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アレが神で、俺が邪神  作者: 猫の恣意
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邪神転生

 初めて投稿させて貰う作品です。

 至らぬ点などがありましたら、申し訳ございません。

 見渡す限りの海辺。

 リゾート地と見間違うほど綺麗な砂浜は、怖いほど静かだ。

 そう、ただ綺麗で広い空間でしかない。


 ただただ広い砂浜に、一つの影が映る。

 影は膨れ上がり、砂浜を飲み込んだ。

 海へ、空へ、宇宙へ。

 全てを飲み込もうとする影は、いつしか形を作っていく。 

 ソレは邪神、全てを否定する。絶対の神


 俺の体に、真っ黒な体に、黒い影が、俺に集まっていく。


 そう、俺にだ。


 なぜか?


 それは……



◇◆◇


 ここにあるモノが自分の全てだった。

 目の前のパソコンに映る画面が俺の全て。

 RPGゲームの最高峰に位置する。MMO RPG、その戦績が映し出される。

 映る。映る。映る。

 21XX年、最大連勝記録 100連勝。

 21XX年、最短優勝記録 1.34秒

 21XX年、動体視力測定 VRMMO時、約3倍


 映る。映る。映る

 22XX年、公式チート  ギネスブック認定。

 22XX年、人間国宝指定

 22XX年、総資産 1000兆円突破。

 22XX年、新型ゲームコントローラー発売 総資産 10京円突破。


 まだまだ続く。

 夢と思うほどの記録がまだまだ積もる。


 パソコンが鳴る。

 ハードディスクの擦れる音だけがこだまする。

 映し出される。連勝記録、チャット、アバター、ステータス。


 映し出される連勝記録に終焉が訪れようと……

 どれだけ連戦がどれだけ積み重なろうと……

 俺は、ここにあるモノ以外を否定する。



 画面が切り替わる。

 これまでの戦績から、チャットから、ゲームメニューから。全てが切り替わる。

 そして映し出される一体のキャラクター。

 黒髪黒目、顔は精悍にと整い、その身体は細く刀を思わせる。

 頭に角を生やし、背にコウモリの翼を生やした…… 一人のアバター。

 種族:滅神龍  このMMO RPGの最高峰に位置するアバターだ。


 そしてこの俺、黒乃 弥一が操作するアバターだ。



 そして画面が一気に切り替わる。

 操作画面から、戦場へと。


 画面が戦場に移り変わった瞬間、イベントリを開く。 

 俺自身の専用武器(霊刀時雨)を虚空から取り出しつつ、前へ…… 一閃。


 戦線が切り替わる。


 画面が切り替わる。


 戦場から、上空へと。


 俺にとって、プレイヤーが持つ、スキル 魔法 武具。それらは意味を成さない。

 このゲームの最高峰たる俺は、全ての技能や武具をコンプリートしている。

 俺が公式チートと呼ばれた日、その時運営から一つのスキルを渡された。それは運営からのメール(能力値50%減少)だった。

 このメールが送られたせいで、俺の戦力は大幅に落ちた。

 しかし、運営に世間からの批判が殺到したため、更少し変更(能力値25%減少)された。

 だが、俺の勢いが損なわれなかった。

 俺の存在理由がここだったから、ゲームにしかなかったから。

 だから俺は勝ち続ける。連勝し続ける。

 さぁ戦場よ、俺に連勝記録を貢いでくれ……

 俺はスキルスロットから、在る一つの魔法を選択する。

 それは、《スキル:真の姿》。自身の種族の原初に姿を変えるというモノ。

 これは、俺の種族の固有スキルだ。その上消費するモノはない。運営のせいで十分というタイムリミットが付いているが、それでも破格の性能を誇る。

 俺はこれを発動する。今さっき空へ飛んで視界に戦場を捉えたときこそ使えるスキルだから。

 さぁ始めよう《スキル:真の姿》……


 俺の身体が龍に変化する。この《スキル:真の姿》は全能力約1000倍と、《スキル:龍の息吹》を一時的に獲得するというモノ。

 そして、そのスキルを躊躇なく発動させる。


 さて、《スキル:龍の息吹》発動。

 画面が白に変わる。

 白に変わる。白に変わる。変わる。変わる。変わる……

 この戦場というフィールドから、生存者がどんどん減っていくのが分かる。


 白い画面にウィンドーが開かれる。

 今までに何度も見てきた。

 そして、これからも見るであろう、俺の象徴。

 金色に輝くウィンドーには、こう書かれている。


【You・Win クエストクリア 戦績発表 ボーナスアイテム】


 いつも通りのウィンドウに幸福感を覚えつつ、戦績を確認していく。


 そのうち、視界がぼやけ始めて。


 視界にウィンドウを見続けて、捉え続けて。


「ああ、連勝記録…… 更新だな」


 と、最後に言って。俺は意識を手放した。



◇◆◇



(これは、なん…だ?)

 目の前に広がるのは、いつものパソコン…… ではなく。

 広大な海辺の砂浜だった。

 目の前に広がる。現実味を帯びる風景に俺――黒野 弥一――は呆然とする。

 白昼夢と思える光景に、徐々に意識を覚醒させてゆく。

 ここが現実だ と本能が伝え、理性が否定する。

「どこだよ…… ここ」

 独り言を呟き、現実を否定しようとして、腕を振るう。


 振るった腕から黒い靄が溢れ出る。

 黒い靄は、辺り一帯に沈んでいき黒く染める。


「え?」


 現実を否定しようとしている弥一に、黒い靄は嘲笑うかのように広がっていく。

 ある程度まで広がった黒い靄は、逆流するかのように身体に流れ込んで行く。


「このッ、離れろ!」


 黒い靄が自分の身体から出てきて、自分の身体に増幅して戻ってくる。

 そんな原始的嫌悪を覚えるかのような光景に、弥一は腕を振り払う。

 腕が千切れるほどふるって、黒い靄を引きはがそうとした。だが離れるどころか腕に纏わり付き腕と一体していく。


 黒い靄は、腕から胴体へ行き、胴体から全体へ浸食してゆく。

 身体の体積が増す。重量が増す。黒に染まる。

 浸食される身体に自分が自分でなくなってく感覚さえ覚える。



 ――――――――――――――――

 ――――――――――――

 ――――――……



 幾つもの時がたったのだろう、前の海に夕日が灯る。

 黒い靄は、もう弥一の身体の中に完全に入ってしまった。


 そして、変わった。


 身体が、種族が、能力が。


 弥一の身体は、懐かしくもあり全てだった…… 一つの身体になっていた。

 身体に纏わり付く黒の靄は、漆黒の鱗と光銀の髪へと変わり。

 頭に煌めく銀の鬣をもち、身体に吸い込むような黒の鱗をもつ。

 一柱の龍の姿が、ここに顕現した。

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