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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
74/92

ランク制限

前の話が短かったので追加で投降します。


翌日、シドはキクチから送られてきた尾佐舟刀工の連絡先に通信を送る。

通信に出た営業担当に自分がワーカーをやっている事と要件を伝え、今使っている双剣を超える物作って欲しいと要望を出した。

新しい双剣の形状や素材、切れ味重視か耐久重視か等を伝え、今の双剣を鑑定してから見積が出されることになった。

「あとは、あの双剣が尾佐舟刀工に届けたらいい訳だな」

「輸送企業に予約取っといたよ。送られてくるケースに入れて外に置いておいたら回収されるってさ」

「ありがと。さて、今度はお前の防護服かパワードアーマーだよな?イデアはどっちの方が良いと思う?」

<ライトの身体拡張は一般向けですが、現代文明の身体拡張よりは優れています。鍛えていけば現在のシドと同等の身体能力は手に入るはずですので、パワードアーマーでは無く防御重視の防護服の方が良いと判断します>

<ボクも生体シールドを作れる様になったりする?>

<はい、それは標準機能ですので>

<ライトも空中を歩く訓練だな。難しいぞ~(笑)>

シドはニヤニヤしながら自分が苦戦した訓練の事を思い出す。

<頑張るよ。後は身体能力だよね・・・・筋トレとか?>

<シドが行った強化訓練で上昇させる事ができますが、ライトの場合は力では無く瞬発力を鍛える鍛錬をするべきでしょう。すでに訓練メニューは考えてありますのでご安心ください>

<はっはっは!イデアの訓練はキツイぞ~。頑張れよライト!>

シドはライトが自分も経験した訓練を行う事が嬉しいようだ。

<シドは力と瞬発力・持久力を上昇させる訓練メニューがありますので、ビシバシ行きましょうね>

<・・・・・・>

イデアメニューはシドにもあった様だ。その事に愕然とするシド。

<頑張ろうねシドさん>

ライトは固まったシドにニンマリとした顔を向ける。



キョウグチ地下街遺跡でオートマタに苦戦を強いられ、一歩間違えれば殺されていただろう状況を踏まえ、シドとライトはイデア考案の訓練を行っていた。


拠点の駐車場で、シドは自分の防護服と取っ組み合いをしている。

防護服はイデアが操作し、エネルギーシールドも使用してシドと同等のパワーが出る様に調整されていた。

お互い肩に手を置き、全身の筋肉を使って押し合っている最中だ。

シドと防護服では重量の違いがあり、軽いシドは押し負けない様に自分の生体シールドを足元に発生させ踏ん張っている。

防護服も同じように地面に固定されており、徐々にシドを押し込んでいった。

「ぐぬぬぬぬ!!」

歯を食いしばり、全力の力を込めて押し返すシド。しかし、疲れを知らない防護服は徐々にシド後ろに押されていく。

「フギギギギ!」

渾身の力で押し返そうとするが、防護服はシールドの圧を強めシドを押し倒す。

「うお!!」

完全に押し負け、シドは背中から倒れ込んだ。防護服は独りでに起き上がり、シドの前で直立する。

「はあはあはあ・・・」

<シド、暫く休憩です。水分を補給して下さい>

「はあ・・・はあ・・・はいよ」

体内のナノマシンが急速に体を回復していくのを感じながら、シドはボトルに口をつける。中身のトレーニングドリンクを喉に流し込み、ライトの様子を伺った。

「・・・・あいつはあれで良いのか?」

シドの視線の先でライトは、顔を顰め、歯を食いしばりながらラジオ体操を行っていた。

目を閉じ、大量の汗を流しながらラジオ体操をする姿は、知らない物が見ると滑稽に映るだろう。

<ライトの防護服のシールドを私が操作し、筋肉のバネを使用しないと動かない様にしています。あの体操は全身の筋肉を動かすのに適していますので非常に効率的です>

ライトは、キョウグチ地下街遺跡で損傷した防護服の他に、薄手の防護服を着用していた。その防護服のエネルギーシールドをイデアが操作することで、動きに負荷をかけている。

動かしている途中に力を抜けば、シールドの力場に負け、関節が逆に曲がっても可笑しくない為、ライトは必死に行っていた。

「2重のエネルギーシールド張ったのに貫通したのか?あの炎」

<はい、2枚合わせてもシドのDMDのシールドに比べて半分以下の出力しか出せませんでしたからね。次はDMDレベルの防護服を用意する必要があります>

「それでもあのエネルギーガンの攻撃は貫通するけどな」

<エネルギー兵器に特化させれば可能かと。その分、物理攻撃に弱くなりますが>

「痛し痒しだよな~」

<その辺りは旧文明でも克服できていません。両方を求めればどっちつかずの中途半端な性能になってしまうでしょう>

シドの視線の先で、ライトが力尽きたように崩れ落ちる。

「ゼエゼエゼエゼエ・・・・・5セット終わった・・・・」

<お疲れ様です。ライトも休憩してください>

イデアの許可が出たため、ライトもボトルに口をつけゴクゴクと中身を飲んでいく。

「ぷは~~・・・・はあ・・はあ・・はあ・・・きつい・・・」

<シドもライトも成長がみられます。このまま一週間はこの鍛錬を続けましょう>

イデアの言葉にガックリを項垂れる2人であった。


訓練は続いていき、2週間たつ頃には、シドは防護服を完全に押し勝つまでに出力を上げ、ライトはシールドの負荷を最大に上げた状態で10セットまで行える様になっていた。


<ふむ、ようやく第一関門突破ですね。今後のメニューは明日伝えるとして、今日はこれで終了としましょう。シド、食事の準備に取り掛かってください>

「鬼か?!俺達の状況みてみろ!まだ全身痙攣してるんだよ!」

「・・・・・」

イデアの要求にシドが吠える。ライトに至っては声も出したくない様だった。

<今日は脂質を抑えてタンパク質を豊富に取れるメニューがよいと思います>

しかし、シドの回復状況を把握しているイデアは、シドの抗議に取り合わずメニューの指定をしてくる。

「・・・・・・くっそ・・・ライト、茹で鳥でいいか?」

「・・・ご飯にあうなら何でもいい・・・」



体の回復が終わったシドはキッチンに立つ。

最近お気に入りの、酔いどれ料理研究家が配信していた鶏胸肉を鶏ダシで茹でた料理を大量に作る。待ち時間は掛かるが簡単で美味いと最近気に入っているのだった。

「シドさんお風呂空いたよ~」

米を炊き終わったライトは先に風呂に入っていた。

「おう、入って来るわ」

肉は沸騰した鶏ダシに沈め、余熱で火を通すだけの為、シドはキッチンから離れ風呂に向かう。


湯船に浸かり、今日の疲れを洗い流していく。

(ああ~~・・・・そういや、今回の報酬の確認してなかったな・・・装備を整えて余る様なら風呂の改装でもしてみるか)

シドは、以前泊まっていた宿の回復薬入りの風呂を拠点に設置したいと思っていたことを思い出す。

<イデア~、この前の報酬って振り込まれてるか?>

<はい、総額で4億7000万コール振り込まれています>

<<はあ?!>>

シドだけでなく、念話が聞こえていたライトまで驚愕の反応をする。

<たった二日で4億越えかよ!>

<・・・オートマタかな?>

<オートマタとエネルギーガンが2億6500万、マップデータが1億8000万、モンスター討伐全体で2500万コールになっていますね>

<オートマタの価格がぶっちぎりだな・・・>

<オートマタがあのまま暴れていればヤシロ達も含めて5番地点は全滅していたでしょう。それに、他の地点でもオートマタが出現した様で、その正体を決定づける証拠にもなった様です。複数のオートマタが出現すると言う事であの遺跡は封鎖処置とされた様ですね。その辺りが評価されたものと思われます>

<まあ、2億越えの賞金でももう一回戦いたいたとは思わないけどね>

<そうだな~・・・今なら接近戦でも勝てると思うけど・・・あの防御力は異常だろ・・・>

<旧文明の携帯兵器に対応出来るように作られていますからね。頑丈なのは当然です>

<それはそうだね・・・>

<・・・まあ、報酬は入ったんだ。装備を整えて余った分で風呂の改修しようぜ?宿にあった風呂の豪華版を!>

<ああ、いいね。あれは気持ちよかった>

<体のメンテナンスに予算を費やすのは賛成です>

<よし、まずはライトの防護服からだな>

<明日の訓練は中止にして、販売店にいきますか?>

<そうだね!それがいいよ!>

ライトは訓練が休みになると言う事にテンションが上がる。

<わかりました。明後日以降の密度を調整します>

<<・・・・・・>>

明日サボる分、その次の日が大変になっただけであった。


シドは風呂から上がり、夕食の配膳を済ませる。

2人しかいないテーブルには大量の鶏肉とサラダとスープ、一升炊きの炊飯器が置かれ茶碗に山盛りの白米が用意されている。

「おし!食うか!」

「いただきます!」

ハードな訓練を行い、腹ペコの2人は目の前の料理に手を付けていった。

シドは切るのが面倒くさくて、塊のまま皿に盛った胸肉の塊に齧り付く。絶妙に火が入った鶏肉はぷるぷるでジューシーに仕上がっており、下味の塩と鶏ダシの味が染みて非常に美味しい。

鶏を茹でた汁に野菜を刻んで入れただけのスープだが、旨味が溶け出ていてこれも美味い。

ライトが丹念に炊いた白米と一緒に口に放り込めば、米の甘味と鶏の旨味が一緒になり幾らでも食べられそうだった。

「いや~、このお肉美味しいよね」

「モグモグ・・・ゴックン・・そうだよな。簡単で美味いってのは最高だな」

「胸肉ってパサパサするからあまり好きじゃ無かったけど、これは美味しい」

ライトも気に入っている様でむしゃむしゃと肉を食いちぎり、ご飯と一緒に胃に流し込んでいく。

<毎回思うのですが、良く噛んで食べて下さいね。栄養吸収率に影響しますので>

「へいへい」「はいはい」

イデアの忠告を聞き流し、シドとライトは胃がパンパンになるまで料理を詰め込んでいった。


「ふい~~・・・食った食った・・・」

「うん、お腹いっぱい。ごちそうさまでした」

シドは背もたれに持たれて腹を摩り、ライトは手を合わせてお辞儀をする。


「さて、明日の買い物ってどこの防護服を買いに行く?」

「ボクとしてはやっぱり薄着の方がいいんだけどな~」

ライトとはキクチから紹介されたメーカーの情報を表示させて色々調べていく。

<物理的な防御も必要ですが、これからはエネルギーシールドの出力も考える必要があります>


ライトは数社のなかからエネルギーシルドの特化した防護服をリリースしているメーカーに目を付けた。

「この霧生プロテクターって企業はどう?」

霧生プロテクターは、西方の都市ではスポーツ用のプロテクターをリリースしているが、ワーカー達には強力なエネルギーシールドを発生させるバワードスーツや防護服を提供している企業だった。

デザインとしては、基本的に薄く軽快なイメージを受ける物が多い。その分パワードスーツでは出力と物理防御力が低い傾向にあるが、エネルギーシールドを発生させた場合の防御力では非常に優秀な成績を出している様だ。防護服でもエネルギーシールドに重点を置いており、シールドスーツと分類される防護服を多く作っている。

<ライトの装備としては良いのではないでしょうか。シドの様に超接近戦で取っ組み合いをする訳では有りませんし、エネルギーシールドの発生装置と情報収集機をリンク出来れば、防御については安心できると判断します>

「なら、明日はこの企業の販売店に行くでいいんだな?」

「そうだね、良いものが見つかるといいけど・・・予算ってどれくらい見たらいいかな?」

「ざっくり1億くらいで考えてればいいんじゃないか?」

<そうですね、あとは性能を見て調整すればよいかと>


こうして、ライトの防護服の購入予算も決定し、翌日霧生プロテクターの販売店に向かう事になった。




「いらっしゃいませ。本日はどの様なご用件でしょうか?」

翌日、ライトとシドは霧生プロテクターの販売店に足を運んでいた。

「ええっと、ワーカー用の防護服が欲しいんですけど」

「承知しました。失礼ですが、ライセンスの確認を」

ライトは自分のシーカーライセンスを受付員に渡し、確認を取る。

「お返しします。担当者が参りますので、お掛けになってしばらくお待ちください」


2人はテーブルセットに座り、担当者が来るのを待つ。

「俺がT6買ったときもこんな対応だったな~」

「そうなの?販売店になるとこういう対応なんだね」

「提携店ってことだから、ランクに見合わない性能の防護服は買えない可能性もあるよな・・・」

「ああ、そういえばそんな条件あったよね」

しばらく待っていると、霧生の担当者がこちらにやって来る。

「大変お待たせ致しました。本日担当させて頂くウシジマと申します」

ウシジマは2人に名刺を渡してくる。

「どうも、よろしくお願いします」

2人は名刺を受け取り、早速防護服の話を聞くことにした。

ウシジマはシーカーランク28前後の商品を紹介してくる。しかし、この内容では前回ガンスから購入した防護服を同等の性能であり、今後予測される戦闘にはついていけないと思われた。

「すいません、もう少し高スペックの物はありませんか?」

ライトはウシジマにそう聞く。

「これ以上ですか?しかし、ライト様のランクではこれ以上の物となると購入制限が掛かってしまいまして・・・・」

ウシジマは申し訳なさそうにライトに言う。

「・・・・・う~ん」

やはりランクがネックになってしまうようだった。

「この防護服でもファーレン遺跡の中層なら、問題なく活動できる性能がありますが?」

「いや、俺達この前キョウグチ地下街遺跡でオートマタと戦ってですね。コイツの防護服がボロボロになったんですよ。なので、今より高性能なヤツが欲しいんです」

「オートマタですか?!」

「はい、俺の防護服 唐澤重工製のDMDのエネルギーシールドを貫通して装甲まで簡単に削る様な攻撃してきたんで」

「そ・・・そうですか・・・・しばらくお待ちください」

ウシジマはそう言い、一旦席を離れていく。

「ここで買えなかったらどうしたらいいんだろう?」

「ん~・・・キョウグチに行けって言われる前にファーレン遺跡でランク上げしか無いんじゃないか?ランクさえ上げたら装備の購入に問題なくなるんだから」

<もしくは、ミスカとガンスが帰って来るのを待つかですね>

「そうなるよね~・・・」

シド、ライト、イデアの3人で防護服が購入制限の為、買えなかった場合の相談をしていると、ウシジマが戻って来る。

「お待たせしました。確認してまいりましたが、現在のランクではこの性能帯の商品しか販売できない規則となっておりまして・・・」

ライトはやっぱりそうか、と残念がる。

「ならこの中で一番マシなヤツ買っとけよ。そのままじゃファーレン遺跡に行くのも危険だからな」

「・・・うん、わかった」

ライトは提示された商品の中で一番エネルギーシールドの出力が高い商品を選び、購入する。

今着用している防護服の上から、新しい防護服を羽織り、エネルギーシールドを発生させてみて調子を確認してみた。

「どんな感じだ?」

「2枚張る事には問題ないよ・・・でも強度がどれくらいかは分からないかな・・」

「・・・ちょっとそのままシールド張ってろよ」

シドはライトにそういうと、抜き手でライトのエネルギーシールドを攻撃する。シドの手は2枚のエネルギーシールドを簡単に貫きライトの鳩尾に触れるか触れないかの所で止めた。

「確かに強度不足だよな。DMDのシールドよりだいぶ脆いぞ」

「エネルギー攻撃に強いタイプにしたからね。それに800万コールくらいの価格帯ならこんなもんじゃない?」

霧生プロテクターとしては散々な評価を下されているのだが、ウシジマとしてはそれどころでは無かった。

(素手でこのランクのエネルギーシールドを貫いた?!身体拡張者だとしてもそんなワーカーがこの都市にいるのか?!)

銃器を受け止め、弾き飛ばす事を前提に考えられているシールドを、素手でぶち抜くシドに驚きを隠せなかった。

(ちょちょちょ・・これはもっと上に報告するべきじゃ無いか?!俺で止めていていいのか?!)

ウシジマはシドの膂力とそれを当たり前の様に流すライトの様子に焦り始める。

「しゃーないか・・・すみません。ランクを上げてまた来ます」

シドとライトはそういい、ウシジマに礼を述べて店を出ていく。

あまりの事に反応が遅れたウシジマは慌てて二人を見送りまたの来店を促す事には成功した。

その後ワーカーサイトにアクセスし、ライトと言うワーカーの事を調べる。これまでの戦績として、主な活動場所はファーレン遺跡となっているが、経歴としては見た事が無い異様な物だった。

ランク1で登録し、最初の探索で遺物を納品した後すぐにランク10へ上がる。その後、短期間で16にまでランクを上げ、先日のキョウグチ地下街遺跡での調査任務を終えた後にランク28にまで上がっていた。

今まで様々なワーカー達を見てきたが、これほどまでにランクを高速で上げるワーカーは見た事が無かった。本来ならワーカーオフィスの不正を疑っても可笑しくないレベルである。

しかし、彼の相棒であろうシドと言う少年は素手でシールドを2枚も貫通させた。シドの事も調べてみるが、彼もあり得ない程の短期間でランク42にまで到達している。

これは上司に報告せねばならない。ウシジマは直ぐに報告書を作成に入るのであった。


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