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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
68/72

ミスカ達と食事 それとイザワの出身

ちょっと短いのでもう一話更新します。

シド達は本部に帰還し、粗方の報告を済ませる。

特に何か言われることもなく報告は終了し、仮設の宿泊施設に向かった。

その途中、見覚えのあるトラックを見つけた。

「おーい、シドー、ライトー」

トラックの近くで手を振りながらミスカがこちらを呼んでいた。

「ミスカさん、こっちまで来てたんですか?」

「そうやねん、そろそろ東方に仕入れに行こか思てな」

行商人であるミスカ達は、東方に移動し、そこで商品を仕入れてダゴラ都市でうる生活を送っていた。

「そうなんですね、気をつけて下さい。前回コッチに戻って来る時はモンスターに追われてたんですから」

「大丈夫やって、今回はちゃんと護衛も雇えたし。問題なくミナギ都市まで行けるよ。それでな、前ご飯一緒に食べへんか?って話あったやん?ここの食堂で悪いけど、一緒にどうや?」

依然ミナギ方面防衛拠点で、シドはガンスから食事に誘われたが、大型モンスターの襲来で延期になっていたのだった。その時の約束をここで果たそうとミスカは考えた様だった。

「あ、はい。是非に」

シドとライトはミスカ達にごちそうになる事にする。



食堂には大勢のワーカー達が集まっており、思い思いに食事を楽しんでいた。

その一角に4人は腰を下ろし、注文を行う。

「いや~、シドもライトもよう食うな。ライトなんか最初は小鳥が啄む程度しか食わんかったのに」

ガンスは大量の料理を注文するシドとライトに驚いている様だ。

「ええっと、ワーカーになるって決めてから体が資本だからって沢山食べる様に言われたんです。本格的に鍛え始めると、食事の量もだんだん増えていって・・・」

ライトは少し恥ずかしそうに言う。

「ええやんええやん、男の子なんやさかい。ぎょ~さん食べたら。背も段々伸びて来てるしな」

ミスカも嬉しそうにいいながらライトとシドを眺める。

「つっても酒はまだあかんみたいやけどな」

ガハハと笑いながらガンスはジョッキを傾ける。

「まあ、まだ飲める年齢じゃないですからね」

シドも苦笑いをしながらガンスに答える。ちなみにこの辺りでは18歳になるまでの飲酒は好ましく思われていない。だがらといって飲んだら罰則がある訳でもない為、18歳以下でも飲酒を行う者は結構いるのだった。

<シドとライトは飲んでも問題ありません。ナノマシンが即座に分解して無害化しますので>

<それはそれで寂しくねーか?>

<いずれは酔うって感覚を味わってみたいような・・・>

<その時は設定でほろ酔い程度に抑えるようにしましょう>

注文した料理が届き、シドとライトは料理を腹に詰め込んでいく。

全員の食事が終わり、歓談の時間となった。ガンスは少し赤くなった顔でシド達と話していると、過去にシドの遺物を奪った職員の話を出してきた。

「そういや、前にシドを嵌めたイザワ?やったかいな。あいつ、都市を追放処分になったみたいやで」

「・・・・そうなんですね」

「・・・・・」

シドとライトは何故今、ガンスがその話を持ち出すのか不思議そうな顔をする。

ガンスはジョッキの中身を飲み干し、店員にお代わりを要求すると、シドの顔を真剣な表情で見つめ話を続ける。

「普通都市を追放されたらそこで終わりや。荒野で野垂れ死ぬか、野盗の一味になるのが精いっぱいやろな。でも、アイツはちょっと違うねん」

店員が持ってきたジョッキを受け取り、口を付けるガンス。

「ゴク・・・ゴク・・・ゴク・・・フー。俺も話を聞いてちょっと気になってな。普通、あんだけの大事になったら物理的に首が飛ぶもんなんやが、アイツが追放になったんが気になってな。商売仲間の伝手使って調べてみたんよ。そしたら、アイツ、中央のお偉いさんの庶子やったみたいや」

「庶子?」

シドは良くわかっていない様な表情で聞き返す。

「まあ、やんごとなきご身分の人が一般人に産ませた子供ってことやな」

ミスカがそうシドに説明を行った。

「それは6大企業の幹部クラスの子供って事ですか?」

ライトは今の統治体制でやんごとなきと言われたら6大企業を思い浮かべた様だ。

「いや、今の大陸の統治って言うたら企業が行ってるんやけど、中央は企業が台頭する前の権力者が押し込められてる場所なんよ。古代風に言うと貴族とか王族って奴やな」

「へー・・・そんな奴等、まだ現代にいたんだな・・・」

「まあ、ほとんど権限もない様な連中や。企業からしたら、消したら反乱分子が活発化するし、生きとったら余計な事するヤツ等ってことで煙たがってるんやけど、中央では王様気分味合わせたるから外に出るなって言われとる連中やな」


彼らは昔は権力を持ち、企業を統率する役目を担っていたのだが、世襲制の為か世代を重ねるごとに劣化していき、結成当時の理念など忘却の彼方であった。そして自分達が生まれながらに特別な存在であると勘違いをし始める。

自分達の生活の質を上げるために、民衆や企業を使いつぶし、当時の人類生存圏を大幅に縮小させたのだった。

それでも自分達の生活が脅かされている実感は無く、どれだけ陳情が積みあがっても所詮虫の鳴き声と無視を決め込んだ。

その状況を打破する為に、当時モンスターと戦っていた軍人や装備・兵器を開発していた企業が手を組みクーデターを起こす。

自分達を守る為の剣と盾に反旗を翻され、彼らに勝ち目などあろうはずがない。しかし、それでも彼らの考えは変わらなかった。企業は彼らの殲滅も止む無しと思っていた所にモンスターの大規模襲撃が方々で発生する。

そうなると中央の殲滅などに戦力を割く訳に行かず、少数の監視を置くに留めて、大部分はモンスターの討伐に地方に散って行った。

数年間はその状況が続いたのだが、中央を崇拝する者達が現れ、企業が中央の権利を脅かしていると主張し、企業に対して攻撃を仕掛けてくる様になる。

人類存続の為に戦っている企業や軍人からすればたまった話ではなく、即座に鎮圧に動いた。

しかし、潰しても潰しても後から湧いて出てくるため、中央への崇拝心を利用し彼らの行動を止めようと考える。

中央地域の管理は彼らに任せる代わりに、外部の事は企業の管轄にする様に要求、この提案を飲めば、多額の献金を行うと中央に突き付けた。

献金につられた中央はその話を承諾し、企業は当時の軍人たちを取り込んで、総力を挙げて人類圏の拡大を実施した。

そして現在まで至り、企業の力は中央を遥かに超える。中央は完全に情報封鎖された場所で企業からの献金のみで生きているのであった。

今では中央崇拝者の数は減ってはいるが、まだまだ彼らが起こすテロ行為の被害は馬鹿に出来ない規模に上る。

タカヤとユキの両親の命を奪ったのも、中央崇拝者のテロが原因だった。


「そんでや、本来やったら中央から出て来られへんはずのイザワなんやけど。バックに中央崇拝者の存在がチラチラしとる訳や」

シド達はガンスが言いたいことがようやくわかって来る。

「あいつ等に理屈は通用せん。イザワが泣き着いたらお前らに襲い掛かって来る可能性は十分あるっちゅーこっちゃ」

ガンスはそういい、ジョッキに口を付ける。

「あんたらの実力やったら大丈夫やと思うけど、向こうも企業に対して喧嘩売るような連中や。油断だけはせーへん方がええで」

ミスカもシドとライトを心配しているようだった。

「そうなんですか、わかりました。注意するようにします」

「はい、気に留めておきます」

シドとライトはそういい、ガンスとミスカにお礼を言う。



シドとライトはミスカ達と別れ、自室で先程の話を行っていた。

<イザワな~・・・あいつ、何処までも俺の邪魔してくるんだな>

<まあ、シドさんに復讐してくるって決まった訳じゃないけど、気に留めといた方がいいだろうね>

<イザワの事や中央崇拝者の事はデータ不足で行動が読めません。万が一襲われた時の対策は用意するべきでしょう>

<対策って言ってもなー。常時銃を持ち歩くくらいしか思い浮かばないぞ?>

<とりあえずそれでいいのでは?ライトも護身用の銃を持つことをオススメします>

<護身用・・・ハンドガン程度でいいのかな?>

<それならこれ使えば?今のお前なら使えるだろ?>

シドは自分が使っていたA60を取り出す。

<俺はもうS200があるからな。お前の場合ライフルとかずっと持ち歩く訳には行かないだろ?>

<・・・・そうだね・・・・この依頼が終わったらもう一度撃たせてもらってもいい?>

<ああ、かまわねーぞ>

<護身用としてはオーバースペックな気がしますが、相手がどのレベルかわからないので過剰装備でもこの際は良しとしましょう>


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