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第一話――⑤

――アイツのせいでめんどくさいことになった、やっぱりあの時一言いってやるんだったよチクショウ!あんな単純な手に引っかかる上に、謝ってしまうなんて…………やっぱり俺って馬鹿なのかな……。

 昼休み、場所は生徒指導室。担任の松下(まつした)(まつり)と二人っきりだ。

 ――あっ二人っきりだからと言ってなんかそわそわするものは感じてないぞ。

呼ばれた理由はいたって簡単だ。今朝同室の前園銀次郎の策略(?)にはまり、見事な遅刻をしてみせたからだ。たぶん一年生でこの部屋に入ったのは倉が最初であろう。

「はいこれ。早く書いて早く提出してね。じゃないと私の昼休みがなくなっちゃうじゃない。」

そういって手渡してきたのは一枚の紙だった。紙の上部に「遅刻報告書」と書かれている。

 ――うわっ、めんどうそうだなー。

「こんなの書かなきゃいけないんですか?」

「あっ今、めんどうそうだなー、とか思ったでしょ。仕方ないじゃない。一応は校長の取り決めなんだから」

「そりゃそうですけど……」

 ボソボソと文句を言いつつも名前、クラス、登校時刻を記入していく。

「ちなみに、」

「ちなみに……何ですか?」

「この部屋に呼ばれた一年生はあなたが初めてよ」

「いらん情報を教えないでください」

 本当に知りたくない情報だった。

「リストアップもされてるわ」

「いったい何にですか!?」

「秘密よ」

「………」

――でしょうねー。

「クラスのブラックリストによ」

「いうのかよ!」

「あなたが一行目ね」

「やっぱりね」

「他にはいないわ」

「やっぱりねっ!」

 ――他にいたらここに呼ばれたのが一番目じゃないはずだもの。

「まぁ、それを書くのにもちゃんと理由があるのよ」

 急に祭の声のトーンが落ちた。それにつられて倉も真面目な表情になる。

「理由……ですか……?」

「そう、理由。あなたが私に呼ばれた理由もそれじゃなくて本命はこっちの内容なの。」

「えっそうだったんですか?」

 てっきり遅刻報告書を書かされるためだと思っていた。

「まぁそれも一つなんだけどね。紙村くん。あなたまだどこにも入部届を出していないわよね?」

「……はい。まだ決まってないんで……」

「じゃぁどこかに入る気はあるのね?」

「も、もちろんです!」

 声がうわずってしまった。

「そう。それならいいのよ。ただね、このクラスでどの部にも入部届を出していないのは紙村くんと前園くんだけなの」

「えっ、銀次郎も出していないんですか?」

「あら、知らなかったの?あなたたち仲いいし部屋も一緒だからてっきり知ってるのかと思ってたわ」

 確かに銀次郎からはどこかの部に入部した、していない、なんて話は聞いていない。

「それでもあいつのことだからパソコン部とかに入るでしょう」

 ネットゲームを何より愛している男だ。パソコン部あたりに入部するのが妥当だろう。

確かパソコン部は去年の神楽高のパンフレットじゃ存在していたはずだ。一年や二年で部がなくなるわけがない。倉はそう思っていた。

 しかし、祭の口から思いがけないことが発せられた。

「パソコン部?あの部なら先々月に廃部になったわよ」

 ――…………えっ………。

「それって本当ですか?」

「ええ、本当のことよ。私がこのタイミングでこんな嘘ついて、何かメリットがあるとでも言うのかしら」

 ――ない。

いくら考えても祭が言うメリットは絶対に存在しない。ということは祭が言っていることは本当のことだということだ。

「で、でも!去年のパンフレットにはのってたじゃないですか。それに、廃部なんてそう簡単になるもんじゃないじゃないでしょう」

「普通の学校ならそうなるわね。でもこの学校は、部活動に関しては日本ではどこを探しても存在しない活動の仕方をしていの」

 ――ほかと違う活動?普通にしておけば違うところなんか出てくるはずがないじゃないか。

「一体なにをしたら普通じゃない部活になるって言うんですか。それがパソコン部の廃部と関係あるんですよね?」

「そのとおりよ。紙村くん、あなたはなんでこの学校が全寮制なのか知ってる?」

「それは……家がここまで毎日通える距離にないからなんじゃないんですか」

「そうね。一般的な寮の存在理由はそれが普通。じゃぁそうでない生徒まで寮に入る必要があるかしら?」

「……ないですね」

「重要なのはそこ。全校生徒が寮に入らないといけない理由、それは……、」

「それは……?」

「――――」

「…………!!?」

 最後に一枚の紙を手渡して祭は生徒指導室を出ていった。

 現実味の全く感じられない内容に倉はその場から動くことができなかった。


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