第二話――⑯
それが敵の刃物らしきものだと分かった瞬間、俺のスイッチが戦闘モードへと切り替わった。戦闘モードってのもおかしな話だけどな。なにはともあれ大丈夫だ。こんな状況でも落ち着いていられる。まだまだなまっちゃいないぜ。ふと中学の頃の思い出がフッと浮かんでサッと消えた。
「何部だ?」
大体の見当も付いてるし、返ってくる答えもわかりきってはいたが一応聞いてみる。
「お前に答える必要はない」
「ほらね!」
どーせこんなことだろうと思ったよ、こんなことだろうとさ。
「おい、お前………状況わかってんのか?質問することもそうだが今の反応もふざけてんのかよ。余裕なんだな」
そういって名前もわからないこいつはハッと鼻で俺を笑った。お前に言われなくても状況はわかってるさ。確認したところこいつが刀、そしてもう一人の奴がリボルバー………見たところコルトパイソンのようだ。そして後ろに控える女子の一人が同じく日本刀のようなもので残りの女子が縛るための――あれは縄…………?だろうか、そんな感じのを持っている。それにしても、俺が入ってきた時の対応の速さといい、今のポジションの取り方といいすごい連携だ。これはかなり念入りに考えて練習してるな。でもまぁこの程度ならいけなくもないけど。つか、楽勝。それでは早速、
「おい」
「なんだよ」
「残念だったな、お前らは今日でリタイアだ。お疲れ様」
「はっ?お前何わけわかんないこと………」
「っらぁ!」
先手必勝。言葉を待たずに俺は体を前に倒し、その反動を使い足を振り上げこいつの手の甲を蹴り上げる。
「ッつ」
痛みで刀を落としたのを俺は見逃さない。倒立のような状態からすぐさま体勢を立て直し、落ちている刀の柄を蹴り飛ばして手の届かないところへと移動させる。これで一人潰したも同然だ。自分で言うのもなんだが素手で俺に勝てる奴なんてそうそういないからな。だが念には念を入れておく、蹴られた手がそんなに痛かったのか、悶えているそいつの後頭部に廻し蹴りを一発ブチ込んでダウンさせた。これでよし。
問題は今の一連の動作でポジションを変えた刀使いの女子と、リボルバーを持ってる男子だ。うまい具合に障害物がないところを選んで俺を二人で挟んでやがる。さらに厄介なのがリボルバー側が俺から遠く、刀側が俺に近いことだ。飛び道具なら離れてても攻撃できるし、近ければ刀でも攻撃ができる。どっちか片方を俺がつぶしに行っても背後からなにかしらの妨害をしてくるわけだ。
うん、よく考えられてるし動けてる。
「でもまっ、九十五点ってとこかな。百点にはちょーっと足りないな」
とまぁこんなふうに軽く余裕ぶっこいてみて相手の反応を見るのも一つの手だよね。なんつって(笑)
「………さっきのであんたが余裕でいられる理由がわかりはしたけど私たちはそこのバカみたいに油断はしてないの。痛い思いをする前にさっさと諦めたら?」
刀を持った名も知らぬ女子(微妙に可愛い)がキッと俺を睨んでそう言った。だからさここが違うんだってば根本的に。
「あのさぁ」
「なによ」
「このフォーメーションが完璧だと思ってるんでしょ?だから九十五点なんだってば」
「…………わけのわからないこと言わないでくれる?どこからどう見たってあんたの負けじゃない」
「はぁ…………もういいや。とりあえずさ、次回から頑張って」
これ以上だらだらしゃべっている時間もない素晴らしく人間のできた優しい俺はわざわざ敵に次の対抗戦に向けてのエールを送ってからすぐさま右足に力を入れ、日本刀を構える強気な女子へと突っ込んだ。し、下心なんかじゃなくてちゃんとした作戦です、ほんとです。
さて、テストをはさんだり、試合に行ったりととても忙しい日々に殺され投稿が遅れてしまいました………非常に見苦し言い訳のようで申し訳ないです。
いっときの間は特に何もないので、一日一時間、しっかり集中して執筆する時間をとりたいと思います。まだまだ続く倉たちの活躍をどうか飽きずに応援してください。