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ラプラスの狂典-Laplace of Record-  作者: その手紙は何処へ行く/今西三田郎?
続きの譚『現実構築<リアリティコンストラクション>』
13/23

六話 『竜撃の調べ+++前編』

毎日投稿でいきますと三段になると思われます。これからもよろしくお願いいたします。

「ん、ここは……。」


 プティは見知らぬ天井を見ていた。見るからに木造建築なのもあってか自然のいい香りがしてまた眠ってしまいそうである。しかし、プティは翼竜の攻撃により吹き飛ばされ失神してしまったのだが、いまどうして生きているのだろう。

 多少意識を虚に彷徨わせていると、右側から地面の軋む音がする。足音だ。

 

「あ、目覚めたんだ。こんばんは、そして初めまして。エスペラーサっていうよ。エスペって呼んでね!」


 こんばんは、となると既に刻は夜。思えば窓、というよりも網だが、煌びやかな月光がプティの目前を突き刺していた。こんな時間だというのに、騒がしい娘だ。思うと、ふときになる姿。淡い燐光を放ち飛行する小さな少女。青い、蒼い、碧い。


「精霊、ですか。珍しいですね。」

「そう?」〔かしら?〕


 精霊を使役しているものはそう珍しくもない。しかし、プティの場合は違う。人も、精霊も限られている空間で出会えた精霊術師、その数、二。たった二人だ。その二人は極端に強力な精霊を使役していたが、勿論この二人が特別才能、人柄が気に入られているだけであって、誰でも強力な精霊は使役できない。その上……

 

「精霊が、二、六、十。……どれだけいるんですか。」


 そう、プティの常識では精霊は一人に一人、とまあ少しおかしいが、なのだ。実際その常識は間違っていない。一人に一人、それはどこも同じで、ただエスペがおかしいだけである。おかしいというのも失礼なので、特別な才能を持っているとでも言おうか。

 プティは体を持ち上げ、木造りのベッドに座る。途中、エスペが身を案じていたが、それほど痛みもないらしく、通常の動作は問題なくできていた。

 

「そうね。私の記憶が正しければ確かに一人に一人なんだけど、これもまあ仕方ないのかなあ。」

〔世の中は常に不規則なのよ。〕

「確かに。いきなり世界が滅んだとしても、予測なんてできないからね。そうですか。」コホン。プティは一つ嘆息する。

「遅れましたね。助けてくれてありがとうございます。翼竜は、大丈夫でしたか?」


 と、大きく遅れるもお礼を述べる。

 

「どういたしまして。……あ、あそこにいた理由はわかるけど、どうして翼竜に吹き飛ばされたの?」

〔それ、私も完全に忘れていましたわ。〕


 案外、ボケているのはエスぺだけではないのかもしれない。プティは少し笑うと、語り出す。

 

「そうですね。まあ、ゴブリンを狩るために来たのはわかると思います。そしてゴブリンの群れとやらを探していたのですが、運悪く翼竜と遭遇してしまいまして。逃げようと思ったもののあまり持ちませんでした。なので戦うことを決意するのですが、翼を傷つける程度が今の僕の限界です。正直言って、逃げるために戦ったのですが、最終的には救われる形となりました。」

「なるほど、わかりやすい。」

〔貴女と違ってね。〕

「……むう。」


 精霊の言葉にエスペは頬を大きく膨らませる。事実だから反論できない。しかし、態々口に出す必要性もないだろう。つまり、不貞腐れている、拗ねているのだ。

 気を取り直してか、一つ切り出してきた。

 

「どうして、翼竜に追われていたの?」


 話の核心部である。さて、なぜプティは翼竜に追われたのか。

 

「目に入ったからではないのですか?竜ですし。」

「え?」〔はい?〕二人の声が重なる。

「えっと、竜って基本何かないと攻撃的な態度をしないよ?穏便だよ?平和主義だよ?」

「それは初めて知りました。一度竜を殺したことがありましたが、あの時は唐突に襲われましたからね。焦りました。まあ、邪竜ですし仕方ないのでしょうけれど。」


 何も考えずに言ったであろうその言葉は、大きな地雷であった。

 

「竜を、殺した!?」


 エスペは大袈裟に頭を振り上げる。そして、額に手の甲を乗せる。ため息。

 

「竜殺しは重罪だよ。」

〔ええ、露見すれば即刻死刑ですわね。〕

「ええ……。」


 その言葉に露骨に嫌な反応を示すプティ。それもそうだろう。何も知らずに行っていたことが、ここでは重罪、即死刑などと言われれば不愉快にもなる。相手に対してではなく、これからの未来に対して。

 

「竜は世界に五頭しかいないんだよ。それを殺したって……。ワイバーンとか、そういうのじゃないの?」

「多分その五頭じゃないと思います。それに、ワイバーンは群がる虫のような奴らを指しているんですよね?そうではなく、邪竜です。」

「邪竜?」

〔名前からして卑しげな感じがするわね。〕


 邪竜、二人にとっては聞き馴染みのない言葉であった。そもそも、邪竜という概念は存在しているのだが、その発見例は全くない。あるにはあるのだろうが、何のつもりかほとんど情報から掻き消され、それを知るものは王族とその側近のほんの一握り程度だ。

 

「邪竜っていうのは闇堕ち竜、堕天竜だとかも呼ばれますが、つまり一定以上の『竜格』を所持している上で、悪事に染まった竜のことを指します。この場合竜というカテゴリには入りますが、同じ竜に敵対視され、あまり時間を経たずして殺されます。基本はそうなのですが、一部しぶといのがいましてね。それが僕たちと遭遇したのですよ。偶然、ね。……竜を悪く言うつもりはありませんよ。飽くまで邪竜です。」

「それが、原因かも。」


 エスペはふと呟く。

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