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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
34/64

唐澤重工 シブサワ

シド視点に戻ります

シドは、唐澤重工の営業マンと対峙していた。

先日ミスカの所に装備を購入しに行った時に、シドに会いたいという人物がいるので、翌日に来てくれと言われていたのだった。

当日、ミスカのトラックに行くと唐澤重工の営業マンを名乗る男がシドの事を待ち構えていた。7:3分けの髪型で眼鏡を掛けたすらっとした男性だった。野暮ったい感じはせず、ビシっとスーツで決めたビジネスマンといった感じである。


「どうも、初めまして。私、唐澤重工の営業マンをやっている。シブサワと申します」

そういいながら、彼は名刺を差し出してくる。

シドはそれを受け取り、挨拶を返す。

「これはどうも。俺はハンターのシドと言います。よろしくお願いします」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。いつも弊社の製品をご愛用頂き誠にありがとうございます」

彼はシドが、唐澤重工の技術の粋を集め完成させ、誰にも使用されなかったKARASAWA A60を使用しているワーカーがいるとの情報が入り、その者ならば、我が社の製品を愛用してくれるのでは?と勇んでやって来たのだった。

「まあ、この銃には大変助けられています・・・」

シドも最初はなんじゃこれは?と思っていたのだが、訓練を経て扱えるようになると非常に便利な為ずっと使い続けてきたのだった。

ここに唐澤重工の者がいると言う事は、何か製品のPRだろう。

どんなキワモノが出てくるのか期待半分恐れ半分の気分だった。

「ありがとうございます。ミスカさんに聞いたところ、装備の更新をお考えとか。なにかお手伝いできることがあれば、なんなりとお申し付けください」

笑顔でそういうシブサワ。何気に圧が強い。

ええっと、とミスカの方を向くシド。ミスカは装備担当のガンスにパスを出し、シドの応援として派遣する。

「んで?シド。なんや新しい装備が欲しいんやって?」

ガンスがそういい。シドの要望を聞いてくる。

「はい、防護服とスナイパーライフルが壊れてしまって・・・」

「この前の拠点防衛戦か?」

「はい、巨大トカゲのブレスで背中を焼かれました」

「そりゃーまた・・・防護服とスナイパーライフルな~・・・」

ガンスは顎を擦り、何か良さげな製品はないかと思案する。そこにシブサワが声をかけてきた。

「お話の最中に失礼します。防護服と長射程の銃をお探しとの事ですが、この様なモノは如何でしょう」

シブサワは、左手の中指で眼鏡を押し上げながらカタログを表示してくる。

「防護服は、弊社 金剛シリーズ DMD 335 RB がお勧めです」

そういってそのページを表示させ、商品説明を行ってくる。

なんでも、表面は特殊合金で覆われており、MKライフルの弾丸すら弾く装甲を持ち、強力なエネルギーシールドを発生させ実弾・エネルギー弾、両方に高い防御力を持つ。着用者の神経伝達情報を読み取り、本人の動きと同時に稼働するようになっている。

身体拡張者やサイボーグ化された者が着用することを前提として設計されており、高速戦闘でも本人の動きを邪魔したりしないようになっていて、データが蓄積されれば着用者の動きに最適化されるように設計されていた。

エネルギーシールドも着用者の意思に合わせて強弱が出来るようになっており、全身を微弱に包むこともできれば、一点に強力なシールドを張る事もできる。その為、エネルギーパックの使用量を調整でき、継戦時間を大幅に伸ばすことが出来る様になっていた。

「弊社の自信作です。ぜひともお考え下さい」

そう説明を締めくくり、自信満々に自社製品を売り込んでくるシブサワだった。

製品映像が表示され、その見た目はパワードスーツか?と思うような外見だった。カラーリングは黒・緑・茶の迷彩柄になっており、硬化機能を持つ繊維製の防護服より強そうだと言う事はわかる。

しかし、モノは唐澤製。不安はかなり付きまとう。

シドはガンスの方を見て、これは説明通りの品なのか?と視線で問う。

ガンスはすこし顔を歪めてシブサワに言った。

「その防護服。確か死人が出たやつじゃなかったか?」

「・・・・・」

とんでもない曰くがついた商品の様だ。

「いえ、あれはプロトタイプの安全確認中に起きた事故です。テスターも命には別条はありませんでした。噂だけが独り歩きしたのですね」

シブサワは怯まず反論する。

一部の高ランクハンターの方々に非常に好評を頂いております。と笑顔で押してくるシブサワさん。

「・・・ガンスさん。その事故ってどんな内容だったんですか?」

死人は出ていないとはいえ、不安は不安だった。

「たしか・・・エネルギーシールドの圧が高すぎて着用者が潰されたって話だったと思う」

ガンスはそう思い出しながら言うとすかさずシブサワが反論する。

「その問題は解消しています。テストの時は一般的な肉体強度しか持たない者が行った為、シールドの圧力に耐えられなかったが故に起こった事故でして。今は身体拡張者と全身サイバネティック者のみに限定して販売しています。シド様なら問題なく着用できるかと」

それは問題解消できたと言わないのでは?とシドは思ったが、突っ込みは入れずに疑問に思ったことを聞いてみる。

「俺がなぜ身体拡張者だと?」

「弊社のKARASAWA A60を使用できる時点でそうとしか考えられないからです」

極めて論理的な回答だった。製造元もその性能と使い辛さには自信があったらしい。

<なあ、イデアはどう思う?>

シドは自分では判断できないと思いイデアに意見を求める。

<なかなか興味深い防護服ですね。しかし、カタログスペックだけでは判断が難しいかと。試用できれば一番よいと考えます>

<なるほど・・・>

ある意味信頼高い唐澤重工製の商品をいきなり購入するのは博打が過ぎる。シドは試用できないかをシブサワに聞いてみた。

「もちろんです。しかし、お取り寄せになるので2・3日時間を頂きますがよろしいですか?」

「あ、その位なら問題ありません」

「承知しました。手配させていただきます。それと長射程の銃との事ですが、どのくらいの射程と性能をご希望ですか?」

「ええっと・・・」

シドはスナイパーライフルを買おうと思っていたが、よくよく考えると、シドの活動に必要かと言われたら疑問が残る。シドの戦闘スタイルは長距離からの精密射撃というよりは中近距離での高速戦闘だからだ。

無理にスナイパーライフルを持つ必要な無い。無いが、今のKARASAWA A60では射程が600m程で、防衛戦の様な集団戦では、他のワーカー達と攻撃のタイミングがかなりズレる事になる。それはよろしくないと思うのと、KARASAWAの威力が高すぎて雑魚狩りにはオーバーキル過ぎる点もある。そのことをシブサワに伝えてみた。

「でしたら、シド様にピッタリの商品がございます」

シブサワは新たにカタログを表示させ、一つの銃を見せてきた。

「これはKARASAWA A60の後継でして、KARASAWA S200。A60をより強力にした銃になります」

シブサワが自身満々に紹介してきたのは今シドが使っている銃の最新バージョンらしい。

シドは却下の言葉を一旦飲み込む。

まずは詳しい話を聞いてからだ。

シブサワの説明を聞いた感じはこうだ。


従来の機能はそのまま使用でき追加の機能と射程距離の改善と行ったとのこと。薬室とバレルの形状を変更し、直進性を向上させ、より弾丸に高圧力を加えられるようになっており高威力・長射程になっていること。有効射程は1.2kmと倍になっており、ライフルと同程度の射程を誇る。連射性能も向上させ一秒7発だったところを24発と大幅に向上させた。

この銃で撃ちだされた通常弾は従来のPN弾やSH弾に迫る威力を持たせることができ、特殊弾頭を使用すればさらに威力が上がるとの事。

さらにはアンチシールド弾頭(AS弾頭)にも対応可能で強固なエネルギーシールドや生体シールドを持つモンスターにも確実にダメージを与えられるというものだった。

専用の拡張マガジンを使用し、対応する弾丸を全て装弾可能とし装弾数も増加している。


シドは思う。

(オーバーキルだって言ってんのになんでさらに高威力の銃すすめてくるの?)

たしかに連射性が上がれば、殲滅力はかなり向上する。この銃ならば前回の拠点防衛戦でももっと楽になったのではないか?と思わなくもない。だが高威力になっているならそれに対する反動はさらに強くなっているだろう。その辺りの事を質問してみる。

「シド様なら使いこなせるようになるかと」

前作のA60を使えるのならこれも使えるよね?と安易な結論を伝えてくるシブサワ。企業の営業がそれでいいのか?

<シド、とりあえず撃たせてもらえばよいのでは?>

イデアがそう提案してきた。

「それ、一度撃つことは出来ますか?」

「はいもちろんです。少々お待ちください」

そういい、シブサワはトラックの奥に引っ込んでいった。

「おいシド。大丈夫なんか?」

ガンスは心配そうにシドに聞いてくる。

「今はまだなんとも・・・とりあえず撃ってみて考えます」

「シド~。紹介した手前こんなこと言うのなんやけど。無理して買わんでええからな・・・」

ミスカも唐澤重工の評判は知っている。知らずに買った者の約6割が返品してくるほどのキワモノ製品を売り出す企業だ。それで商売として成り立つのか?と思わないでもないが、コアなファンが付いており、なかなかの利益を出している為、優秀な企業といえる。だが、シドに合うかどうかは不安しかなかった。

そんな会話をしているとシブサワが商品を持って戻ってくる。

「こちらになります」

そういってシドの前にKARASAWA S200を置く。2丁も。

シドの戦闘スタイルは調査済みの様だった。

実物を見るとA60よりかなりサイズアップしている。重厚感が増し、銃身も長くなっていた。かなりトップヘビーとなっており、大型のマガジンが取り付けられている。これでは常人であれば持つことも苦労するだろう。

おそらく射撃の反動や衝撃を抑え込むため、かなり特殊な金属を使用しているようだった。

シドは一度手に持ち、握り心地を確認する。

<特に問題ないか?>

<その様ですね。初めにKARASAWAを持った時からシドの身体能力は大幅に上昇しています。このくらいの重量なら問題ないかと>

<後は撃った時の感触だな>

「では、ちょっと試射させてもらいますね」

そういい、シドはトラックの外に出ていこうとするが、ミスカが止める。

「シド、荒野まで歩いていくんか?それやったらこのトラックで連れて行ったるで?」

「え?いいんですか?」

「かまへんかまへん。今日は他に客が来る話もないし。歩いて行ったら時間かかるやろ?」

「それじゃー、お願いします」

「はいよ~」

ミスカはそういい、トラックを出発させる。

4人を乗せ、トラックは荒野へと走り出していった。


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