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その5

「おい!藤堂!」


 ・・・はあ。今日は全く、なんて日だ。

 どいつもこいつも次から次へと・・・

 でも、まあ、これで瑞希からの尋問から逃れられるな。

 その点に関しては感謝してやr・・・


「これはこれは!霧谷くんではないかっ!」

「なんで急に態度がでかくなるんだ!?

 つか、自分の方は大丈夫なのか?

 ほら・・・色々と、さ。」

「大丈夫じゃないから、こうなっているのだ。

 ね、瑞希?」

「・・・!

 せ、雪織。この続きはあとでちゃんと聞かせてもらうからね!?

 ・・・覚悟しておいてよ!」


 そう言い残して消えた友人は、心なしか頬を紅潮させているように見えた。


・・・珍しい。

あの、瑞希が・・・へえ。

ついにこのヘタレに・・・へえ。

以外と乙女なんだなあ。

 私のセールス作戦も大詰めといったところか。


「・・・なあ、藤堂?」


 この爽やかなオーラを無駄に撒き散らかしている彼の名は、霧谷 優。

 その名の通り優しい青年である。


「俺、いつになったら生雲に声かけられると思う?」


 訂正だ。ヘタレな青年である。

 恋するヘタレ・・・乙女かっ

 今どき草食系男子が流行っているが、それじゃいかんと思うのだ、私は。

 まったく・・・情けない。

 サッカー部のエースがこんなのとは。

 我が校のサッカー部は大丈夫なのか。あー不安になってきた。


「あの・・・藤堂・・・?

 全部、口から出てるからねそれ。」

「なんと!」

「なんと!じゃない!

 俺は真剣なんです!

 入学式で一目ぼれして、もう一カ月経つのに、会話どころか目すら合わせられてない!

 死活問題だ」

「あーはいはい。それね。」

「それね・・・?それねだと!

 だいたいお前は・・・!」


 しまった。どうやら私は瑞希より厄介な奴につかまってしまったらしい。

 


 ※  ※  ※  ※


「起立。礼。さよならー」


 こちら雪織。只今のHP、0に近し。霧谷という名の男にそのほとんどを持って行かれた模様。

 も、も、もういやだああああああ

 なんで聞く側がこんなに疲れ果てなきゃならんのだー!

 途中から完っ全に惚気になってたし!

 いつまでも喋りまくりおってあの野r・・・

 ・・・失礼。言葉が過ぎました。お、おほほ

 今なら砂糖を口から吐き出せるね(確信)


 ま、まあ、とにかく。

 あのヘタレの性根を叩き直さねば!

 学校の近くの喫茶店でパフェでも奢ってもらって、作戦でも練ってやるか!

 サッカー部も、今日は休みらしいし。


 あ。

 石蕗つわぶきに連絡しないと・・・

 メール、メールっと。

 えーと、

『友人と遊びに行くため、今日は迎えに来てもらわなくても大丈夫です。』


 ピロリロローン♪


 返信がはやい


『珍しく長文のメールが来たと思えば、それか。ひどくないか。

 まったく、いつもお前は・・・

 まあ、いい。

 その友達とは何時まで遊ぶんだ?気を付けるんだぞ。


 ・・・いや、やっぱり迎えに行く。

 終わったら、連絡してくれ。

 あ。あと、


  


 次は電話がいい。電話してくれ。』


 ・・・。

 この一瞬で何があった。何をどう極めればこの長文を3秒で打てるんだ!?

 意味深な改行読みにくいわ。


 ・・・恐るべき石蕗。


 ※  ※  ※  ※


「じゃあ、行こっか。」

「はあい。

 パッフェ、パッフェ♪」

「それ、完全にパフェ目的だよな?」

「当然。」


 今回は何個頼もうかなあ。

 学校のすぐそばにある、この喫茶店はパフェがおいしいのが有名で、よく学校帰りの生徒が利用する。

 うちの学校は自由な校風で、帰り道に寄っても大丈夫だし。

 アンティーク調の内装と、おいしいパフェにケーキ。そのせいか、店内は女性客がほとんどだ。

 目立つな、霧谷。


「あ。何か失礼なことを考えただろ、今。」

「いや別に?

 すいませーん!抹茶パフェと苺パフェ、それとチョコレートパフェ、お願いしまーす!」

「どんだけ食う気なんだおい」

「それで?どうすんの?瑞希のこと。」

「ああ。まずは・・・」


 ※  ※  ※  ※


「んー!!

 外も薄暗くなってきたし、お開きにしますか!」

「こいつ、結局5つも食べやがった・・・」

「ん?何か言った?」

「何でもないですごめんなさい。

 ・・・今日はありがとうな。」

「ふふーどういたしましてー

 あと、ごちそうさま。」


 なんだかんだ言って、良いやつなんだよね。

 それに瑞希が避けてるのは、あきらかに霧谷を意識している証拠だし。

 なにより、休み時間だの放課後だのサッカーしてるこいつを見つめてるし。

 ・・・まあ、勘違いだったら怖いから、言わないでおくけれど。

 協力はするつもりだから安心してよ、霧谷君♪


「はっくしょい!花粉症かなあ」

「春だもんね」

「あ、暗いし一応、家まで送って行こうか?」


 じゃあ、お言葉に甘えようかな・・・

 けど、なんか、忘れてる気がする。


 ・・・。


 ま、いいか!


「霧谷君、反対方向でしょ?駅まででいいよ。」

「そう?わかっ「雪織。」


 霧谷君の了承の言葉は誰かの声に遮られて聞こえなくなった。


 ・・・あれ、なんでだろう。悪寒と冷や汗が止まらない。


「奇遇だね、こんなところで会うなんてさ。」


 そこには顔に笑顔を浮かべた、石蕗が立っていた。


 目!

 目が笑ってないよおおお!!

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