人化
第3話まで、書けた!
これって、凄いかも!(作者の心中では)
目の前に走り寄ってくる漆黒の龍。
「護衛隊…… あの龍から距離を取れ! 攻撃してもかまわん!」
「クソッ、なんだあの龍は……」
27代目王、ノクト・ヴァン・ソロモンは怯えていた。
この地にはCランクの魔物か、Bランクの魔物しか出現しないはず。
だがここに現れたのは、天災級とも言われるSSSランクの魔物…… 〝龍〟の姿があった。
文献…… 伝説上の存在とも言われる〝龍〟
「だがアレは…… 可笑しいだろう…」
ノクトは知っていた。
幼い頃に詰め込まれた教育に龍の存在があったからだ。
『太古の昔、龍がこの地を支配し……』
伝承に残され一片の言葉。
それが、その意味が ノクトの中で思い返される。
『支配する龍は、守護神として奉る……』
思い返す伝承。聞かされた神託。
『この地に守護神が降臨する』と……
嗚呼、なんと言うことだ。
我を守る親衛隊に無駄死にをさせてしまう。
黒龍を恐れて攻撃命令を出したのは失敗だった。自らを守る家臣に犬死にをさせてしまうなどと……
王たる我の失敗だ。
もう遅い、と……
なにをしでかしたのだ、と……
自らのおこないを恥じる言葉が浮かぶ。
そして最後に浮かんだ…… フラン王女の姿。
まだ。死ぬわけには行かないと。
こんな茶番で死ぬわけにはいかない、まだやり残したことがある。
全てを支配する伝説の龍に挑む姿は、まさしく王としての姿だった。
◇◆◇
臣下に無駄死にをさせてはならぬ。
心に思う、ここで終わることは無いと……
「龍よ! 我々が攻撃したことは謝ろう!」
言葉を発するとともに、臣下へ攻撃中止の命令を飛ばす。
「汝を守護神として奉る故、我等を見逃してはくれぬか!」
王としての威厳は棄てる。
人の上に立つ存在として、上に立つ事を放棄した。
王が、民を守るためにした、威厳の放棄。それは配下達の眼に真の王の姿に映った瞬間の出来事。
◇◆◇
おおふ、なんだあのキラキラした青年は。
貴族か!? 貴族なのか!
「ぐぉ? ぎゃい!」
やっべ、言語が話せねぇ……
そこの貴族さんよ、俺言語喋れねぇから
「どうしたのだ龍よ? 我等の提案は了承してくれぬと!?」
いやいや、そんなわけじゃ無いけれども……
どうもこうも《人化》の手段が無いわけで……
ん? ってあれ……
身体がどんどん小さくなっていくような……
身体から小さな黒い光をともしながら、龍の形が人間の形になってゆくような。
というか、黒く発光しながら小さくなるってどういう原理なんだろうな?
◇◆◇
やはり、我等の願いは聞き届けてくれぬか……
こうなることは理解できていたが、まさか龍と戦うことになろうとは…… 思いもしなかったぞ。
「ああ、臣下達よ今ここで死ぬ覚悟は…… なんだ…と?」
自らが龍に発した瞬間、龍が黒く発光しながら小さくなってゆく。
その姿に、一瞬だけ絶望を感じた。
それだけの力が、その黒い光に秘められているのだと本能が理解した。
だがそれで引くわけには行かない。
王として、ここで挫かれるわけにはいかない。
臣下の希望を、王として示さねばならないとノクトが踏ん張る.
「攻撃準備態勢へ…… すぐさま行けるようにしろ…」
攻撃準備の命令とともに成り行きを見守る。
黒光りする龍の姿が幻想的に見え、人智の及ばぬ程のエネルギーが集約しているのが分かる。
段々と小さくなっていく龍が〝暴力の化身〟と表現するかのような威圧…… 圧倒的覇気を放つ。
死ぬ覚悟を決めたとしても、それでも尚恐怖する。それだけ龍が圧倒的だったと言うことの証明。
小さくなる、小さくなる。集約してゆき、重くなる。
力が集約し、エネルギーの密度が増す。
そのたびに背筋が凍るような寒気に襲われる。
「ぐうぉおお…… これで聞き取れるかな?」
龍が、黒光りし輝く龍が…… 言葉を放つ。
自らが想像し得ないことを平然とやってのける。その事に驚きを隠せない。
震えそうになる声で、龍へと声をかける。
「あ… ああ。勿論だとも、黒龍様」
いつの間にか人の姿を取っていた黒龍に、返答する。
一句一句話す毎に精神が一気に削られる。
そして思う、この黒龍。いや黒龍様は何者なのだ…と。
◇◆◇
身体が黒く光ってる。
まぁ。黒く光るなんてどういう原理かわかんないだろうけどさ。
光が出てくように、闇が溢れ出るような感じの光だ。
さてだ…… 《人化》について、ある程度分かるようになってきた。
光り輝く身体には一瞬驚いたが、《人化》するには〝そうした手段を踏む〟という条件があると言うことが何故か理解できたのだ。
それじゃあ。第一異世界人との交流を図りますか。
こっちの世界の言語が分かるみたいだし、話すことぐらいお茶の子さいさいだろう。
「ぐうぉおお…… これで聞き取れるかな?」
よしッ、成功。
言語に関しては成功かな?
俺が龍の姿だったから驚いているみたいだけれど《人化》した今なら普通に話せるだろう。
ならこの世界のことでも聞こうかな……
もしここまで読んでくれた人がいるのであれば
ものすごく感謝いたします ハイ。