがあることに気付く。


「…ねぇ。ブラックとチャイナは?」

「!」


 エヴァンスはカイリキをイロヨクに託し2人を探しに動いた。

すると中央部屋を抜けた廊下のさらに奥、清掃用具が収納されている部屋の中から漏れる人の気配に気付いたエヴァンス。

その扉をそっと開けると、そこにはブラックとチャイナの姿があった。

しかし、


「…チャイナ!!」


 チャイナはその場に座るブラックの膝に頭を乗せる形で横たわっており、その口からは鮮血が流れ、目は閉じられていた。エヴァンスから視線を送られたブラックは悲痛な面持ちでゆっくりと首を横に振るのだった。

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