言葉はいらない
「はい、カプチ―ノですね」
ココは無愛想に答えた。
聞いた事のある声の人は沢山居るわ、世の中。
ココはスチーマ―を手に持ち、声の主を見たが、
その男性がジェフリ―だとは気が付かなかった。
ジェフリ―は友人宅でのパーティーの帰りがけ、酔い醒ましにこの店に寄った。
ジェフリ―がココに気が付いた。
我が目を疑った。二年近くの間、ロスアンゼルスを彷徨うように探した彼女がここに居る。
言葉が出ない。
「……………………」
ジェフリ―はカウンタ―越しに、ただ彼女を見つめるだけ。
声を掛けたら、君は逃げてしまうかい?
あの別れは、やはり本当の別れで、自分だけがそうではないと勘違いしているって。
もう、お互い全くの他人のつもりなのかい、ココ
愛だと信じたのは僕だけだったと、君はこれから僕に言うのかな
「はい、どうぞ」
彼女は疲れた様子でカウンタ―にカプチ―ノを置いた。
「ココ」
「……………………!!」
ジェフリ―!
彼は別人のように変貌していた。げっそり痩せて、頬がシェイプされている。短く揃えられたヘアスタイル。陽に焼けた顔。
でも、瞳は変わらない。あの時の優しい瞳のままだ。
ココは両手を口に当て、やがて彼女の瞳から大粒の涙がこぼれた。
制服の半袖ポロシャツの腕には、痛々しい大きな縫い傷。
「ずいぶん、探したよ」
ココは涙をこぼした。
「仕事終わるまで待ってるよ」
ココは頷いた。
完
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