イデアのブートキャンプ開催決定
ちょっと短めです
先日、ファーレン遺跡の中層で大型ミミズと追い掛けっこをしたシドとライト。
今日は動く気になれずに、拠点でのんびりとダラケていた。
昼食にシドが作った大量のパスタ料理を胃に収めた後、日の当たる場所に寝ころび昼寝としゃれこんでいる。
最近外は寒くなっているが、拠点の中は暖かい。
これなら凍え死ぬことは無いなと安心して午睡をむさぼる2人であったが、ライトの情報端末に通信が入る。
遺跡探索の時など仕事の時は無音設定になっているが、休みの時は着信音が鳴るようになっていた。
チンコロコン・チンコロコン・チンコロコン
微睡んでいたシドは、相変わらずふざけた音だと思いながら昼寝を続けようとする。最初はイラっとしたが、慣れてくると意外に耳に心地良い。
着信に気づいたライトが情報端末を手に取り、通信を繋げた。
「タカヤ、どうしたの?」
通信を繋げてきたのはタカヤだった。
『ああ、ライト、ちょっとぶりだな。ちょっと、お前とシドさんに頼みたいことがあってさ・・・』
「ボクとシドさんに?どんなこと?」
『ええっと・・俺達に付けてくれた訓練あるだろ?あれをアズミさんとミリーさんも受けたいって言っててさ・・・』
「・・・・え?本気でいってるの?」
『ああ、かなり本気みたいだ。なんとかならないかな?』
「ええっと・・・・ちゃんと説明した?」
『ああ、ユキが内容は全部説明した。でも強くなるために必要ならやりたいって・・・・』
「・・・・ちょっと待って、シドさんに聞いてみる」
ライトはそう言って情報端末を置き、ガチで寝始めたシドを起こす。
「シドさんシドさん・・・起きてよ」
ライトにゆさゆさと揺すられ、目を覚ますシド。
「んあ?・・・・なんだよ・・・・」
寝入った所を起こされご機嫌斜めな様子だった。
「今タカヤから通信が入っててさ。前にやった訓練を付けてくれって言ってるんだけど・・・」
「訓練?・・・タカヤとユキに必要か?」
「あの二人じゃ無くて、アズミさんとミリーさんが受けたがってるらしいよ?」
ライトは通信の内容をシドに伝えると、シドは難しそうな顔をして腕を組む。
「ん~~~・・・・・先輩ワーカーに訓練を付けるってのはどうなんだ?」
「わからないけど、本人が希望してるみたいだけど」
シドは通信の内容を知り悩んだようだが、タカヤと話してみることにした。
「タカヤ、本当にアズミさん達が訓練を受けたいって言ってるのか?」
通信状態の情報端末に映るタカヤに向かってシドが質問する。
『ああ、そうだよ。頼めないかな?』
どうやら本当にアズミとミリーはシド(イデア)の訓練を受けたがっている様だった。
「まあ、今は無理に仕事する必要も無いから構わないぞ?料金としては前と同じくらいかかると思うけどな。弾薬とか回復薬とか」
『ああ、それなら問題ないぞ。ちゃんと説明してあるから』
向こうでもちゃんと説明はしてあるらしい。
「わかった。また日取りは連絡するけど、いつがいいとかあるか?」
『いや、大丈夫。シドさんとライトの都合に合わせるぞ』
「わかった。また連絡する」
シドはそう会話を終わらせ、通信を切る。
「訓練やるの?」
「そうだな・・・まあ出来るだけやってみようか・・」
<今回は数年ワーカーとしてやってきた人物が対象です。レベルを上げても問題無いでしょう>
イデアはやる気の様だ。
「その辺りはイデアに任せるわ。準備するにしても、今はミスカさん達いないしワーカーオフィスで揃えるか?」
「非殺傷弾ならガンショップに行くべきだよね。回復薬はワーカーオフィスで手に入ると思うけど、食事は?一番のキモでしょ?」
「そうだよな~・・・そこはタカヤ達がいるからキッチリやってもらって・・・・なんだ?」
色々考えていると、今度はシドの情報端末に着信が入る。
画面を見ると、キクチからの通信の様だった。
「はい」
『おう、シド。今大丈夫か?』
「ああ、大丈夫だけど?」
『それなら仕事の依頼だ。お前にワーカー志望の連中を鍛えて欲しい』
これまたタイムリーの依頼だった。
「・・・・・なんで俺なんだ?」
『タカヤとユキを鍛えただろ?その訓練内容を新しく作る訓練所のひな形に出来ないかって話があってな。物凄く上の方で許可が下りたから実施することになったんだ』
「いや、俺は訓練所の教官じゃないぞ?それにあの訓練について来れるヤツは、かなり根性が座ってないと無理だと思うんだけど・・・」
『その辺りはタカヤとユキから聞き取りしてるから大体把握してる。防壁内のワーカー志望の中から志願者を募るんだが、第三区画でも数人用意してほしい』
「いや、急に言われてもさ・・・・ついさっきタカヤから一緒にチームを組んでる先輩ワーカーにも訓練を付けてくれって言われてるんだよ」
『・・・・・・・なんだその話は?』
そこからは、ライトが代わりに説明を行う。タカヤとユキが強くなれた訓練があるのなら、自分達も受けたいとアズミとミリーが言ってきたことをキクチに伝えた。
『・・・・・・なるほどな。現役ワーカーもか・・・・よし、その話と混ぜちまおう。必要なものがあったら俺に言ってくれ。オフィスの方で手配する』
「いや待て待て。依頼って話なら報酬はどうなるんだ?」
『お前とライト二人に1億ずつ出す。必要な経費はワーカーオフィス持ちだ』
「「1億って・・・・・」」
かなりの大報酬に声が揃う2人。一体何人を訓練したらいいと言うのか?
「何人面倒見させる気だよ?」
『出来れば30人は見てもらいたい。多ければ多いほどいい。もちろん訓練の質が下がらない程度の人数だな』
シドとライトは顔を見合わせ少し考える。するとそこにイデアが入って来た。
<受けましょう>
<イデア?>
<費用をワーカーオフィスが持ってくれるのであれば問題ありません。30人を実戦可能なソルジャーに育てるなら2カ月は欲しいところですね>
<いやワーカーな?>
軍用AIの本能の様なものが騒ぐのか、イデアは非常に前向きだった。
「・・・・・・期間は?30以上ってなると1カ月くらいは掛かると思うぞ?」
『逆にそんなに短くて良いのか?』
<・・・・・・まあ問題ありません。初期訓練は短期集中で行った方が効果があります>
「・・・まあ、それくらいで大丈夫だろ。出来が悪かったら伸びるかもだけど・・・ライトもそれくらいだったし」
一応正規の依頼の為、断言せずに予防線を張るシド。
『わかった。要望はメッセージで送ってくれ。なるべく早くな』
「ああ、わかった」
『よし、頼んだぞ』
キクチはそういい、通信を切る。
なんだかタカヤ達の訓練から話が一気に大きくなってきたようだ。
<直ぐに要望を纏めますので、暫くお待ちください>
ノリノリのイデアは要望を纏め始め、同時に訓練メニューを考え始めた様だった。
「・・・・・ボクはタカヤに話しておくよ・・・・」
「・・・俺はドーマファミリーに訓練受けたいって奴を探してもらうわ」
こうして、イデア監修地獄のブートキャンプ開催が決定されたのであった。
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