表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

ひつじのお食事風景

「ユキ、おいで?」

食堂に入ると先に席についていたキラキラさんが私を呼ぶ。

正直行きたくない。

いや、おいしいご飯は食べたいんですけどね。

これから約1時間の食事タイム(毎日フランス料理のフルコースみたいのをゆっくり時間をかけて食べるのがお貴族様流)が1日で最も辛い時間なのである。



「あの、私一人で食べられます。」

目を合わせないようにキラキラさんにそう告げる。

「…ユキは私と食事をしたくないのかい?」

キラキラの笑顔が一瞬のうちになくなり、寂しげな表情にすり替わる。

「いや!別にそういうわけではっ!」

そらしていた目を思わず向けてしまう。

「じゃあ私のことが嫌いかい?…そうだよね、今までお世話になっていたご一家と引き離してしまった私のことなんて好きになれないよね…。」

自嘲気味にため息を吐くと、きれいなお顔を伏せてしまった。

いやだから!別に嫌いとかそういうことではなくてですね!

「私は旦那さまに食べさせて頂かなくても、ナイフとフォークでお食事できます。」

食べさせて頂いてるってのは、お世話になっているとかそういう意味ではなく、旦那さまの膝に乗せられて、いちいちアーンとされて口まで運んでもらってるってことだよ!

なにこの羞恥プレイ!

見た目9歳くらいだけど、精神年齢21歳ですから!

いやてか9歳でも立派に箸使って食べてたよあたしは。

なのに…。なのに…!


「でもいつもナイフの扱いに手こずっているだろう?バクスター夫人からも伺っているよ。」

…うっ!バクスター夫人なんてことを!そりゃあ淑女教育の講師としては雇い主への報告は必要かもしれないけど。

そもそもあたしは生粋の日本人で物心ついたときからお箸使っててナイフとフォークなんて滅多に使わなかった。

それにだって…!

「我が家のカトラリーはユキの手には大きすぎるだろう?今職人に頼んで小さめのものをつくってもらってはいるのだが、しばらく時間がかかりそうだしね。ユキ専用のカトラリーが出来上がるまでは一緒に食べないかい?私の傍でナイフとフォークの扱い方を学べるいい機会だとも思うけどね。」

キラキラさん気付いてたんだ…。

侯爵家にあるカトラリーは純銀製で重くて大きくて、どうしても子供には扱いきれないのだ。でもそんなわがまま言えるわけないから頑張って食事していたけど、どうやら数回の食事で見抜かれていた模様…。恥ずかしい!!!



「ユキ、おいで?」

キラキラさんはお膝をぽんぽんして私をもう一度呼んだ。

「…はい、旦那様。」

ええ、もう観念しますよ。私の負けです。

でも小さいナイフ類が来たら絶っ対使い方マスターして一人で食べるんだから!

そう意気込みながら旦那様のもとへ向かうと、ひょいと持ち上げられ、膝の上に乗せられる。

「さて、それではいただきましょうか。」

「「天と地の恵みに感謝します。」」


「ほら、口を開けて」

「そういい子だ。」

「この時は、手をこう動かすんだ。」

「どう?おいしい?」

「ふふ。ユキは本当にかわいいね。」


なんか変態ぽくない?

と思うのは私の頭が腐っているからでしょうか。


そうしてこの食事風景は私専用のカトラリーが届けられてからもしばらく続いたのでした。














「なんでまだこれを続けるかって?決まってるじゃないか。小さい口で頬張るかわいいユキが一番近くで見れるからだよ。」


誤字・脱字あったら教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ