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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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待望の一撃

それから数日経ち、シド達4人はシドが購入したT6に乗って荒野を走っていた。

いつも訓練を行っている場所の道すがら4人で車の感想を語り合う。ちなみに車の運転をしているのはライトだった。


「この車すげーな。ほとんど振動しないぞ」

購入者のシドがそうT6の評価を言う。

「本当だね。これなら長時間の移動も疲れなくて済むよ」

運転者のライトも上機嫌だった。

「ねぇ・・・・ライトはハンドル握らなくて大丈夫なの?」

そう心配そうに言ってくるのはユキ。ライトがハンドルも握らず、ペダルにも足を置いていない状態で車を走らせているのが心配だったようだ。

「うん、大丈夫だよ。ボクの情報収集機と運転システムを連携させてるからね。ハンドリングもペダリングも問題ないよ」

このデザートイーグル T6は情報端末と連携させることで操縦者がハンドルやペダル操作をせずとも運転できる様になっているのだった。これのおかげで運転しながらモンスターと戦う事が出来る様になっているのだ。もちろん情報収集機を介しての運転は技術が必要になって来るが、そこは隔世遺伝者のライト。ものの数分で運転をマスターし、ゆくゆくは天井部に取り付けられるであろう銃器の扱いも出来る様に練習中なのだった。

「そんな事もできるんだな。俺達も車が買えるようになったら頼んだぞ、ユキ」

そう気軽にユキに言うタカヤ。

「簡単に言わないでよ。情報収集機って一口に言っても、かなり種類があるし、こういう遠隔操作って難しいんだから・・・」

シーカー志望のユキは、ライトが行っている事の難しさを理解していた。



「そろそろ着くよ」

ライトがそういい、全員が下りる準備を始める。


車を止め、車両のセキュリティーシステムを作動させる。これで盗難などの心配はほぼ無くなったと言える。万が一盗られたとしても連携している情報端末に車の現在地が送られてくるため、直ぐに居場所が分かるようになっていた。


「じゃ、今日も訓練を始めますか。タカヤとユキも今日からバックパックを背負って体力強化訓練をやってもらうぞ」

シドはそういい、二人にバックパックを渡してくる。ライトの時とは違い、養成所で訓練を行っていた2人はある程度体が出来上がっていたため、短期間でかなり体力が向上していたのだった。

「はい」「わかった」

2人はバックパックを受け取り、中に瓦礫を詰めていく。ライトも同じように瓦礫を詰め、準備が終わったら3人が横並びになる。

「あれ?今日はシドさんも背負っていくの?」

ライトがシドもバックパックを背負っているのに気づいた。

「ああ、俺のは瓦礫じゃなくてスクラップだけどな」

シドの背負っているパックパックに金属をいれているなら優に80kgを超えているだろう。それを背負って涼しい顔をしているシドはやはり身体拡張者なのだと3人は再認識する。

「じゃー、いつも通り真っすぐだ」

シドがスタートの合図を出し、3人は走り始める。

ライトはいつもよりペースを上げて駆けていき、タカヤとユキはいつもと違い荷物を背負っている為少しゆっくり走って行く。

過酷な訓練と回復薬のコンボは、2人の体を急速に強化させている様で初めは手ぶらでもキツイと感じていた岩場もなんとか超えていける様になっていた。

短期間での自分の体の成長を実感し、2人は驚きながらも岩を乗り越えていく。


コースを走り終わり、2人は荷物を降ろすと地面に体を投げ出した。

「はあ・・はあ・・はあ・・・やっぱりきついな・・・」

「そうね・・・でも走り切ったよ」

2人は辛そうにしているが、やり切ったという気持ちを噛み締めていた。

「ほれ、休憩するなら水分と回復薬を飲んでからだ」

シドはそういい、水と回復薬を渡す。ここ数日、ずっと飲んでいる回復薬を2人は飲み込み、体が回復していく感触を味わう。

「なんか、この感覚にも慣れてきたな」

タカヤは体を起こし、酷使した脚の感覚を確かめる。

「そうだね、慣れていいのかちょっと疑問だけど・・・」

ユキもそういい、タカヤと同じように自分の体の調子をはかっていた。

「二人共結構早く体力が付いたよね。ボクの時はもっと時間がかかったと思うけど」

ライトがそういい羨ましそうにする。

「お前の場合はひょろひょろの状態から鍛えないとだったからな。タカヤとユキはしっかり運動してたから早かったんだろう」

以前から運動していたということもあるが、体内に蓄積されていた栄養素が豊富だったと言う事もある。スラムで生きてきたライトと防壁内で生きてきた2人とでは雲泥の差があったのだった。

「じゃ、午前中はこの繰り返しだ。午後からの戦闘訓練はこれを使っていくからな」

そういい、シドは腰に付けていたA60を叩く。

ライトがMKライフルと同等の威力があると言っていたハンドガンを使用すると聞き、タカヤとユキの2人は顔を青ざめさせた。

「・・・・もう使うの?」

ライトは心配そうにシドに聞く。

<二人の体格なら問題ないと判断しました>

イデアがそう返答し、シドも死にはしないぞと返答する。

それでも威力が跳ね上がっているのは間違いない。当たれば痛いでは済まないことは明白だった。

2人はこれまで以上にシドの攻撃を受けない様に気を付けようと考える。


午前の訓練が終了し、昼食を挟んだ後午後の戦闘訓練が始まる。


今日もシドから逃げるのではなく、3人は果敢にシドに向かって行った。

全員でシドを囲い込むように布陣し、一斉に攻撃を仕掛ける。今までと同様に全てシドに避けられているが、最近はタカヤが直接シドを狙い、ユキが周囲に弾丸をばら撒きシドの逃げ道を塞ぐ。それらの弾道をライトが見極め、シドが避けようとする方向に攻撃するという連携を取っていた。

ここまでされるとシドも回避に集中しなければならず、攻撃にまで手が回らない。

しかし、すこしでも隙が生じると正確無比な弾丸が3人を目掛けて飛んでくるので油断は出来ない。

まずタカヤの銃が弾切れを起こし、マガジンを交換する為一旦戦線から離れる。そうなるとユキとライトだけでは弾幕が足らずシドに攻撃の猶予を与える事になった。まず狙われたのがユキである。ライトの様に逃げ回りながら正確に射撃することが出来ず、射撃が疎かになった隙を付かれシドの銃撃を受ける。

腹部にA60から放たれた非殺傷弾が命中し、今までのアサルトライフルとは比べ物にならない衝撃を受け、吹き飛ばされた。

「!!!」

最近は攻撃が当たっても銃を手放す事は無くなっていたが、あまりに強い衝撃に銃を手放しそうになる。痛みと衝撃で意識が遠のいていくユキだったが、渾身の力で銃を握りしめ、手放すことはしなかった。

後ろの瓦礫に叩きつけられたが、頭を腕でカバーし体を丸める事で全身を強打する事は防いだ。

(ダメ・・・動けない・・・)

銃撃を受けたからと言って蹲っていたら確実に死ぬとシドから言われており、撃たれた後も射線を切るなどの行動を起こそうとしても撃たれた衝撃が強すぎて身動きが取れなくなった。


そこにマガジン交換を終わらせ、シドに銃撃を行いながら走ってくるタカヤがたどり着く。無言でユキの防護服を掴み、瓦礫の陰まで引っ張っていく。その間もシドに対する牽制射撃は止めず、ライトと戦っているシドの自由を奪い続けた。


瓦礫の陰まで移動し、そこからシドに攻撃を加えながらユキに声をかけた。

「大丈夫か?!」

「・・・大丈夫。回復薬が効いてきたから」

ユキは訓練開始の際にいくらか回復薬を口の中に入れ、撃たれた場合はすぐに飲み込めるようにしていたのだった。

これはライトからのアドバイスで、3人全員が行っていた。これのおかげで、頭や心臓部の被弾さえ避ければ、しばらくするとまた動ける様になり、キル判定を免れる事が出来るのだった。

「うん、もう動ける!」

そういい、ユキはまたシドとの戦闘に加わる。3人は、この回復までの時間を稼ぎきれるまで粘れるようになっていた。


ライトはシドと撃ち合いながら必死に瓦礫の隙間を駆けていく。

シドの位置は把握しているが、あまりに速いスピードに狙いが付けづらい。訓練を始めたばかりの時は直線的な動きしか取らなかったシドが、最近はかなり立体的な動きをするようになってきたのだった。

(こんな動きをするモンスターっているの?!)

心の中で悪態を付きながらも、シドへの攻撃を緩めることは出来ない。タカヤとユキの援護も続いているが、シドの動きについていけずライトへの攻撃が厚くなってきたのであった。

<10分経ちました。シドが発電を開始しています。注意してください>

イデアから知らせが来る。訓練の間、イデアはシドでは無くライトのサポートについていたのだった。

<あれは卑怯だよ!>

最近、シドはイデアとの秘密の訓練をしていたようで、生体電気を体内で生成し身体能力を大幅に上げる事に成功したようだった。

ただでさえ手に負えないシドの身体能力がさらに向上する。

戦っている方からすれば悪夢以外の何物でもなかった。

シドの高速移動術の発現には準備に1分ほどかかる。今のうちにヒット判定を出さなければ3人がキル判定を受けるまで5秒もかからないだろう。

ライトはタカヤとユキに指示を出し、指定の場所に移動させながらシドに攻撃を加えていく。

シドが放つ弾丸を掻い潜りながら、ライトも移動していく。


たどり着いた場所は、周りが瓦礫に囲まれており2方向から攻撃を加える事が出来る場所で、ライトは自分を囮にシドをこの場所まで誘導し、一斉攻撃のタイミングを見計らう。


シドは高速移動術を発動させる際、かなりの集中力を必要とするらしく、その一瞬を付けばシドに一撃を入れる事が出来るかもしれないとイデアに教わっていたのだった。

ライトは体感時間操作を使用し、その一瞬を見極めんと集中していく。


瓦礫の向こう側からシドが現れ、こちらに両手の銃を向けながら銃撃してくる。

ライトはそれを紙一重で躱し、シドが高速移動に移る瞬間を待った。

滞空していたシドの足が地面に接地するより一瞬前、シドの体から紫電が発生し脚に集中していくのが見て取れた。

<今だ!!>

ライトは情報収集機からユキ達に指示を送り、全員フルバーストで弾幕を張る。

ライトの限界である1/10まで縮められた時間の中で、ライトはシドに照準を合わせ、両手のG-MK 330の引き金を引き続ける。

改造されているとは言えアサルトライフルなどに比べて連射性に劣るMKライフルの射撃のペースは非常に遅く感じられたが、タカヤとユキが撃ち出す弾丸の隙間を埋める形で置き弾をするには最適だった。


シドが地面を蹴り、猛烈な弾丸の嵐の中を突貫してくる。


弾幕の隙間を抜け一瞬でライトの前にまで移動し、右手を振るった。

こめかみに衝撃を感じ、ライトの意識はそこで途絶えたのだった。





ライトは意識を取り戻し、目を覚ます。

周りを見渡すと、瓦礫群の外まで運ばれており、そばには自分と同じようにやられたのであろうタカヤとユキが転がっていた。

「・・・・はぁ~・・・」

ライトは溜息を付き、いつもと変わらない結果になった事を残念に思う。

(あそこまでやっても一撃も入れられないなんて・・・・)

殴られた為か、時間操作を限界まで使った為か、頭痛がする頭を押さえながらまだ残っていた回復薬を飲む。

すると、イデアが声をかけてきた。

<ライト、おめでとうございます。ようやくシドに一撃入れることができましたね>

そういわれ、最初は何を言っているのか分からなかった。

「・・・え?」

呆然とするライトに今度はシドが声をかける。

「おう、合計4発だったな。イデアが言うにはライトのが1発、タカヤ1発、ユキが2発らしい」

「・・・・・」

口をポカーンと開け、呆然とするライト。

<素晴らしい作戦でした。自らを囮に、シドの動きを制限できる場所まで誘導。シドの生体電気での加速のタイミングを見極め、回避困難な攻撃を3人同時に行う。あの戦闘中に良く実行できたと思います>

「ああ、誘われてるのは分かってたんだけどな。突破できるとふんだんだけど、あそこまで完璧に発動タイミングを読まれるとは思わなかった」

<シドの制御もまだまだ甘いですからね。これからも訓練は続行しますよ>

<うげぇ~~・・・>

シドとイデアの会話を聞き、ようやくシドに一撃を見舞えたことが実感できてきた。

「・・・・・や・・・やったーーーーーー!!!!!」

ライトは頭痛を無視し、歓喜の声を上げる。

「ほんとに?!ほんとに当てたんだね!?」

そうシドに詰め寄り確認を行う。

「あ・・・ああ・・・」

ライトの圧に若干引き気味になるシド。

「よしよしよーーーーーし!!」

ライトは興奮し大声で喜ぶ。その声に反応したのか、タカヤとユキも目を覚ました。

「ん~・・・」

「・・・・・あ、ライト?」

ライトは二人に気づき、シドに一撃を入れられた事を報告した。

「タカヤ!ユキ!ボク達シドさんに一撃いれられたよ!!!」

「・・・ん?!」

「え?!本当?!」

二人はライトの言葉を聞き、目を輝かせ始める。

「本当だよ!シドさんにも確認した!!」

「よっしゃ~~!!!」

「やった~~~!!」

二人もライトと同じように喜びを爆発させ騒ぎ始めた。

<・・・・なんか複雑だな・・・>

自分に一撃を入れられた事を喜ぶ3人を見てシドは複雑な心境を抱いた。

<仕方ありませんね。今まで散々に蹴散らしてきましたから。特にライトは今までの経験から喜びは大きいでしょう>

<いやま~、目標達成できて嬉しいのはわかるんだけどさ・・・・>

なんとなく、素直に祝福できないシドだった。


シドは時間を見て、現在の時刻を確認する。

まだ日没まで時間はあるが、あの3人を見ていると今日はここまでにした方がいいかと考える。

<今日の訓練はここまででいいか。切りもいいし>

<そうですね、今日は早めに切り上げて、明日からもう一つステップアップを行いましょう>

<お?んじゃーついに遺跡か>

<そうですね。油断さえしなければ問題ないと判断します>

<そうだな。俺も久しぶりに遺物発掘したいし。明日はファーレン遺跡だ>


イデアとシドは明日の予定を決め、未だ興奮している3人に声をかける。

「お~い、今日の訓練はここまでにして今日はもう帰ろう」

シドの声に気づいた3人はシドの方を向く。

「あれ?まだ時間あるよ?」

ライトはそう不思議そうにシドに問うた。

「今日は切りもいいしな。帰ってメシ食いに行こうぜ。最近弁当ばっかりだったからな」

シドはそういい、車に乗り込んでいく。

3人もシドの意見に異論はなく、車に乗り込み都市まで帰っていくのだった。


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