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第二話――①




第二話

 第一回部活動対抗戦!!



               1



 昨日、阿野和弥との接触という大事件の後でも学校は変わらずにある。倉と銀次郎は何事もなかったかのようにいつも通り登校をした。

せっかく仲良くなったんだからということで倉が一緒に学校へ行こうと和弥を誘ってみたのだが、

「僕はまだ顔を出しづらいからね、病弱ってことにして一学期中は引きこもっとこうと思うよ」

 と、自虐的な笑いとともにそう言われたので二人は渋々引き下がった。授業も別段変った風もなく、ただ淡々と時間だけが過ぎて行った。

しかし、そこまではいつも通りでも今日からは二人の放課後が大きく変わってくる。倉が創部宣言をしてから丸一日がたったが、昨夜はよくわからない記念パーティーとか何とかと称してお菓子やらジュースやらで盛り上がり、最後には三人でFPSをしてお開きになった。(チーム作っていろんなとことしたが和弥と銀次郎の無双により全勝)結局どうするかといった話は全然していなかった。それに気づいたのは夜中の三時でさすがに次の日が学校の状況の中、徹夜は自殺行為だと話がまとまり今日に持ち越されたのだ。

「そういえばさ銀次郎」

「んっ、どうした?」

「部活作るには確か……最低四人、必要だったっけ?」

「お前の持っていたプリントに書いてあった通りならそうだろうな」

 プリントとは昨日担任の松下祭に渡されたもののことである。

「やっぱそうかぁ……はぁぁ、あと一人どうしようかなぁ…………」

 倉はだるそうなため息をつきながら自室のドアの鍵を開け、ドアノブを引っ張った。

 ガコンッ。

 音がしたところで腕はそれ以上後ろに下がらなかった。

「?……あれっ?」

 何度かドアを開こうとしてみるものの全然開かない。

「お前鍵を閉めたんじゃないか?」

 銀次郎の指摘にようやくその可能性に気付いた倉はもう一度鍵を開けた。

「よしっ、今度こそ」

 今度こそ鍵は確かに開いたようでなんの抵抗を受けることなく倉の前にその道を作り出した。

 なぜか部屋の奥に明かりがついてた。

 ――あれ、電気まで消し忘れてたかな?

 今朝の自分の失敗を思い出していると明りのついたその部屋から声が聞こえた。

「おかえり~、倉君、銀次郎君」

 聞こえた声に驚き一瞬の沈黙が流れる。しかし、約二秒の脳内高速処理の結果、間の抜けたようなその声を和弥のものだと判断する。

「「すみません。部屋を間違えました」」

 二人声をそろえてそう言うと、上がりかけていた玄関に別れを告げてドアを勢いよく閉めた。しんとした雰囲気の中にガチャンッと音が響く。

「コノリョウノカギッテ、ドコノヘヤデモアイチャウンダネ、ギンジロウ」

「かたことになっていることはあえてつっこまないでおこう」

「エッ、ナンデツッコンデクレナイノ?」

「……どうやらその鍵がどこのドアでも開けるわけじゃなさそうだぞ」

「ソレハ、ドウイウ……」

 ―イミ……?と続いたであろう倉の言葉は先ほど開けた玄関から聞こえてくるドタバタと暴れる音に遮られた。

 そして、鉄製のドアは来客をもてなす形で内側から外側へと動いた。

「うぁぁぁぁぁ、もう!なんで?なんでなんだい!?二人とも!せっかく二人の部屋で待ってて驚かせようと思ったのに、なんで出て行っちゃうんだよ!」

 珍しく……といっても会ってまだ二日目なのだが、その中でもひときわ大声で叫びながら和弥が飛び出してきた。

「…………いや、だって普通にこっちに来てることが怖いっしょ……部屋間違ったかと思ったよ……」

「べ、別にき、きてたっていいじゃないか!」

「くるっていっても、お前どうやって入ったんだ?」

 今更になって銀次郎の質問で倉がハッとしたことは説明するまでもないだろう。

「へっ?どうやってって………隣の部屋なんだよ?まったく~ボケてるのかい?二人とも」

 ――えっ、隣の部屋って関係なくない?

 さらに続いたセリフは今日二度目の衝撃を二人に与えた。

「壁に穴開けたにきまってるじゃないか」

「「…………」」

「………えっとー、それはどう解釈したらいいのかな?」

 返答に困った倉が恐る恐る聞き返した。

「えっ!?今ので意味がわからないのか…………まさかここまで馬鹿だったとは……予想外すぎだよ……」

 和弥がさらりと失礼なことを言ってのける。

「……ねぇ銀次郎。俺ってどこまで馬鹿だと思われてるのかな?引きこもりの和弥にまで知られてるってどういうことだよ」

「か、かかか、拡散希望じゃなかったのか…………!!?」

「お前のせいかよっ!」

 なんだか異常なほどにうろたえていた。

「他に誰がいると思うんだい?」

「なんでお前が妙に誇らしげなんだ!?」

 和弥は嬉しそうに鼻を鳴らした。

「その、まぁ、つまりはこういうことだよ」

 そう言って和弥は壁をつかんだ。

 そう、素手(・・)で(・)()を(・)つかんだ(・・・・)。

 そこから現れたのは直径一メートルぐらいそこそこの大きな穴だった。人一人分ぐらいなら余裕で通れるような。

 その穴の奥からはパソコンやらCDやら何かよくわからない機材が大量に積んであるのが見える。それなのになぜかきれいに見えるような掃除の仕方がされていた。そここそが正真正銘、阿野和弥の部屋だ。

「うわぁ………本当に穴があいてる……」

「ふふん。いいでしょいいでしょ、こっちのほうが移動が速いんだ」

「そりゃそうだろうけどよっ!壁に穴開けるとかどうやったらできるんだよ」

 ――こればれたら怒られるだろうなぁ…………

「あれ」

 和弥は一言そう言い、自室の奥の謎の機材の一つを指さす。

 ――えっとー………

「ナニアレ?」

 銀のギザギザ。

 楕円形の細長い刃。

 ごつごつした丸っこい本体。

 取っ手が二つ。

 コードが伸びている。

「………」

 ――さぁ、みんな考えてみよう。あれは一体何なのかを。

「候補は上がった」

 とりあえず一つだけ候補が浮かんだ。

「おっ、さぁ、言ってみよう」

 ――チェーンソーしか考えらんない。

「ピンポンピンポ~ン、だいせいかぁ~い。どうしてわかったの?」

「お前こそなんでわかったの!!?」

 ――俺って考えただけだよな…………。

「うん、そうだよ」

「だから、なんで!?」

 もはや、もう何かしらの能力のようだ。

「もういいから、さっさと今日の目的を果たすぞ。オレは昨日何も聞いてないんだ。正直すごく気になってる」

 ――あんまりよくはない…………。

 と、思いつつも、これじゃいつものように話が全然進まないため一応は耐えた。

「えっ、あぁごめん。勝手に盛り上がってた」

「もう時間が時間だもんね」

 倉と銀次郎の二人が寮についてからもう三十分以上が経過していた。時間に余裕があるとはいえこの調子ではまた内容がずれてしまう。じっくり話をするためにもお茶を用意しようと倉は二人を部屋の奥に進ませ、自分は玄関のほうへと進んだ。

「それじゃ、飲み物用意してくるから二人とも座ってて。そこからゆっくりと話をしよう。時間はまだまだたくさんあるんだ」


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