愛し合おう
二人は北海道で5日間を過ごした。
札幌や函館、大沼公園や大自然を訪れた。
「今、私たちは別人よ」
「どういう意味」
「ロスアンゼルスにいる時と同じじゃないでしょう?」
ジェフリ―は、二人のロマンスがこの旅行の間だけのもの、だという意味にとらえた。
「ココ、愛してる。ロスアンゼルスに戻っても変わらない。別人なんて、言うなよ」
「不思議だわ。日本はこんなに狭いのに息苦しくならない。ロスアンゼルスは広いのにどうして気持ちが苦しくなるのかしら?愛さえも信じられなくなるわ」
それは競争社会だからさ。
いっそのことふたりで、何処かへ行ってしまうかい?
ジェフリ―とココは毎晩愛し合った。
ジェフリ―は、彼女こそが運命の女性だと感じる程、狂おしく愛を感じた。そして、全て片付いたら結婚を申し込むつもりでいた。
素晴らしいバカンスも、ココのオ―ディション落選と祖母の実家訪問でラストとなった。
ロスアンゼルスに帰ったジェフリ―を待っていたのはフランソワの逆襲であった。
「ココという女と日本へ行っていたの?パスポ―ト見せて」
「駄目だ」
「どうして?」
「とっくに僕たちは破綻している。これは僕のプライベートだよ。見せる必要はない」
「解ったわ。弁護士をたてましょう」
「僕が出て行く。財産の半分は君のものだ。キングは連れていく」
ジェフリ―は翌日から借家探しが始まった。弁護士を探し協議離婚だ。
朝の散歩にココが姿を現さなくなっていたが、携帯で連絡をとるだけで、彼は安心していた。自分同様彼女も多忙であったからだ。
「ココ、ジェフリ―の奥さんが来たわ。じつは、奥さんのフランソワとは職場が同じだったのよ」
「嘘でしょう?」
「嘘だと言いたいわよ」
「何て言ってた?」
「別に」
ランデイの『別に』は、相当酷く大騒ぎしたって事。
「ランデイ、あなた職場で不利になるわ」
「大丈夫、口喧嘩で負けた事ないから」
「貴女には絶対迷惑かけられない」
「いいのよ、そんなこと。差別はとっくに受けてるのよ、黙ってたけど」
そうなの?ランデイ。
ココは頭を軽く殴られたようなショックだった。
誰にも迷惑かけたくない。 自分には能力はないかもしれない。でも、人に迷惑だけはかけられない。
それが、自分の決めたル―ルだから。
そのココの気持ちを後押しするかのように日本のエ―ジェントから国際電話が入った。
オ―ディションに合格した女優が別の仕事のためキャンセルをした。二番目にココが良かった。
日本でモデルの仕事をしないか?という誘いであった。
続く