第二話――②
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時刻は午後7時少し前、一つの机を三人で囲んで座っている。
つい先刻、お茶を入れ部屋に戻ってきた倉と隣の住人和弥により特殊な部活の説明をし始めた。
「まず、だ。お前らが創部に対して、ああも絶望の感情を抱くのかが一番気になる。そこが話の中心になるんだろうが、どうも想像がつかない。一体何なんだ?」
「ん?あぁ、それはこれだ」
倉は担任の松下祭に渡された一枚のプリントを銀次郎に手渡した。一番上に「神楽高校部活動確認書」と書かれてある。
「あっ、これ僕ももらったよ」
「じゃぁ、まったく一緒のものってわけか」
「それなら話が進めやすいな」
そう言って銀次郎はプリントに目を通し始めた。
「『其の一、本校において、部活動の数、種類は運動部十、文化部十の計二十の部の活動を許可する。なお、同好会は認められない。また、部の意向、趣味、種類、内容は部長の意思に基づき、学校自体は一切の関与、制限をしないものとする……』…………か。おい倉、和弥、これのどこがまずい内容なんだ?むしろ自由な考え方でいいと思うが」
「…………そこ、最初の部分だけだろ?少しずつ俺たちに不利な内容が出てくるからもうちょっと読んでみろよ」
銀次郎は軽くうなずいてから、さらに先を読み進んでいく。
「『其の二、創部について』」
「そう、そこだよ、そこ!」
和弥が机越しに身を乗り出して声を上げた。
「『創部の際、部の人数は最低四人以上でなければならない。上記の事が守れていれば創部は可能である』………二人ともふざけるのは、なしだぞあと一人ぐらいなら探せば何とかなるだろう」
「だ~か~ら~なんで、いつもちょっと前で読むのをやめるかなぁ。もうあと、一行進んでよ、まったく」
やれやれと言った呆れ顔で和弥が銀次郎に文句を言う。
「一行?」
「そう、い、ち、ぎょ、う!」
真面目なのか馬鹿にしてるのか、和弥が一文字ずつ区切って言葉を発する。そして、銀次郎はというと、これまた素直にうなずいている。
――うっわ~、これ、俺がしたら確実にいろいろ言ってくるんだろうけど、なんなのかなこの扱い方の差。
「お前がアホだからだ」
「ッッッ!!?このくだりまだ続いてたの!?」
「心を読んだほうに、ツッコミが来ないだと!?」
「いや、それもだけどよっ!!」
珍しく銀次郎がツッコミにまわった。これはこれでなんだか新鮮で面白い。
「まぁこれぐらいにしといて、続きを読むか」
「はぁ………」
――誰か俺に慈悲をください……
「さて、」
「ここはスルーかよ!?」
――はぁぁ、まったく何なんだこいつらは…………
「『それから、部活を正式に部として存在させるためには、各月の最初にある部活動対抗戦において勝利をおさめなければならない』……なんだこれは?」
「………部活動対抗戦、それが三人で部を創った時に……いや、正しくは創ろうとした時に発生する不利条件なんだよ……」
「はぁぁ」
倉は今日何度目かのため息をついた。