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第一話――⑦

そのへんに荷物を放り投げベッドへとダイブした。軋むベッドに柔らかい布団が倉を受け止める。横を見ると銀次郎も同じようにベッドに寝転がっていた。

 手を頭の上で組み、銀次郎に声をかける。

「なぁ、銀次郎」

「……」

 返事がない。もう一度声をかけてみる。

「なぁ、銀次郎」

「……」

 ――なんだよ、しかとかよ。話が進まないじゃないか。

「なぁって、話が進まないからさ返事ぐらいしてくれよ」

「……」

 いつまでも無言を貫き続ける銀次郎に対して少し腹立たしくなった倉はのそりと起き上がり銀次郎のもとへと向かう。だんまりができない距離で叫んでやろうと銀次郎の顔を覗きこむと――――

銀次郎は目をつぶり、穏やかな呼吸をしていた。そこにいつもの倉を馬鹿にしたような表情はない。

 ――も、もしかしてこいつ……ね、寝てるのか……?さっき帰ってきて、ダイブしたばっかだってのに寝るのが早すぎやしませんか、銀次郎さん。

 寝たものは仕方がないから倉は一人で窓際に設置された机に向かい、自らのパソコンの電源をつけた。何に使うかは単純明快。もちろんゲームに決まっている。

 ――さてさて、今日は一体何をしようかなー。昨日クリアしたゲームでストックは切れたしFPS(一人称シューティングゲーム)でもしようかなー。

 フンフンと鼻歌交じりにパソコンの起動を待つ。FPSは銀次郎ほどではないが、倉の得意なゲームの一つだ。

「今日は何キルしようかなー」

 何てことをつぶやいているうちに、意外とハイスペックなパソコンはウィィィィンという起動音と共に画面を明るくした。

 早速マウスを握りインターネットを選択。カチカチッというダブルクリックの軽快な音に合わせてタブが開かれていく。お気に入りのオンラインゲームのサイトを開きユーザー名を入力してからいざ、ゲームスタート。

 軽いゲームのチェックが終わり画面はロビーへと移り変わる。ゲームが始まっていて、入室できそうな部屋を見つけて乱入。

 ダンッダダッダダン。ダンッダダッダダン。と鳴るBGMとともに愛銃のM4A1を持って敵陣に突入をしていく。復活(リスポーン)地点(ちてん)から扉を抜け、カーソルを敵陣地方向へと向けると赤い色をした敵が銃を乱射しながら突っ込んできた。何発か当てられ百あったライフが少し削られてしまったが、落ち着いてヘッドショットラインにカーソルを合わせ左クリック。

『ヘッドショット!』

 と画面中央にドクロのマークが現れる。まずは一人目、上々の出しだ。

 さらに前へと身を進ませ足音が出ないように歩いて移動する。

 ――まだ誰も来てないから左から行ってみようかな。

 ステージ左端にある、赤と青がぶつかり合う一箇所の狭い通路を目指しているとダメージセンサーが右の方に反応をした。目の前の通路からすぐさまカーソルをずらし右にいる敵を確認しマウスを長押しする。連射の反動で画面が揺れるがM4はほかの銃に比べて集弾率がいい。タタタッと撃った弾が相手の体に連続で命中、ぐあぁぁとか言って敵のちょっと老けたおっさんキャラは倒れた。画面左上にある相手を倒した数が一から二へと変化するのを見届け、再度左端の攻略へと向かう。狭い通路を抜けちょっとした広さがある場所へとでると視界がひらけた。案の定まだ誰も敵は攻めてきていない。この場所は相手が復活してきて出てきたところでバックがとりやすい、端っこによっていれば相手の画面に移ることなく移動してきた相手の後ろから攻撃をすることができる。まぁちょっとセコイといえばセコイのだが、使うことのできるいいポジションは使っとかないともったいない。

 ――さぁ、こい。後ろから撃ち抜いてやる!

 と倉の心の願いが通じたのか、赤い色をしたキャラが広場へと走ってきた。読み通り、そいつはこちらに見向きもせずに倉が通ってきた通路へと向かっていった。

 ――っしゃきた!ここでもう一人分スコアを伸ばす!

 意気込みは十分、カーソルも相手の頭を捕らえ、まるで死の宣告をするかのように緑色の十字が赤色へと変化する。

 ――当たれっ。

 倉の人差し指に力が込められると同時に、目の前にいた敵は倒れた。

本日二回目のドクロマークが現れ数字が三へと変化した。よっし、と心でガッツポーズをしたところで、さらに後ろから来た敵に背中を打たれて倉のキャラはライフが全て持っていかれた。

今まで約一分。この部屋に入ってすぐに三キル一デスの記録を作った。

ちなみにこの部屋の一番のやつは八キル二デスという記録だ。

――なかなか強いプレイヤーだな。

 心の中で感心しつつ倉はキャラが復活するのを待った。


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