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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
37/214

拠点購入と防護服 DMD 335 RB

シドはキクチに案内され、拠点となる建物の見学を行っていた。

「今の所お前らに合いそうな物件はこれ一つだな。前の所有者が北方に移動するって事で売り出されたんだ」

そうキクチが説明した建物は3階建てで1階は車庫と倉庫。2階がリビングやキッチン・風呂などの生活スペース。3階がプライベートスペースとなっており、5つの個室が備え付けられていた。

ワーカーオフィスの管理が入っていたため綺麗に清掃されており、前の住居人のこだわりなのか生活スペースの機器はグレードの高いもので揃えられていた。

「ここで3000万コールだな。一括払いでライセンス・現金両方に対応できるぞ。どうする?」

建物の見学を終え、キクチがシドに購入条件を提示してくる。

<良いのではないでしょうか?車庫と倉庫も広く生活スペースもかなり確保されています。プライベートスペースもあり、複数での活動になっても対応できると思います>

<そうだな。この物件でいいだろ>

「ここって何時から入れるんだ?」

「入金されたら今すぐにだな。備え付けられてる家具はそのまま使ってもらって構わない。他に足りないものは自分で手配してくれ」

「わかった。じゃ、ライセンスで頼む」

シドはそういい、自分のハンターライセンスをキクチに差し出し、キクチは端末で決済処理を行う。

「よし、これでこの拠点はお前の物だ。都市に払う税金はお前の口座から直接引き落としになるからな。もし、口座の中に金が入ってなかったら、自動的にお前の借金ってことになる。そうならない様気を付けろよ」

そういわれ、シドは都市の税金について知らなかった事を思い出す

「ええ~っと、都市に払う税金ってどれくらいになるんだ?」

「お前な・・・そういうのは拠点を手に入れようとする前に調べとくもんだぞ?・・・この建物なら月に3万5000コールだ」

「それくらいなら問題ないな。まー気を付けるようにするよ」

「そうしてくれ。俺はお前たちには期待してるんだからな」

「そうなのか?まあ、ぼちぼちやっていくさ」


シドは鍵を受け取り、キクチと別れ宿に荷物を取りに行く。

初めてちゃんとした自分の家を持ったことに、シドの胸は大きく膨らんでいた。

<いや~、俺もこれで家持ちか~。感慨深いな>

<そうですね。最初に寝床にしていたバラックから考えたらかなりの進歩と言えます>

<そうだな~。今はまだ余裕があるけどこれからも稼いでいかないとな>

<はい、頑張りましょう>


宿に到着し、滞在の契約を解除する。先払いしていた料金を返却してもらい、食堂で夕食を選ぶ。

今日は自分の家を手に入れた記念日なのだ。奮発して一番高い料理を頼んだ。

西方の食材を使用したフルコースセット。西方は完全に遺跡の脅威から解放されており、色々な文化が発展していた。その最たるものが食であり、農産から牧畜、汚染されていない海域でとれた海産物などが非常に高額で運ばれてくる。それらの食材が使用されたフルコース、この宿でも滅多に注文されないメニューだった。

コースとは言っているが、本格的コースの様に順番に出てくるわけでは無い。大きなプレートに前菜・スープ・魚料理・肉料理・メイン・サラダ・ドリンク・デザートが乗って運ばれてくる。

もちろんコース料理の知識などないシドは思い思いに料理に手を付けていく。肉料理を食べサラダに手を出し魚料理を頬張る。料理人ミールの手によって調理された西方の食材たちはこれ以上ないと思えるほどに美味であり、この目出度い日の締めくくりに相応しい感動をシドに与えてくれた。

<あ~、美味かった。あの宿にはまた食事だけでも食いに行くぞ>

<そうですか。シドの栄養摂取に非常に貢献してくれましたからね。その都度お金を落としに行くのは賛成です>


全ての料理を平らげ、シドは満足した腹をさすりながら購入した拠点へと帰っていく。


それから二日間。シドは必要最低限の生活用品を買い込み、拠点の充実を図っていた。

<よし、これで十分住めるな>

<シド、調理器具や食器などがまだそろっていません。洗浄機や普段着などを揃える必要があります>

<飯は外で買ってくるか店で食えばいいんじゃないか?料理なんか出来ないし。それに普段着って必要か?>

<食事に関してはしばらくそれでもいいでしょう。しかし、普段着は必要になると思います。今までの様にずっと防護服とインナーを着用しているのは問題があります>

<そうかな、俺は気にしないぞ?>

<そうもいきません。第三区画ではあまり目立ちませんでしたが、これからは第二区画で生活するのであれば、それ相応の服を用意するべきです。次に買うであろう防護服の見た目は以前着ていたものと比べてかなり物々しい外見になっています。飲食店から入店拒否される可能性もありますよ?>

<・・・そうなのか?>

<一般人も多く利用するのです。そこに戦争に行くかのような格好をして入っていけば止められても不思議ではありません>

<う~ん。わかった、また買いに行こう。でも、まずは装備と車だぞ。それを買ってからだ>

<承知しました。良さそうな店はこちらで選定しておきます>

<よろしく>


イデアと話しながらリビングに置いてあるソファーに座り、情報端末で文字を読む練習をしているシド。

ここ数ヶ月の勉強で、読み書きに関しては問題なく行えるようになって来ていた。

シドは防壁内での行動がスラムと全く違う事に気づいてから、ちょくちょく第二区画の常識等を情報端末から拾っては勉強していた。

すると、ミスカから通信が入った。

シドは直ぐに通信に出て話をする。ミスカの用事は、防護服が届いたという連絡だった。

シドは直ぐに向かうと返事を返し、準備を整えミスカのトラックを目指していく。



自由市のミスカのトラックの中で、シドは新しい防護服を紹介されていた。

「シド様。こちらが前回紹介されて頂いた金剛シリーズ DMD 335 RBになります」

唐澤重工の営業マン、シブサワは改めてDMD 335 RBについて説明を行い、シドに薦めてくる。

さらに前回では話に出なかったが、メンテナンス用の専用ケースも併せて紹介された。

着用状態で中に入れば自動で脱がせてくれ、そのままコンパクトに収納してくれる上、表面上の破損の修理やエネルギーパックの充電などを自動で行ってくるというものだった。修理資材のナノマテリアルが少なくなってくると自動で唐澤重工に秘匿回線を通じて発注をかける設定にも出来るとの事。

<シド、このケースも併せて購入しましょう。マテリアルの発注に関しては私の方で行うよう設定します>

イデアはもうこの防護服を購入することが決定しているようだった。

<いやでも、これ防護服よりも高そうに見えるぞ?予算的に大丈夫なのか?>

<あまりにも予算から飛び出た物をすすめたりするでしょうか?>

イデアの言う事も最もだったが、まずは試着してみてからだ。

「なるほど、まずは着てみてもいいですか?」

シドはそういい、試着させてもらう。今まで着ていた簡易防護服を脱ぎDMDを着ようとするが、どうしたらいいのかわからない。DMDの見た目は服と言うよりスマートな鎧といった見た目だった。ファスナーの様な物は見受けられずどうやって着るのかわからない。

「この防護服は着用者を認識して自動装着となっております。まずはこちらにお立ち下さい」

そういい、シブサワはシドを防護服の前に立たせ、端末を操作する。すると防護服からレーザーが照射されシドの足元から頭までスキャンした。

スキャンが終了すると。防護服が自動的に開き人が中に入れるようになった。その光景はシドの男心をひどく刺激する。

(うお~~~!!!カッコいい!!!)

シドが感動し目を輝かせ固まっていると

<早く着てください>

イデアが冷たくそう言ってくる。

「シド様の体格に合わせたサイズとなっている為問題なく着用出来ます。装着が完了すると、内部で体にフィットするように調整されるはずです」

シブサワがそう説明し、シドは防護服を着用する。すると防護服が閉まり、シドの体に沿うように調整された。

シドは体を動かし違和感が無いか確認を行う。あくまで防護服のためパワードスーツよりもスリムに作られており、首や腕・腰回りや足の動きを一切阻害しなかった。装着感も軽やかで重さをまるで感じることがなかった。

「着用者の動きを神経伝達から取得し同時に動くようになっております。高速戦闘の際はデータが積みあがっていけばさらに軽やかに動けるようになるでしょう。エネルギーパックの稼働時間は通常使用で260時間となっており、シールドを使用しなければ10日以上連続稼働が可能です。さらにオプションで複数のエネルギーパックを装着すればより継戦時間が伸びますので、遠征などの時も問題なく使用可能です」

シドはトラックから出て、その場で少し走ったり跳んだりエネルギーシールドの発生などの確認を行った。

<問題なさそうだな>

<そうですね。エネルギーシールドの強度も問題ありませんし、体への負荷もシドならば問題ありません。この防護服ならば万が一シドが気絶などの意識が無い状態でも私の方で動かし生還させることも可能になります>

<そんなこと出来るのか・・・>

<防護服の稼働システムを掌握すれば可能です>

流石は旧文明のサポートAIである。

<あとはあのKARASAWA S200だな>

<そうですね、もう一度試射させていただきましょう>

シドは一度トラックに戻り、S200を撃たせてほしいとシブサワに言う。シブサワも断る理由は無くOKを出し、また荒野へ移動することとなった。



シドはミスカ達のトラックの後ろを走ってついていく。なぜ走っているかというと、DMDを着た状態での運動性の確認とイデアによる最適化の調整を兼ねていた。

シドは走りながらイデアと会話をする。

<なんか、段々と体との接触感がなくなって来たな>

<シドの運動データを反映させていますからね。シドの情報器官とリンクを行いましたから同時に動かすことが可能になりました>

<なるほど、じゃーイデアもこのDMDを動かせるようになったってことか?>

<はい、そうなります。私が動かしてみましょうか?>

<おう、やってみてくれ>

シドがそう言うと、イデアがDMDを直接操作してきた。すると防護服が勝手に動き出し、シドの体を動かしているような感覚になる。これならば確かにシドの意識が無くても逃げる事は可能になるだろう。

<なんか変な感じだな・・・>

<そうでしょうね。自分の意志に関係なく体が動いている様な物ですから>


そうこうしているうちに前回試射した場所までたどり着く。

トラックから降りて来たシブサワからKARASAWA S200を受け取り、まずは両手で構えを取る。

最初はシールドを発生させず、素の状態で射撃。防護服のお陰か前回ほどの反動は感じなった。

次は連射機能を使い連射してみる。これも前回とは違い反動を押さえつけブレの発生を抑えることが可能だった。

<ふむ、この防護服なかなか優秀だな>

<そのようですね。流石は唐澤重工といった所でしょうか?>

<次は片手か・・・>

<そうですね。両手では問題なく撃てましたが、まだ片手で連射は難しいと思います>


イデアの言う通り、片手で撃った場合は単発ならなんとか扱えるが連射機能を使うことは出来なかった。


<これはまた訓練が必要ですね>

<そうみたいだな・・・高エネルギーのレーションも買っておくか>

<それがいいでしょう。栄養補給という一点においては通常の食事よりレーションの方が優れていますからね>

シドは左右両方の手でS200の試し打ちを行い。単発ならなんとかシールドを発生させずに撃てることを確認する。

次はシールドで反動を抑え込みながら両手でS200を持ち、連射機能を使ってみた。

一際大きな岩を狙い両手のS200を連射する。シールドで抑え込まれているとは言え、すさまじい反動がシドの両手を襲った。

「!!」

シドは腕に走った痛みを堪えながら連射機能を試す。ほんの数秒で大岩は削り飛ばされ、下部の部分がほんの少し残るのみとなり、シドは射撃をやめる。

<う~ん・・・これって折れたかな?>

<はい。親指の付け根と手首の骨にヒビ、肘や肩の関節にも大きな負荷がかかっています。現在治療中です>

<しばらくは連射機能は実戦で使えないか・・・>

シドは自分の体がこの負荷に耐えられるように強化されるまで訓練を繰り返す必要性を認めた。

見学しているミスカ達に振り返り、DMDとS200を購入する事を伝える。

「この度は、弊社の商品をご購入いただき、誠にありがとうございます」

シブサワはそう言い、腰を折り大きく頭を下げる。

ガンスも物好きなやっちゃな、と言いながら決済端末を差し出してきた。

シドはライセンスで支払いを行う。各種弾薬(訓練用の大量のゴム弾込み)とDMDの保管ケース込みで4800万コール。伝えていた予算は超えていたが、それだけの価値はあると、シドもイデアも納得したのであった。

「あ、ミスカさん。前に売ってもらった回復薬を売ってもらえませんか?1000万分」

「またぎょーさん買うんやな。どこぞに遠征しに行くんか?」

「いえ、ライトと訓練をする予定なんで、それに使うつもりです」

「・・・・訓練に回復薬1000万コール分???」

「あ、全部使うわけじゃないです。探索の時にも必要ですし」

「まあええわ、持ってくるから待っといてや~」

そういい、ミスカはトラックの中に入っていった。

「毎度おおきにな。シド」

ガンスがそうシドに行ってくる

「いえ、こちらこそ。満足のいく買い物が出来ました」

「弊社の商品をそういって頂き、誠にありがとうございます」

シブサワは再度シドに頭を下げてお礼を言ってきた。

「またの機会があればよろしくお願いします。そういえば、シブサワさんはこのままガンスさん達と行動するんですか?」

シドは少し気になったことを聞いてみる。

「はい、よろしくお願いします。いえ、私はこの後ワーカーギルドへ出向き購入されたA60の説明を行いに行く予定です。それが終われば本社から迎えが来ることになっています」

「そうなんですね。頑張ってください」

「はい、ありがとうございます」

この後シブサワはA60を扱いきれないと文句を言うワーカー達に、ランク20台のワーカーが使いこなしていましたよと動画を交えて煽りまくり、全数購入させて本社に戻っていくのである。

「はいよ~おまたせ~」

そういい、ミスカはシドに回復薬を渡す。シドはその料金も支払い、しばらくここで訓練を続けてから一人で帰るとミスカ達に告げた。

ミスカ達はシドの話を聞き、自分たちは先にトラックで帰っていったのであった。

<さて、もうちょっと訓練していくか>

<そうですね。両腕の負傷は治りましたので、とりあえず今日はヒビが入らない程度には体を強化してしまいましょう>

そういい、シドは連射機能での射撃と治療を行い日が沈む寸前まで訓練を行ったのだった。


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シブサワ詐欺師じゃねーか!
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