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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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初めての中層探索依頼  シド VS バウンサー

シドはキクチと一緒に会議室に入り、遺跡中層での調査報告を行っていた。

「モンスターに関してはこんな感じだな。機械系が7割、生物系が2割、ハイブリッドが1割って所だ」

シドは今日の戦闘データをキクチに渡し、口頭でも報告を行う。

キクチは渡されたデータを確認し、スタンピード前の物よりだいぶ変化がある事を確認した。これは早急にワーカーオフィス内に知らせなければならない。

「はあ~・・・この人手不足の時に・・・参ったなこりゃ~」

昨日の疲れも相まって、さらに老け込んだように見える。

「人手不足って何かあったのか?」

シドはその様子に疑問を抱く。そもそも、中層はダゴラ都市のワーカー達の主な活動場所だ。それなのに、今日遭遇したワーカーは盗賊紛いの連中しか見かけていない事に疑問を持ったのであった。

「今はミナギ方面で発見された遺跡の調査にランク25以上のワーカーはほとんど取られてるんだよ。なかなか広大な遺跡らしくてな、遺物の回収だけじゃなく、マッピングやら照明の設置やらで大忙しって訳だ」

キクチは目頭を揉みながら、シドの質問に答える。

<シドが発見報告をした遺跡でしょう。私がサーチしただけでも相当な広さでしたから>

<ああ、あそこか>

「あそこってモンスターもほとんど居なかったと思うんだけど、そんな高ランクワーカー達が必要なのか?」

「そりゃー、遺跡は何が起こるか分からんからな。モンスター云々より、シーカーの活躍場所も多い。だいたい高ランクのシーカーは同ランク帯のハンターがセットだからな・・・・まて、なんでお前がその遺跡の事情を知ってるんだ?」

キクチはシドがその遺跡にモンスターがいないと言う事を知っているのに疑問を持つ。

「ん?ミナギ方面防衛拠点から北東に20kmくらい行ったところの遺跡だろ?あれは俺が見つけて報告したからな」

「・・・・・」

キクチは額に手を当て俯き少し耐える。心の中では(この忙しさは全部お前のせいじゃねーか!)と叫んでいるが、シドに当たっても仕方がないと理性で押しとどめた。

「・・・俺は聞いてなかったんだが?」

キクチは顔を上げ、少し笑顔を浮かべながらシドにそういう。

「・・・いや、俺は拠点の司令部に連絡したら、その後都市の職員が来て後は任せろって言われたから・・・・」

シドは何とも言えぬ迫力を放つキクチの笑顔に気おされながらそう言い訳をする。

「そうかそうか、なるほどな。でもな、シド、俺はお前の担当になっちまってるんだ」

さらに笑顔を深めシドにいう。

「そういう場合は、俺にも報告をして欲しい。報・連・相、大事だ。報告・連絡・相談、今度からはしっかり行ってくれ」

「お・・・おう、わかった・・・」

シドは今までで一番の威圧をキクチから感じ、素直にそういう。

「それでだな、お前の戦闘データに対人戦の記録があるんだが、これはどういうことだ?」

シドから送られてきたデータを表示している端末を人差し指でトントン突きながらシドに説明を求める。

「ええっと・・・俺が遺物を持って中層から戻ろうとしてたら、いきなり囲まれて遺物を寄越せっていわれてだな・・・断ったら撃って来たから応戦しただけだ・・・」

別に悪い事ではない。撃たれたら撃ち返す。ワーカーなら当然の事だろう。だが、今のキクチはなにやら凄い迫力がありシドはなぜか怒られている様な気分になってきていた。

「なるほどなるほど。それで戦闘になって34人も討伐したって訳だな?」

キクチのトントンの圧が強くなる。

「・・・・・いや、皆殺しにしたって訳じゃないぞ?ちゃんと降伏した奴は見逃したし・・・」

<しっかり武器は破壊していましたけどね>

イデアから突っ込みが入る。これはキクチの耳には届かないのが幸いだった。

<うるせー>

「コイツ等はバウンサーってワーカーチームだ。此処より少し中央よりの都市で護衛業をやっていた連中だな。2カ月くらい前からこの都市の周辺で活動し始めたんだ。40名くらいでチームを組んで活動してたんだが、今日遺跡から3名帰還して、その内1名は重症の為治療が間に合わず死んじまった。生き残りはバケモノに襲われたって証言しているんだが・・・こいつらの言うバケモノってのはお前の事か?」

キクチのトントンが速くなる。

「いや・・・どうだろう。帰り道にバケモノに襲われたのかな?ははは・・・」

シドはなにかマズかっただろうかと考えだし、誤魔化し始める。

「ははは!んなわけねーーだろう!!!!あいつらは丸腰でほうほうの体で逃げ帰って来たんだ!!途中でバケモノに襲われたんなら全滅してるだろうが!」

「・・・・・」

キクチは我慢できずキレる。シドはその剣幕に引くが、次第に俺は悪くないと思いなおし反論する。

「そんなこと言われてもな。あいつ等の方から攻撃してきたんだぞ?殺しに掛かってきて殺されるのは嫌ですは通らないだろ?」

シドも少しブスっとして言い返す。

キクチは両手で顔を抑えて声を出す。

「俺はなんて報告すればいいんだ?」

「そのまま報告すりゃいいじゃないか」

シドはオフィスの面倒事はそっちで解決しろよと投げ槍な返答をする。

「・・・・・ランク25のハンターが遺跡で戦闘になり、ランク35から25で編成された39人のワーカーチームを、たった一人で殲滅したと???そんな説明を誰が信じるんだ???」

「真実は小説より奇なりって奴だな」

「他人事みたいにいってんじゃねーーよ!!」

「仕方ないだろ。最初は10人前後だったのが、後からゾロゾロ出てきて撃ちまくって来たんだから。何度も言うが俺のせいじゃねー」

シドはうんざりしながら、キクチにそういう。

「・・・・説明だ」

「ん?」

「何があったのか1から説明しろ」

「え?いや、ライト達を待たせてるし・・・・」

「説明しろ」

段々目が座って来るキクチ。シドは観念して説明を行う事にし、ライト達にメッセージを送る。

「んじゃ、俺が遺物を持って中層から帰ろうとしたあたりからだな」



回想


シドはワーカーオフィスからファーレン遺跡中層の調査を依頼されており、ライト達と別れた後はモンスター討伐を行いながら建物内に侵入し、遺物を漁っていた。

<うーん、なんか機械系のモンスターばっかりだな>

<そうですね、おそらく繁殖能力に差があるのでしょう>

<どういうことだ?>

<生物系はモンスターとはいえ、生物です。機械系の様に工場で組み立てて直ぐに現場に配置とは行きません。通常繁殖から工場での培養でも、そこそこの時間がかかります。この前のスタンピードの際に中層の生物系モンスターの大半は討伐されたと考えるのが自然かと>

シドとイデアが念話で会話していると、シドはモンスターの気配を察知する。そちらの方を見ても何もいなかったが、シドが気配のする方にS200を構え銃撃する。

すると、空中で何かにぶつかったような衝撃音が響き渡り、何もなかった空間から機械系モンスターが現れる。

<またか・・・>

<このタイプはたまに遭遇しますね>

シドが中層に来てからこれで5度目であった。体長は4mほどで、二足歩行のドシっとした強化外装の様な外見をしている。動き自体は早くは無いが、両手の代わりに取り付けられたガンアームが4本、それぞれ銃を持ってこちらを狙っている様だった。

<今度はガトリングとキャノン砲かよ>

<弾幕をまき散らしたいのか一撃で仕留めたいのか、コンセプトがわかりませんね>

とはいえ、頑丈な機械系のモンスターが高火力の銃と、殲滅力の高い銃を装備しているのは問題だった。

しかし、今のシドが所有するKARASAWA S200を持ってすれば破壊は容易い。

<ちゃっちゃと壊すか>

シドは弾頭をSH弾頭に変更し、両手の銃で連射する。

防護服のエネルギーシールドとシドの剛腕で反動を完全に押さえつけ、狙い通りに飛んでいった弾丸はモンスターの中心部に命中。

複数回の衝撃をその体に叩き込み、胴体を粉砕した。

この辺りに出没するモンスターなら特に気を付ける奴はいないかと、シドは情報端末に入力されている今まで戦ったモンスターの記録を見る。

<151体・・・ね。これってどれくらい回ったら終わりにしていいんだ?>

<この辺りのエリアを回れば完了と見なされるはずです>

イデアはシドの視界にマップを表示し、巡回エリアを薄赤色で表示する。

<なるほど、適当に回って戻るか>

<そうですね、ライト達が戻って来るまでには終わらせておきたいです>

シドは地面やビルの壁を蹴り、遺跡の奥へと進んでいく。


巡回エリアを粗方回り終わり、ちょくちょく回収していた遺物でバックパックがいっぱいになる頃、シドは車まで戻ることにする。

<しっかし、ここのモンスターって大型が多くないか?まさかキャノンウォーカーまで出てくるとは思わなかったぞ>

<そうですね、これもスタンピードの影響なのでしょうか>

巡回中、以前のスタンピードでの都市防衛戦で、ライトと二人がかりで倒した大型機械系モンスターも出現したのだった。

あの時はかなり梃子摺ったのだが、今回は倒し方も分かっており、銃も強力になっていた為、ものの数秒で討伐する。

俺も強くなったもんだと思いながら、シドは帰路につく。


<ん~~、なあ、これって囲まれてるよな>

<そうですね、11人です。警戒してください>

しばらく前からこちらを伺っている者がいるのは感じていたが、この雰囲気だとまた因縁をつけられそうである。

流石にここまでスラムの組織が来るとは思えないが、相手はワーカーだろうか?

とシドが考えていると、段々と包囲を縮めてくる。相手は銃でこちらを狙っている者も散見され、戦闘意志ありと判断した。

<こりゃー襲ってくるな>

<はい、しかし、こちらから手を出すのは止めて下さい>

<わかってるよ>

すると、3人の男たちが姿を現し、シドに話しかけてくる。

「おいガキ。なんでお前みたいな子供が中層にいるんだ?」

その男は大柄で、完全に剃り上げた頭に金属のパーツを付けており、大型のガトリングを持っている。

まだこちらに向けてはいないが、あいつの仲間と思わしき連中は次々とこちらを狙い始める。

「俺はワーカーオフィスの依頼で中層の調査をしにきたんだよ」

シドは自分が中層に居る理由を述べる。

男は笑いを堪える様に肩を揺らし、シドの言葉を否定した。

「バカな事いってんじゃねーよ。俺達でも苦戦するようなモンスターがいる所にテメーみてぇなガキが調査だと?ダゴラ都市のワーカーは随分人材不足なんだな。それとも質が低いのか?」

<シド、この者たちは他都市からやってきたワーカーの様です>

<そうみたいだな>

「んで?何の用だ?こっちはもう帰る所なんだよ。用件なら手短にしてくれ」

シドは肩をすくめながらそういう。

「ああそうかい、なら荷物を軽くしてやろうと思ってな。その背中の物を置いて消えな」

男は片手で大型ガトリングをシドに向けそういう。

<あれは脅しですね。あの男の膂力ではあの銃を片手で撃つことは出来ません>

<軽く脅せば遺物を渡すと思われてるって事か・・・>

舐められている

シドの精神が完全に戦闘態勢に切り替わった。

「聞こえてんだろ?さっさと荷物を渡せ。そうすりゃー命は助けてやるよ」

「渡さなかったら殺すつもりか?」

イデアがシドの精神状態を正確に把握し、11人全員のターゲットを終わらせる。

「・・・俺がまだ撃ってねーのは、コイツで撃つとその遺物がお釈迦になっちまうかもしれねーからだ。渡さねーってんな挽肉にしてやるよ」

「そうか・・・断る」

「殺れ!!」

シドが断ると、男はガトリングを両手で持ち、他のメンバーへもシドへの攻撃を指示する。11人全員が隠れているのを止め、シドに銃を向け撃とうとした。

シドは会話の最中に貯めていた電気を全身に巡らせ、常人では認識できない速さでガトリングの男に近づき、顔面に手のひらを当て放電した。

バシーン!と電気が迸る音が走り、男は痙攣してうつ伏せに倒れる。

(よし、情報源はこれでいいな)

シドはそう思い、他の10人に攻撃を仕掛ける。近くにいた男たちの頭に両手のS200から銃弾を撃ち込み吹き飛ばす。

残り8人

シドは反時計回りで男たちに銃撃を食らわせる。避けられずに死んだ者が5人。シドは電光石火が発動している間に終わらせるため、瓦礫や空中を蹴り飛ばし射線が通った瞬間に弾丸を撃ち込んでいった。

戦闘自体はものの10秒ほどで終了し、シドは銃をホルスターに仕舞う。

<こんなもんか、これならまだライト達の方が手ごわかったな>

<彼らはずっとこのような訓練を行って来ましたからね。慣れもあるでしょう、総合力で言えばこの者たちの方が上かと>

イデアの評価を聞き、そういうもんかと思いながら、最初に電撃で攻撃した丸坊主の男の所へ移動する。

「おい」

シドは倒れた男に声を掛けるが反応がない。

「おい、起きろ」

シドは男の頭を蹴ってみるが全く反応を返してこなかった。

「?」

<シド、何をしているのですか?その男は死んでいますよ?>

シドが不思議そうに首をかしげているとイデアがそう伝えてくる。

<え?死んだのか?>

<はい、あの電圧が頭に直撃したのです。脳が焼かれていてもおかしくはありません>

<え~・・・>

<生かして情報を取りたかったのですか?それなら、手や足に電撃を流すべきですね。それに電圧も過剰です。頭や胴体に流し込むと殆ど抵抗なく重要器官に電流が流れ込んでしまいますよ>

<あ~、そこまで考えてなかった・・・>

<鎮圧用の訓練も加えるべきですね>

上手く決まったと思ったのに失敗して、さらに訓練が追加されたことに肩を落とすシドだった。


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