第二話――23
――ヤバイ、どうする……手で防ぐか?無理だ。ダメージがどれだけあるかわかったもんじゃない。
倉は頭を高速で回転させ必死に最善の策を導き出そうとした。しかし答えに達するより先に斧が倉を襲う。
――だめだ、もう間に合わない―――――
完全に思考がストップし反撃を諦め、ついには視界が狭まり世界がゆっくりと流れているように見え始めた倉の世界を埋めた斧はだんだんと右にそれ始め…………
「えっ…………?」
本来なら斧の姿が倉の視界いっぱいに禍々しく広がっていたであろう。しかしそこには全く別の、見たことのないものが存在していた。正確には見たことがないわけではないのだが、それはさっきまでとは違うもののように形を変えていた。気づかないのも無理はない。
「大丈夫?倉くん!」
その声でようやくそれが一体何なのかを倉、和弥、銀次郎の三人は理解した。
「ホ、ホーネット…………なのか………………?」
恐る恐る、といったように倉がとりあえず質問で返す。
「そうだよ!色々聞きたいことあるだろうけど、後にして!今は先にここを乗り切らないと!」
非常事態に異常事態が重なり倉の頭はパンク寸前になっていたが、ホーネットの言葉が自然と倉の体を動かした。
「っらあぁぁぁ!!」
倉はホーネットのすぐ脇を抜け、いまだにせめぎあいを続けるホーネットの二本の小太刀と勝道の斧の下に潜り込み、勝道の膝を横から蹴り払った。
「ぬぉっ……」
手元に全ての力を注いでいた勝道は急に足を刈り取られ、勢いよく尻餅をつく。が、さすがは柔道部、足場が狭い階段ながらもうまく受身をとり体制を整えた。
「ッ!?おいマジかよ」
追撃をかけるつもりのはずが予想以上の勝道の身のこなしに倉は一瞬たじろいだ――
フリをした。
そうとは知らずに、チャンスを逃すまいとばかりに詰め寄ってきた勝道は倉の襟を取った。一番の得意技である大外刈りの体制に入り始める。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
勝利を確信したのか気合を発しているのとは少し違う声色が混じっている。
そんな勝道の姿に倉はうすら笑いを浮かべていた。
「喜ぶのは本当に相手を制圧した時のみ。油断は小さなミスを招き、小さなミスは僅差の戦いおいて敗北を告げるものとなる」
倉はそう耳元で告げた。そして次の瞬間、
「っせぁぁっ!」
強烈な頭突きを勝道の顔面に食らわせた。そして離れた体を階段の下に突き落としM4を構えた。
「楽しかったぜ」
倉は言いタタタッと引き金を引いた。三発とも見事命中した弾丸はいとも簡単に勝道の意識を奪い取った。