表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

プロローグ

大体あらすじの通りです。

主人公の名前が使いまわしなのは単に思いつかなかったからで…。

正直前作は結構気に入っていたので、どうにかして残してあげたいなという気持ちもありました。

ですが全く関連性はないので、当然主人公も全くの別人とみてくださって結構です。

 流れる水の音、風になびく木々の葉、そしてその葉の隙間から覗く青空と木漏れ日…。


 ハイキングや山登りなどであれば絶好の癒やしの空間であろう、緑の生い茂る森の中に彼ーー柳佐助やなぎさすけーーは仰向けになって手足を伸ばしていた。


 普通なら(・・・・)湿った土の匂いと、風が運んでくる緑の匂いが、日頃のストレスを癒してくれるのだろう。だが佐助の心の内にあるのは、混乱と焦燥感、そして微かな好奇心だった。佐助はとりあえず呟いた。


「……ここどこ?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 時は数時間前に遡る。


 英語が苦手で成績は中の下。帰宅部の癖に運動は得意。趣味は漫画にゲーム、筋トレ、甘いもの巡り。得意料理はチャーハン。休み時間には悪友と痴話話に花を咲かせて周りの女子をドン引かせ、それでもユーモアのある話し方や話題でクラスの輪の中心にいる。柳佐助はそんな、割とどこにでもいそうな高校生の一人に過ぎなかった。小中と続けてきたサッカーも、高校では熱も冷め、体育の時間に現役部員と張り合うといった機会でしか触れることはなかった。


季節は初夏を迎え、居眠りで授業の7割を潰した佐助は、コンビニで買ったソーダ味のアイスを齧りながら家へ向かっていた。来年には大学受験が控えており、勉強においては今まで全く積み重ねが無い佐助が勉強漬けになるのは目に見えていた。だが佐助に今のうちに挽回しようという考えはさらさらなく、今のうちに遊べるだけ遊んでいよう、という誰もが抱いたことがあるであろう精神で、必死に楽しんでいた。


 その楽しみの一つが、『可愛いもの』である。筋肉質で、友達からは「ガチムチ」とからかわれることさえある佐助(身長166センチ、体重59キロ。体脂肪率が低いのか、妙にガチムチした体型)だが、猫でも犬でも『可愛いもの』を見つけ、スマホのカメラで写真を撮るのがやめられないのだった。これといった理由はない。おそらく女子が「○○とご飯!」だの「今日の足元!」だのSNSで呟くのと変わりはない。


 ちょうどアイスを食べ終わった頃、通りかかったのは廃工場だった。かつては化学薬品を作っていたらしいのだが、佐助はそんなことには興味はなく、工場が閉鎖した時も機械が動く音がしないのに気づきはしたものの、大して気にはせず、記憶からも薄れていった。10年ほど前に閉鎖してしまったその工場は、今や手入れも行われておらず、雑草が生い茂っているのが高い塀越しでもわかる。出入り口にある柵はぼろぼろで、簡単に中に進入できそうだった。その出入り口を通りかかった佐助だが、そこで見つけたのは佐助の感性に『どストライク』なものだった。


「あ、ウサギ。」


 そう、真っ白なウサギが目の前を横切り、工場の中へと駆けていったのである。だが佐助の住むこの地域はド田舎という訳でもなく、田舎の中の都会くらいの立ち位置であるはずだ。しかも工場周辺は住宅が多く、野生のウサギはまずいないはずだ。だが佐助は考えた。もしかしたらあのウサギは誰かに飼われているもので、捕まえておいた方がいいのではないか…?と。「可愛いから放っておけない」という理由が9割を占めているが、あくまでも名前を知らぬ誰かのため、と自分に言い聞かせ、佐助は立ち入り禁止の看板が張ってある工場の柵の隙間に体を滑り込ませた。


 脳内でどんな不可能なミッションも成功させるスパイ映画のテーマを流しながら、佐助は草むらを歩んでいく。


「めっちゃ可愛かったな…。絶対に捕獲せねば…!」


 鼻息を荒くし、草むらをずんずん進んでいくその姿は、傍から見れば少し危ない人に分類されるレベルである。くるぶしと膝の間くらいの高さの草を踏みながら、右へ左へと視線を飛ばす。少し遠くに建物と木がある以外は、唯の草むらだった。ウサギの大きさは30センチほど。草にまぎれていても白い背中がはみ出すくらいなので、見晴らしのいいこの草むらではすぐに見つかるはずだった。


 だが5分ほど草むらをうろうろしても、ウサギどころか羽虫一匹さえ見当たらない。それどころか車の通る音さえせず、異様な静けさを放つこの空間に、佐助は不穏なものを抱きはじめた。


「おっかしいなぁ…。もしかしたら建物の方に?」


 既にこの草むらから離れたという可能性を考え、佐助は建物の方へと歩きはじめた。しかし…


「ぬぉあっ!?」


 踏み出したその瞬間、あるはずの地面は消えており、底も見えぬ崖へと変貌していた。完全な前傾姿勢だったので踏みとどまることもできず、成すすべもなく闇の底へと落ちていく佐助。「可愛いものには棘がある…なんちゃって」とつまらないことを考えながら、佐助は自由落下に身を任せた。

はじめましての方ははじめまして。すーさんと言います。

この度は「おとぎ話の世界が」を読んでいただき、ありがとうございます。

定期更新は頑張っていきますが、もしかしたら遅れたりするかもしれません。


次回投稿は土曜20時です。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ