ソーン君とノートン先生の遅刻事件簿
緑豊かな木々が生い茂る森の中。リスのソーンとペリカンのノートン先生は学校へ急いでいた。 ソーンは言う。
「うー、遅刻遅刻!」
二匹は動物中等学校の担任と生徒の間柄だ。二匹は昨日、ノートン先生の誘いでオールナイトのロックバンドのライヴに出掛けていた。
だから寝不足の二匹。眠い目をこすりながらソーンはノートン先生に言う。
「もう、ノートン先生、生徒を遅刻させちゃうほどの音楽イベントに誘うなんて教師失格ですよ」
「ゴメンゴメン。私の大失敗でした。ソーン君」
「もう、先生はいつでもマイペースなんですね」
ソーンは呆れて言った。ノートン先生が口を開く。
「それにしても、昨日のロックバンドの『愛が全てなら』って曲は良かったねぇ」
「『愛が全てならどうして世界はこんなに汚れてしまったのか』そんな歌でしたね」
「そうそう。とても良かった」
するとソーンが考え込んで言う。
「そうでしょうか。僕は『愛』を無暗に疑うのは好きじゃないんですよ。好きなら好き。愛してるなら愛してる。それが一番じゃないですか」
「うーん。それもそうだね。でもこういう時代だよ? いいじゃないか。『愛が全てなら』どうしてこんな世の中になってしまったのかなんて」
「それもそうですけどねぇ。ノートン先生」
そして二匹は結局、学校に遅刻してしまった。
カンガルーのタンカイ校長先生に酷くしかられるのを覚悟した二匹は朝礼に向かった。
でも、そこで待っていたのはタンカイ校長の意外な言葉だった。
「おやおや二匹揃って遅刻ですか? でも構いませんよ。この動物中等学校の校訓をお忘れになりましたか?」
そして二匹は校訓の書かれた文章を見た。そこにはこうあった。
『愛が全て。愛こそ全てを許し賜う魔法の秘薬』
二匹はほっと胸を撫で下ろし、それぞれ指定の場所に足を運んで行った。別れ際こんな会話を交わしながら。
「『愛が全て』まさしくそうでしたねぇ。ソーン君」
「でしょう。ノートン先生。やっぱり『愛が全て』なんですよ」
そしてタンカイ先生の挨拶の言葉で朝礼が始まるのだった。
「みなさん。動物たるもの『愛が全て』ですよ」
その言葉を聴いてソーンとノートン先生は二匹して呟くのだった。
『ホント、その通り』