プロローグ
★
今にも折れてしまいそうな、そんな足で階段を二段飛ばしで駆け上がっていく。この三日間で体についた痛々しい打撲の跡も、しっかりとその見かけにあったダメージを残している。
先ほどまで俺に安心感を与えていた背中のアサルトライフル、M4も球切れとなってしまった今では何の役にも立たない、ただの鉄の塊だ。
残り時間はあと五分。まだ奪われていないボックスは文化部のものがわずかに一つだけだ。しかし倉はどんなに倒れてしまいそうでも最後の一個を取るまでは絶対に倒れるわけにはいかなかった。そういった仲間の思いが彼の背中を押す。
そしてそれは今目の前にある。
一階からここ、四階まで一気に登ってきた倉は目的のものであるCBを視界にとらえていた。残る文化部は四つ。うち二つの部はこの場所が分からずに今も校舎内を血眼になって探し回っているだろう。
うち二つ、ということはあと二つの部がココを見つけたというわけだ。一つは我が部であるゲーム研究部。そしてもう一つは倉がCBとともに視界に入れている漫画研究部だ。
ゲー研VS漫研。
デジタルVSアナログ。
相手は倉と同じように部の設立を賭けて部員の期待を背負って立ちふさがっている。お互いに絶対に負けられない戦いというわけだ。
張りつめた空気が倉の上がった呼吸をさらに荒くする。二人きりのこの状況で誰かが固唾をのんで見守っている……わけではないが、背中をちくちくと刺すような嫌な感覚が走っている。
そんな中ふと、倉の頭の中に何度も夢に出たあの映像が再生された。
気がつくと試合は終わっていて、汗で色が変わってしまったコートの選手とは対照的に元の色のまま柔軟剤の香りがするユニフォームを着た自分。自分の手の届かないところで続けてきたことが終わってしまったあの日のこと。
――あの時の俺とは違うんだ。この結果は俺自身で決める………!
しん、静まり返った教室に時計の分針の音がカチリッ異様なほどにと大きく響いた瞬間、
二人は弾丸のような勢いでCBめがけて飛びだした。両足は宙に投げ出され限界まで伸ばされたその右手は確かな感触を………………………