死と起源
死んだ体は二度とこの世に生命を持って現れる事はない。
それが、この世界の秩序であり、絶対的なルールである。
しかし、それが世界の秩序であろうが、神が決めたことであろうが、関係はなく、今現在人間は、生物を蘇らせる事など出来はしない。
だから、こそ僕は今この現実を認めたくない。
彼がこの世に生をもたらす事が無いということ。
口から言葉を発する事が無いということ。
彼の笑顔が見れないということ。
だから僕は、今、彼の亡骸の前で項垂れているのだ。
***
俺は彼に突然殺された。
本当に唐突に。
きっかけはひとつの小さな口論。
些細な事柄が、妬みや恨み、怒りを糧に成長し、人を殺す行為にまで彼の心を動かした。
ナイフでメッタ刺しにされたあの時の痛みは今も残る。
心にも、体にも。
ただ、俺の体は考える事しか出来なくなっていて、今の周りの状況を察すのは不可能。
それが、死ぬと言う事なのか。
今思い返せば中途半端な人生だった。
彼女も出来ず、青春を楽しむことなく死に至る。
それも、親友の手によって。
***
それを見た神は、こう言った。
「人間は愚かだ。死んで尚生き続けるという事を知らず、
死して全てが終わると考えている。この地球という世界に生を授かった時生まれた星の事を忘れる。そして、この世界の『人間』となりて生きる。そして、死ねば生まれた星に戻り、地球というバーチャル世界についての論文を作る。それだけの事。それなのに、生きるのに皆が一生懸命だ。皆が皆、自分の体が作り物だということを忘れて。」