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第一話 千原要、発進

 星暦2106年、地球上にハザードと呼ばれる異形生命体が誕生した。卵が先か鶏かというような問題にはなっているが、同時期に人類の中から魔力を持った存在が現れることになった。

「こちら、ダッジ・5。所定の場所に着いた。敵を視認している。ダッジ・4、そちらの状況はどうだ?」

「こちら、ダッジ・4。こちらも敵を視認した。しかし、魔力炉の調子が良くない。生体魔力の残量が心配だ」

 ニューラル・マジックと呼ばれるようになった人類を攻撃するハザードを撃退するための部隊ダッジの二人は部隊の専用魔導兵器チャレンジャーに搭乗し、侵攻するハザードの偵察に当たっていた。

「こちら、ダッジ・3。ダッジ・4、攻撃の要であるソルジャーのあなたが不調とあれば撤退もやぶさかでは無いけれど?」

 もう一人、彼らの上官である女性が通信に入る。

「上官であるあなたの言葉なら従いたいがコマンダーからの指令は索敵と敵前線の後退だったはずだ。せめて、少しは首を持って帰らないと小言を言われてしまいそうだ」

「とはいえ、それであなたの身に何かあればマスターからの小言がコマンダーに向かいそうだけれどね」

 コマンダーとは作戦士官、マスターは戦役司令官。この部隊での階級は前者が少佐、後者は大佐である。

 軍の階級は少、中、大の順に上がっていく。

「まぁ、いいんじゃねぇの?おまえさんが危なくなったら俺が撃ち落としてやるよ」

「そうだな。アンタの背中は私らに任せな」

 その言葉を背に、ダッジ・4は前線へと近づいていく。その後ろにダッジ・3が続き、ダッジ・5が目先の敵への狙撃を準備している。ダッジ・4が視界にとらえていたのは小型獣のハザードであった。ハザードは生体魔力の影響によって変異した生物のことであり、記録の中には人類の変異体もいたということである。記録の中とあるように現在までに観測されたことは少なく、その理由は人類が他生物より魔力への適性があったためというのが研究者の考えらしい。

 ダッジ・4が戦闘を開始した時、ダッジ・5が母艦アビスへと通信を行っていた。

「こちら、戦艦アビス、ブリッジよりオペレーター、ナーシャです。ダッジ・5、どうかなさいましたか?」

「こちらは今し方、ハザードの軍勢と接敵した。数は予想より少し多い。今はダッジ・4、ダッジ・3が前線の小規模殲滅にあたっている。できれば援軍か撤退準備を願いたい」

「マスター、ダッジ・5より援軍か撤退準備を要請されています。いかがなさいますか?」

 オペレーターは艦長であるマスターに問う。

「では、撤退用の準備を、お願いします。全員怪我がないようにお願いしますね」

「了解」

 ダッジ・5はそこで通信を切った。

「朗報だぜ、お二人さん。マスターより撤退指示だ。ヘリが到着次第撤退するぞ」

「いいのか?」

「たりめぇだ。おまえさんの78式チャレンジャーが少々悲鳴をあげているぜ」

「そうだな、ダッジ・4、後方へ下がれ。ハザードは群から一定の距離を離れられないのは知っているな。私が足掛かりを作る。さっさと離れろ」

 ダッジ・4は上官の指示通り撤退準備を始める。上官は有言実行らしくダッジ・五と共にダッジ・4の撤退路を開けていく。

 目に見えて、ダッジ・4のチャレンジャーは背中に搭載されている魔導スラスターの出力が落ちている。78式チャレンジャーは足部に搭載されているローラーを残りわずかな魔力で稼働させている。

 生体魔力は生命力とも呼ばれているのだがその名の通り、命に関わる大事な力である。つまり消費しすぎると命の危険さえ出てくる代物であった。

 それから数分、いや十分は経っただろうか。高速ヘリが到着し、ダッジ・3の78式チャレンジャーが周囲の環境を確保し、最後に乗り込み、その場を撤退した。


「任務ご苦労様でした。皆さんの活躍による成果は国連直下のポルシェの方々が有意義に使ってくれることでしょう。やはり、お三方にお任せしてよかったです。最前線での攻撃を担うソルジャーのダッジ・4に、敵殲滅を担うアサルトのダッジ・3、後方支援攻撃要員のスナイパー、ダッジ・5。本当に相性が良いんですね」

 マスターである大佐からの言葉に全員は敬礼で返す。このマスター、見た目もその年齢も実に若く、クルーの中では未だ十代前半なのではという疑いも上がっている。恐れ多いために誰も本人の前で口にはしないが。十代といえばダッジ・4も十七ではあるのだが。

「いえ、マスターのご判断のおかげであります。部下であるダッジ・4に対する寛大なご判断誠にありがとうございました。もちろんコマンダーの作戦もあってのことですが」

「余計な世辞はいい。ダッジ・3。いや、今はシェラ中尉か」

「そうですね。作戦時間外ではありますから、乾道作戦士官殿」

 全く、と頭を抱えるような仕草をする乾道少佐に対してアンナ大佐がまぁまぁと宥めている。

「申し訳ありません。余計な心配をかけました」

「こちらこそ申し訳ありません。下手な一言でありました」

 アンナ大佐は頭を上げるように促してくれる。彼女のこの優しさが過酷なこの部隊としての戦闘で傷ついた心を癒してくれると言うのがもっぱらの話題らしい。そんな優しさが人一倍かけられているのが我らのダッジ・4、千原要なのだが、当の本人らには全く自覚がないといった状況らしい。千原軍曹にとって災いしていることと言えば、アンナ大佐の魅力にクルーが皆メロメロになっており男女共々から刺々しい視線を向けられていることだろう。これに対しても千原軍曹は自覚なしなのが幸いと言ったところだろうか。

 三人は艦長室から退出し、それぞれの居住区に戻った。

「それじゃあ、アンタたちしっかり休みなさいよ」

「「了解」」

 シェラ中尉は女性区画へと向かっていく。

 ダッジ・5ことクリス・アレン軍曹が肩を組んでくる。

「よう、色男。これから俺たちは長い休みに入るわけだがおまえさんはどうすんだ?アンナ大佐でも誘うのか?」

「そこで大佐が出てくるのはよくわからないが休暇先はハワイだったか?」

「らしいな、多分綺麗な姉ちゃんたちが際どい水着を着ているんだろうなぁ、むふふぅ」

 はぁ、と大きなため息が千原軍曹から漏れる。彼がクリス軍曹の洒落に付き合えないのは若さゆえの生真面目さからだろうか?

 千原は肩にあるクリスの手を払いのけ、簡易ベッドに寝っ転がる。魔導兵器にずいぶん魔力を持っていかれたようだ。

 すぐさま、意識の結び目は解かれ、眠りについた。

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