ミリタリービル 探索
イデアがアレコレと調べられている頃。
スラムバレットの面々はミリタリービル遺跡へと足を踏み入れる。
何故か開けっ放しになっている防壁の門を潜ると、そこには他の遺跡とは比べ物にならない程整った街並みが広がっている。
高度な技術によって建てられた建造物。
整備されて、歪み一つない道路。
一定間隔に街路灯と思われる物もあり、遠くには街路樹まで植えられていた。
一見すればここが既に滅んだ文明の遺産とは思えない。
「・・・・奇麗な街だな」
「そうだね。これで遺跡って・・・・・ダゴラ都市のスラムの方が遺跡っぽいよ」
今まで足を踏み入れた遺跡とは全く違う風景に見入るシドとライト。
「見とれるのもいいけど、ここは遺跡よ。気を引き締めた方が良いと思うけど?」
ボーっとしていると後ろからやって来たフィアに注意されてしまう。
「おっとそうだった」
「そうだね。気を引き締めていかないと」
フィアの言葉に気を引き締め直す2人。
「とは言っても、この遺跡は道を歩いているだけではモンスターに襲われることは無いそうですけどね」
と、言ってくるのはラルフ。
このミリタリービルでは、通常の遺跡の様にモンスターが徘徊していることは無く、ただ道路を歩いているだけで攻撃を受けるという事はないという話だった。
夕べ調べた限りでは、モンスターに襲われる条件があるらしく、建物の中に無理やり入ろうとしたり武器を乱射して周囲の物を破壊しようとした場合、警備兵の如くモンスターが現れ攻撃を仕掛けてくるという話である。
それ以外では、戦闘があった場所に散乱する瓦礫やモンスターの破片。もしくはワーカーの所持品であったり体の一部であったりを回収する掃除機の様なモンスター?が出てくるらしく。
その掃除機に関しては近寄ったりしても攻撃を受ける事がないらしい。
ただし、掃除機に攻撃を仕掛けた場合、それは他のモンスターの誘因条件に引っ掛かるらしく、周囲からワラワラと襲い掛かってくるそうだ。
「それでも、遺跡の中で気を抜く理由にはならないわ」
「それはそうですね。私も死にたくありませんから、警戒は怠りませんよ」
ラルフはゴンダバヤシから貸し出されたパワードスーツの中からそう言ってくる。
このパワードスーツは、キクチが地下シェルターへとやって来たときに着用していた物と同じ物だ。
物理・エネルギー攻撃両方に高い装甲を持ち、システムが危険を察知すると自動的にエネルギーシールドを展開できる。
シールド発生装置も物理・エネルギー特化の両方が取り付けられており、それらを稼働させる為の大容量エネルギーパックも予備を含めて3つ搭載されている。
長距離通信が可能な通信機も搭載しており、野外であれば何処かの都市には繋がる通信距離を誇る。
キクチとゴンダバヤシは、スラムバレットに随伴する通信兵が死んでしまわない様、最大限のサポートを行っていた。
「彼も過保護ね。ワーカーオフィスの随行員にこんな高価な装備を貸し出すなんて」
「それはあなたも一緒でしょう?顔合わせの時とは装備が違います」
「・・・・・・」
フィアの装備も変更されている。
顔合わせの時はランク40前後の者が着用するレベルの装備を身に着けていたが、ゴンダバヤシから新しい装備を渡される事になったのだ。
フィアは指示系統が違う為、越権行為になると申し出たのだが、ゴンダバヤシは彼女の上司に話は通してあると言ってきた。
それに、
『その装備だとアイツ等の足手まといにある』
と言われてしまい、若干の不満を覚えながらも受け取ることにしたのだ。
「・・・・・私たちの装備、全て買ったら10億じゃ足りないのよ?コレに見合うだけのモノを見せてもらえるんでしょうね?」
「ええ、それは保証します」
「・・・そうだといいけど」
フィアはため息を付き前を歩くシド達に視線を向ける。
こうして見ている限りでは喜多野マテリアルが注目すべき存在には見えない。
だが、フィアもプロだ。
この装備と、自分に支払われている報酬に値する情報を持ち帰らなければと内心気合をいれる。
4人はしばらく歩いていると、他のワーカーチームを見つけた。
そこは外周部を防壁伝いに歩いて30分ほど歩いた場所である。彼らは建物の入り口に集まり作業を行っている様だ。
「あのワーカー達って・・・・」
「扉を開けようとしているのよ。この遺跡は修復機能が生きているから扉は毎回ああやってシーカーが開けるのが鉄則。もし力づくで破ろうとすればモンスターが襲い掛かってくるって訳ね」
「なるほどな~」
「扉さえ開けられたら中の遺物は取り放題なのかな?」
「そうでもない様ですね。建物内にも防犯機能があるらしく、それに引っ掛かれば襲撃を受ける様ですね。その時の戦闘に手間取れば、辺り中からモンスターが押し寄せてくるという話です」
そして苦労して扉を開けても、他のワーカー達が先に遺物を持ち出しており、補充期間を過ぎていなかった場合は何も手に入らない可能性もある。
シーカーとしての腕と運に左右される遺跡と言えた。
「なるほどね・・・なら、この遺跡はライトとフィアがキーマンになるって訳だ。頼んだぞ2人共!」
「うん、任せてよ!」
「ええ」
作業中のワーカー達を横目にさらに進み、シドの視力でうっすらと中の様子を伺える店舗を見つけた。
「ここ・・・たぶんメカ系の販売店だと思う」
「遺物残ってそう?」
「たぶん。棚にそれらしいものが・・・・・」
シドは他の者たちからはただの壁にしか見えない所に張り付き中を凝視した。
「・・・あなた見える?」
「いいえ、ただの壁にしか見えませんね。フィアさんは中の様子を探れますか?」
「無理ね。ぼんやりとは映るけど、何があるかなんてわからないわ」
ラルフが装備している情報収集機でも同じようなものだ。辛うじてレイアウトが分かる程度にしか映し出されていない。
「・・・・あ・・・・うん、遺物残ってるよ!ここ当たりだね!!」
EX80の設定を弄繰り回していたらしいライトの方では感知できたようで、嬉しそうな声を上げた。
「よし!開けてくれライト!」
「了解!」
シドの指示にライトは扉と思わしき所に張り付く。
EX80からコードを伸ばし、開閉端末に挿入。すぐに開放コードの入手に着手した。
「・・・・IFG-EX80・・・・・唐澤重工製の情報収集機ね・・・・・使いこなせる人がいるなんてね」
フィアとラルフの情報収集機は喜多野マテリアルのミッドエンド品で、状況に合わせてAIが最適な設定を行い情報を収集してくれる万人受けの機器である。それでも巷に溢れる情報収集機と比べれれば性能は群を抜いており、前線で活躍するワーカー達にも使用されている。
だが、唐澤重工の情報収集機は、使いこなせれば喜多野マテリアル性の機器以上の性能を発揮する。
使いこなせれば、の話ではあるが。
「貴女も使用してみては?あの企業に声を掛ければ喜んで売ってもらえますよ?」
「死人が出るような機器を使いたいと思う?」
「私は遠慮します」
6大企業に所属する諜報員でも、脳を焼かれる可能性がある機器は恐ろしいらしい。
「・・・・・よし開いた!」
ライトがそう声を上げると、ピピッ!と機械音が鳴り扉が開き、シドとライトが中を覗き込む。
「「・・・・・・・・」」
入念に内部を確認し、シドはイデアが拡張させた視界で、ライトは情報収集機で内部を隈なく精査していく。
「・・・・・よし、特にトラップとかは無さそうだな。入るぞ」
シドはS200ではなく刀を一本抜き、警戒しながら内部へと入ってく。
その後ろからライトも続き、フィアとラルフも扉の中へと入っていった。
部屋の中にはカウンターがあり、その下はショーケースになっている。
壁際や店の中央にはラックが置かれていて、商品であろう遺物が陳列されている。
「いっぱいあるね」
「ああ、取り合えず根こそぎ持ってこうか」
シドとライトは次々と遺物を手に取り、ツールボックの中に放り込んでいく。
フィアとラルフも一応用意した小型のバックパックに遺物を入れて行く。そして、ラルフが何気なくカウンターにあるショーケースに目を向けるとフィアに声をかけた。
「フィア。ちょっとコレを・・・・」
「何?・・・・・ああ、旧文明のライフカードね」
ライフカードとは、旧文明で使用されていたツールの一つで、生体情報を登録すれば身分証として機能し、当時のデジタル通貨の決済に使用するサイフ代わりにもなる。
通信機としても使用されていたとされ、一時は旧文明の生きた遺跡と交信できるのでは?と期待された。
だが、起動させるにはまず生体情報を登録し、身分証としての機能を持たせなければその他の機能が一切ONにならない様になっているらしい。
様々な方法でこのライフカードを起動させる実験や研究が行われたが、今までその機能を使用できた例は一例もない。
だが、使用されている技術は非常に高度なもので、6大企業が大金を積んで買ってくれる遺物である。
1枚持って帰るだけで数十億の値が付いたという話もあった。
「凄いじゃないですか!!これを持って帰れば億万長者ですよ!!」
一応庶民であるラルフは1枚数十億と言われるライフカードが目の前にあり、興奮が止まらない。
「そんな簡単な訳ないでしょ。こういうケースは開けるのは非常に難しいのよ。力づくで開けようにもものすごく頑丈で、シドが持ってるS200のSH弾で連射でもしないと破壊出来ないわ」
「・・・・・・・」
「それに、破壊できてもその衝撃で中にあるこのライフカードは粉々になるってわけ。ついでに警報装置が作動してモンスターが押し寄せてくるのは目に見えてるわ・・・・・・挑戦する?」
「・・・・いえ、頭が冷えました」
「懸命ね」
ラルフは現実が甘くないという事を思い出す。
ラルフが億万長者諦めたとき、遺物収集に精を出していたシドとライトが2人の所へやってくる。
「どうしたんだ?」「何を見てるんです?」
興味深げにラルフ達の後ろからショーケースの中身を覗き込むシドとライト。
「ああ、ライフカードが展示されてるのよ」
「「ライフカード?」」
見たことが無い2人の頭に?マークが浮かぶ。
「ええ、このカード。旧文明の身分証だったりサイフだったりするらしいのよね。まあ、解析自体も完全に終わってないらしいから、ハッキリとは分からないのだけれど」
「へ~」
「持ちだせれば1枚数十億で買い取ってもらえるわよ?・・・挑戦してみる?」
フィアが挑発的な笑みを浮かべてライトへと視線を投げる。
その視線を受け、ライトはもう一度ライフカードへと目を向け考えるしぐさをする。
「やってみろよライト」
どうしようか悩んでいたライトにシドが挑戦を促す。
「でもさ、セキュリティ高そうだよ?下手に弄ったらアラームなったりしない?」
「そうなったらそうなった時だろ。ここ外周部だし、モンスターが来ても倒すかさっさと逃げれば何とかなるって」
シドにそう言われ、しばらく悩んでいたライトだったが、
「うん、やってみよう」
そう言い、カウンターの奥へと回っていく。
ショーケースに繋がっている端末を見つけEX80からコードを伸ばし接続。開錠を試みる。
眉間にしわを寄せ、5分ほどシステムと格闘していたライトだったが、急に端末からコードを抜き取り息を吐いた。
「・・・・ふ~~・・・・ああー!無理!これは1人じゃ無理だよ!!」
そう言いながら額に浮かんだ汗を拭いとる。
「お前でも無理なのか?」
シーカーとしての腕に絶対の信頼を寄せていたライトが白旗を上げたことに驚くシド。
「うん・コレ、処理の速さとか手順がどうこうじゃなくて、単純に1人じゃ解除できない様になってる」
「というと?」
「誰かがセキュリティシステムを黙らせてる間に、他の誰かが解除コードを入力する必要があるんだよ。時間制限もあってどうしても手が足りない」
その話を聞いたシドは振り返りこういった。
「なるほどね。フィア、出番だ!」




