第二話――24
流石に痛覚の信号は本来の銃弾が命中したそれよりは確実に落としてあるだろうが頭部と腹部への直撃は相当なダメージ
を与えたようだ。
「なんだか幕切れはあっけなかったね」
和弥が階段の下で倒れる勝道を見ながら言う。
「そうか?こんなもんだろ」
なぁ、銀次郎、といった様子で和弥の隣に立つ銀次郎に視線を送りながら倉は答える。
「そんなくだらないことを話してる暇なんてないぞ。どうしても続きがしたいなら目的を果たしてからだな。あと少し
だ、行くぞ」
銀次郎は少し下がった眼鏡を直しながら相変わらずのペースで一人先にすたすたと階段を上り始めた。
「あっちょっ、ちょっと待てよ!」
階段についた無数の弾痕を背にして、倉はその場を後にした。
2
「ところでホーネット」
「なーに?倉くん」
「その……女の子にこういう言い方もあれだけどさ…………でかくなったよな……」
「ふっふ~ん!でしょでしょ!」
階段を無事に上がった倉達に変態柔道家以来、障害になるような出来事は運良くなかったため(全くなかったわけでは
ないがほとんどは倉が瞬殺)予定していた時間よりも少し早くゲー研の面々は三年二組に到着した。次の段階に進みたい
ところだが、そうしようにもタイミング的にまだ早いため待機する他なかった。
こういう時でも「暇な時間」というのは悲しくも存在するもので、倉はそれをホーネットへの質問で潰していた。
「倉君、その言い方はちょっとあれじゃない?変態野郎のセリフにしか聞こえないよ?」
半ば呆れ顔の和弥にそう指摘された倉は
「だからこれ以上ないぐらいに申し訳なさそうに言ったじゃんよ!」
と苦しい言い訳も虚しく
「む~…………くららんのえっち…………」
ムッとした様子でサッと胸元を隠すように少し身を引いた流華にばっさりと切り捨てられた。
「だからそんなんじゃないってば!なぁ、銀次郎からもどうにか言ってくれよ~!」
「黙れ、変態臭がするやつに話しかけられたら変態が感染る(うつる)」
「んな匂いしねーし!感染りもしねーから!」
「変態臭というよりも勝道臭って感じだな」
「なんでか知らんが変態ランクが上がってる気がするぞ!?」
「残念なことにイコールだからそれは気のせいだ」
「じゃあ言い直す必要ないじゃんかよ……」
倉は小さな溜息とともに少し肩を落とした。
「ところでホーネットって体格変えれたんだね」
本来は倉が聞いていたであろう疑問を和弥がホーネット本人に聞く。
「うーんっとね、あたしがおっきくなりたい!って思ってこうなったわけじゃなくて…………むぅ~なんていったらいい
んだろ………………」
「桐浦さんがそう願ったから…………って感じかな?」
ホーネットのなかなか出てこない言葉を予測して和弥が代弁する。
「うんっそう!多分だけどそんな感じかなっ!」
ホーネットは頭を縦に大きく振って頷いた。
「つまり使う奴次第でアイテムはいろいろと応用がきくということか」
若干ではあるが楽しそうな表情を浮かべながらそうつぶやく銀次郎。その様子をちょっと笑顔が気持ちわりーと思って
はいても口には出して言えない倉と和弥であった。