第3話
「次に会えるの、いつになるかな?」
「NOAが戻ったらまた実家に戻るから、それまで元気で」
「次、いつ日本に帰ってこられるんだろうね。長いのかな次の航海」
今からどこかへ旅立つ者、戻ってきた者。悲喜こもごもといった会話が耳に入ってくる。
セントラルステーションの人の往来は多い。ここは日本各地に続くリニアの起点でもあり、わずかに残る空港へのアクセス拠点でもある。しかし、今の時代空の交通は隕石のこともあり少し下火になっている。全く飛んでいないわけではないが、安全性を考慮して近距離航路がメインだ。今は圧倒的に海の交通が世界の主流である。いってみればNOAもその産物か。NOAの役目はそれだけではないが。
日本の人口の四分の一がこのTokyoに集中している。今日本は列島ではなく諸島である。いつからか教科書にもそう記載され出した。それほど陸地である場所は減った。人が住める場所は少ない。最盛期の一億を超えていた日本の人口は、五千万程度まで減った。密度という点では以前にもましてTokyo一極集中の構図が出来上がった。日本人以外も住んでいるから昔よりももしかしたらゴミゴミしているのかもしれない。
席に付くなり飲み干してしまったコーヒーをもう一杯注文する。ヒューマンレスのドリップマシーンに携帯端末をかざし料金を支払う。注がれている間カフェの外を見ていると、抱き合って別れを惜しんでいる男女が見える。
注がれたコーヒーを取り出し再び席に戻る。そしてしばらくするとさっき見た男女の女性の方が隣の席に来た。まだ少し泣いている。
自分は泣くことはやめた。というより耐えたといったほうが正解かもしれない。いつまでもそれでは彼女を悲しませてしまう。ただでさえ年に一回会えるかどうかなのだ。さみしい顔で別れることはよそうと思った。仕事にのめりこんでいるのも、その悲しさを少しでも紛らわすため。仲間がそれを助けてくれるし、いい職場に巡り合えた。それでも、涙腺ってのはたまにいうことを効かない。
「次に1番線から発車致しますハカタ行が、間もなく入線いたします。ご乗車のお客様は…」
出発まで10分を切った。残ったコーヒーを流し込み乗車ホームに向かう。リニアは残った日本の地方都市をつなぐ重要な交通網。改札をくぐり降りてきた人波を避けて乗車する車両へと向かう。
それなりに乗客はいる。自分のように元棲んでいた土地に戻る必要がある者もなんかも多くいる。埋まり切らない指定席に腰かけしばらくすると発車のベルが鳴り、音もなく静かにホームを後にする。
発車するとすぐにTokyoから抜け海の上に出る。元々横浜という街だった辺り。ここも2050年代半ばの隕石落下で水没している。名残はほとんどない。遠くに見える沈んだビル群の頭が少々見える程度だ。車窓はほとんどが海。海上からかなりの高さに敷かれたレールの上を走るリニアからは、遠く水平線が見える。仕事でも毎日のように見て飽きている光景。
ヒロシマまで2時間程度、少し眠ることにしよう。
「また、あの夢見るのかな…」