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第二話――⑱

「おーい銀次郎、終わったぞ」

 俺は外で待機してなかなか入ってこない銀次郎に声をかけた。

「ん、もう終わったのか。流石だな」

「こわっ、お前が俺を褒めるとか、すでにキモイわ。てかそうやってごまかそうとしても無駄だからな」

「何のことだ」

「…………お前今まで何してた?」

「見ろ!和弥を抑えての最多キル数だ!」

「てめぇら援護はどうした!!?」

 ちなみに三十四キルと三十五キルでかなりせっていた。スバラシイ。

 と話をしていると遅れて和弥が入ってきた。



             阿野和弥



 すごい、すごいすごいすごいすごい!

 僕は興奮しすぎなぐらいに胸が高鳴っていた。自分で言うのもなんだが普段は慎重に動く僕も思わず走って職員室に向かっている。僕を自然とこうさせる理由は何か、そんなの決まっている。

 さっきの倉君の戦いだ。

 ほんっとうに凄かった。喧嘩のセンスもさることながら、それを実現するあの運動神経。銀次郎君とのゲーム中だった(倉君には申し訳ないことだけども)にもかかわらず目を引かれ、みとれ、全身に鳥肌が立った。これなら勝てる確率の少ない今回の戦いも夢物語で終わらないかもしれない。一パーセントが何十パーセントにも膨れ上がった、そんな気さえもするほどだ。いや、実際にそうかもしれない。

 これだけ周りに注意を配ってなかった状態でしかも各部が動き出している中、何もなかったのは運が良かった。

 無事たどり着いた職員室の中からはいつもの楽しそうな二人の話し声が聞こえてくる。

「てめぇら援護はどうした!?」

 ………あっちゃー僕らがゲームしてたこと話したのかな銀次郎君。倉君のツッコみになんとなく入りづらくなった僕はちょっと姿勢が低くなった。

いそいそと入ってくる僕に先に気付いたのは、

「おっ和弥」

 倉君だった。

「や、やぁ倉君すごかったね。お、驚いたよ!」

 何か言われるのを気にしすぎて少したどたどしい調子になってしまった。僕は他人がツッコミを入れられてるのに関しては楽しそうだなぁとか思うけど自分自身に入れられるのに関してはちょっと苦手だ。よっこれぞコミュ障。

「おぉサンキューな!………嬉しいけどなんか照れるな」

 しかし予想と反して目をそらしながら頭をかく様子に驚きながらもどことなくほっとした。

「さて、これで今日のノルマはクリアしたな。作戦の確認をするぞ」

 銀次郎君が余韻に浸りまくってる倉君とほっとしてる僕とをその一言で一気にこっちの世界に呼び戻した。緊張の糸を慌てて張りなおしす。

「ちょっと待って、流華がまだいないんだけど、和弥見てない?」

 倉君にそう聞かれて始まってこれまでを思い返してみたが記憶に桐浦さんの姿は見当たらない。

「んーん、見てないよ」

「はぁもういいじゃろ」

「じゃろってお前なぁ本当にめんどくさそうにすんのやめろよ」

 そうはいいながらも猫背になった銀次郎君同様に倉君も猫背になっていた。

「でも、やっぱり待たないわけにはいかないよね」

「「はぁもうどっかで倒れてんじゃないの?」」

「そんな悲しい言葉でハモっちゃダメ!」

 肩を落とすタイミングまでばっちりだった。

 そんな二人をまぁまぁとなだめていたちょうどそのとき

「待って!なんで君に――を渡さないといけないわけ!?」

「私のほうがふさわしいからに決まってるもん!」

 廊下から大声で言い争う女子生徒の声が聞こえてきた。そしてそれはだんだんとここに近づいてきている。嫌な予感が僕の頭をよぎった。嫌だ、まだだ、まだこれからなのに…………。

 ついにその言い争いはここの目の前で止まった。一筋の汗が僕のほほを伝う。倉君と銀次郎君はそれに気づいてすらいない。あぁもうだめだそう思いかけた瞬間

「「くららん!」」

 桐浦さんとその周りを飛んでいる小さな謎の妖精が押し入ってきた。あぁ………これで最後になるかな………


「僕の出番短すぎるよ!!」



             桐浦流華



 


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