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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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遺跡探索へ出発

唐澤重工から帰ってきて2日間。

スラムバレットの面々は遺跡探索の準備を行っていた。


ワーカーオフィスで探索を行う遺跡の情報を仕入れ、弾薬や食料、回復薬に余念がないかしっかり確認していく。


「みんな準備は終わったか?」

チームハウスのガレージに集まったメンバーに声をかけるシド。

「大丈夫」

「問題なしです」

「私も問題ないわね」


各々が武器を持ち、防護服に身を包んでT6の前に立っている。

「よし!それじゃー乗り込め!遺跡に潜るぞ!!」

こうして久しぶりにワーカーらしい活動に胸を高鳴らせたシドは、ガレージから飛び出していくのであった。




今回探索に選んだ遺跡はミリタリービル。

そう呼ばれている遺跡である。


バハラタ都市から南東へ1日半ほど移動した位置にあり、強固な壁に囲まれた遺跡で、バハラタ都市で活動しているワーカー達の間ではもっとも有名な遺跡である。

このミリタリービルは、普通の遺跡ではなく、防壁の中には旧文明の街並みが広がっており、その中心には高層かつ巨大なビルが突き出ていた。


この遺跡が有名である一番の理由が、今も稼働している点と言えよう。


遺物を持ち去っても1カ月ほどで補充され、戦闘行為で破損した建物も元通りに復元される。

無尽蔵に遺物が湧いてくる遺跡としてワーカー達の間では有名な遺跡であった。


そして、そのセキュリティの高さも有名である。

防壁付近ではそれほど危険度は高くないが、中心のビルに近づけば近づくほど強力なモンスターが出現し、その全てが機械系モンスターという特徴がある。

中心のビルに侵入するには、高度な迷彩装備やジャミング装置を駆使しなければならず、中に入ってからもモンスターや防衛設備を常に警戒しなければならない。

その警備の厚さは、6大企業の軍事施設に匹敵するのではないかと噂され、それ故にミリタリービルと呼ばれるようになったという事らしい。


今までスラムバレットが挑んできた遺跡の中では、最高難易度と言っても過言ではない。


なぜこの様な高難易度の遺跡を選んだのかというと、このミリタリービル、防壁外にはモンスターが出てこないのだ。万が一大量のモンスター追いかけられ、自分達だけでは対処できなくなったとしても防壁の外に出てしまえばモンスターは追って来ないという特性が有った。

さらには、周辺の荒野に生息しているモンスター達もミリタリービルの周辺には寄って来ず、一種の安全地帯の様になっている。

その為侵入口になっている場所には、ワーカーオフィスが運営している駐車場兼野営場も併設され、ワーカーを相手に商売をしに来る行商人達も滞在している。


難易度、周囲の環境を考慮し、スラムバレットが東方に足を踏み入れて初めての遺跡に丁度良いのではないかという事だ。



一日という距離を踏破し、ワーカーオフィスが運営している駐車スペースにT6を止めるシドとライト。

久しぶりの遺跡アタックにテンションが上がっているシドは、T6の上に上り防壁越しに見える巨大なビルを見上げた。


「おおーーーー・・・・・でっかいな~~」


末広型の巨大ビル。

上に行くほど細くなっているのだが、かなりの高さが有り、今は雲に隠れて一番上が見えない。

「すごいね~。雲が晴れたら一番上も見えるのかな?」

シドの隣に、同じように上ってきたライトが立ちビルを見上げた。

「いえ、あのビルの周りには必ず雲がかかっていて頂上は見えないそうです。一説では、あれは雲では無く、あのビルが発生させているジャミングスモッグなのではないかと言われているようですね」

下から端末を手にしたラルフがそう解説を行った。


「へ~・・・いいね!いいね!!一番上まで行ってみたいな!!どうなってんだろうな!!」

全容の分からない遺跡。その姿にシドの好奇心は大いに刺激された。

「未だあのビルの上層まで登ったワーカーはいない様ですね。というより、中層にたどり着いた者もいないとの事です」

「それほど高難易度って事ですね」

「はい、今回は外周部から徐々に探索していきましょう・・・・・いいですね?外周部から徐々に。ですよ?」

「わかってるって。いきなり中心に突っ込んで死にたくないからな」

「・・・・・わかっているならいいです」

シドの性格上、真っ先にビルを目指しそうなので釘をさすラルフ。

しかし、シドもワーカーになってから1年半以上経つのだ。安全マージンを取ることの大切さは理解している。


シドの了解が取れたことでほっとしたラルフもミリタリービルに目を向ける。

彼もワーカーオフィスに所属し、旧文明に関わる仕事をしてきたのだ。映像だけで見るのではなく、生で見る旧文明の遺産を目にし、その威容に感ずるものがあった。

(私が高難易度の遺跡に挑戦・・・・ですか。こんなことになるとは思ってもいませんでしたね・・・・)


3か月前なら想像もしていなかった状況につい苦笑を漏らしてしまう。


「時間も中途半端だし、アタックは明日にして今日はここで野営だな」

「そうだね。とりあえず晩御飯の準備かな」

現在の時間は16時前。今から突入するには遅すぎる。

そう考えた2人はこの場所で夜を超す算段を始める。第一に考えるべきは食事だ。

「向こうから旨そうな匂いがするんだよな~」

「行商人の人が屋台でも出してるのかな?」

2人が見つめる先は行商人達のトレーラーが集まっている区画。ワーカー向けに食料や調理された食事が提供されているのだろう。

シドの敏感な嗅覚がその匂いを感じ取ったらしい。


「よし、買いに行くぞ」

「了解~」

車から飛び降りた2人はスタコラと行商人達の所へと走っていく。


その場に残されたのはラルフとフィアの2人だけであった。


「・・・・・あんな所は年相応なのね」

「そうですね。食事に対する執着は強いですよ」


嬉しそうに走っていく2人を見送った2人の間に、少し沈黙が流れる。


「・・・・・・フィア。言っておきたいことがあります」

「・・・・・何?」

「貴女が喜多野マテリアルから受けた指令は大体想像がつきます。その事について私からは何も言いませんし、彼らに伝える事もしません」

「・・・・・」

「ですが、彼らの妨害だけはしない様にお願いします」

「・・・・ええ、それぐらいの約束はするわ」


ラルフはフィアが喜多野マテリアルから送り込まれた諜報員だという事は、ゴンダバヤシから聞かされている。

あの2人の特異性を考えれば、喜多野マテリアルのこの行動も理解できる。

だが、ラルフはスラムバレットの随行員と言う立場から、彼らの活動が妨げられることは許容できない。その為、フィアにはその事を伝えておこうと思ったのだ。

「それは良かった・・・・・・それと・・・」


それと、もう1つ忠告を。


「それと?」

「彼らと行動する場合、細心の注意を払う事を忠告します」

「・・・それは当然ね。遺跡の中で気を抜くなんて間抜けなことはしないわ」

「・・・・・そうですね。注意するのは私の方かもしれませんね」

ラルフは遺跡初心者だ。

経験者であるフィアに忠告など烏滸がましいのかもしれない。

「そうね。貴方の尻ぬぐいまではしないわよ?」

「ははは。ええ、気を付けます」


遺跡探索の経験はフィアの方が上だ。だが、スラムバレットとの付き合いはラルフの方が長い。

この少しの差が、どう影響を及ぼすのか。

それをフィアはまだ気づいていいない。


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