第二話――㉑21
昨日は予定外の問題が発生したことで昨日中にしないといけなかったことが出来ず、ゲーム研究部の面々は焦りを感じていた。強制終了の後、なんとか気持ちを切り替えて作戦を立て直したが、やはりまだ不安は残っている。校長に文句の一つでも言ってやりたいがどの部も同じ条件だ、俺たちだけじゃないという気持ちがそうすることを抑えていた。
「あっつ………………」
倉は夏の入りはじめの独特の暑さと無言が続く重い空気に耐え切れなくなり思わずつぶやく。そして、少し落ちた気分にさらに拍車をかけるようにジメジメとした空気が肌にまとわりついた。パタパタと制服の胸のあたりを前後に扇ぎなんとか熱を逃がそうとする。
そうしているうちに時刻は開始十分前になり、ステージに教頭が姿を現した。
「えー非常に熱いですが、えー元気を出して、えーいきましょう」
――あいつ「えー」多いな…………………なんかうざい。
なんて倉が思っているなんてことは露知らず、教頭は続ける。
「えー今日からもシステムの都合により時間を短縮して行います。えーそれともう一点。今日の開始はここ、体育館からではなくえー昨日終了した時にいたポイントからにします。えーそれでは、えー移動を開始してください」
と、今日の連絡事項を簡単に告げると教頭は早足にステージを去っていった。それと同時に周りがざわつきながら移動を開始した。倉たちもその流れにのって歩き出す。
倉は前もって配られていたゴーグルを掛け、アイテムを手にしようとしたその時、
「倉、まだ掛けるな」
銀次郎がそれを止めた。
「へっ?なんで」
倉の頭の上には当然のようにクエスチョンマークが浮かぶ。
「できるだけ他の部に見せないほうがいいからだ」
と、倉でも一瞬で納得できる素晴らしい回答をした銀次郎の右手は、そう説明してもなおゴーグルを掛けようとする流華の手を必死に抑えていた。
――大変そうだなぁ……………………。
他人事のように思いながらも顔の前に持ってきていた両手を、倉は静かに下ろした。
職員室についたのは開始三分前。
開始直前の静かな雰囲気が適度な緊張をもたらしている。さっきは止められたM4との対面を試みる。が、ゴーグルを掛けてもいっこうにその姿を現さない。
そういえば、と、昔一度だけ見たことがある『ち〇まるこちゃん』とかいうアニメで壊れたテレビを叩いて直していたのを思い出した倉は横の方をポンポンと叩いてみた。しかし当然のようにM4は出てこない。
銀次郎や和弥、流華も倉と同じように小首をかしげているとチャイムが学校内に鳴り響いた。瞬間、背中に身に覚えのある重さを感じた。自分のアイテムの出現で少しずつ高鳴り始める気持ちを四人は抑え、これから行う自分の役割に意識を集中し始めた。