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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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ナギの暴走

シブサワの案内で応接室に通された4人と1体。

4人は高品質な独立ソファーに腰かけ、イデアはシドの横に浮いている。

そして、彼らの前にはシブサワとナギ。そして、開発部門のチームリーダー達が勢ぞろいしていた。


「始めまして。私は兵器開発部門のチームリーダーをしているマクワと言う者です。KARASAWA S200をご愛用頂いているとの事で、誠にありがとうございます」

恐らくS200を作った人物なのだろう。ニコニコと笑いかけてくる50台前後の男。

髪は短く刈り揃え、顔立ちは穏やかで柔らかい。体の線は細いが、瘦せている訳では無く、しっかりと筋肉に覆われていることが分かる。

「次は私だな。私は防具開発チームのマクスウェルと言う。DMDシリーズの開発やその他の防御系ツールの開発をしている者だ。君が着用していたSV5・・・・・あれについても後で話を聞かせて欲しい」

マクスウェルと名乗った男は、オールバックの髪型に眼鏡といった研究者と言われると一番しっくりくる見た目をしていた。


「私は情報機器の開発に携わっているレミリアよ。主に情報収集機の開発に力を入れているわ。ライト君、貴方が使用してくれているお陰で、私の最高傑作であるEX80が正当に評価され始めたの。感謝しているわ」

そういってライトに笑顔を向けている女性。癖のある赤毛を背に届く長さまで伸ばしており、左目は義眼であろうか。サイバーパーツが取り付けられ、薄く緑色に発光している。


「最後は私ですね。調整チームのワカバヤシと申します。弊社の製品をご愛用頂き、誠にありがとうございます」

なにやら疲れた顔をしているワカバヤシと言う男。七三分けの黒髪だが、その額はかなり荒野に浸食されている様だ。以前のキクチ程とは言わないが、顔色も良くない。


「ナギを含めた彼らが弊社の主要チームリーダーです。御2人の活躍に感謝したいと申しておりまして」

とシブサワ。

すると、未知のオートマタの情報をいち早く手に入れようと考えていたナギは、後からぞろぞろと現れた他のチームリーダーに不服そうな表情を浮かべながらイデアについて質問してくる。

「さて、早速ですが、そのオートマタについて質問よろしいでしょうかね?その機体は現在販売されている機体のどれとも合致しない特徴を持っている様ですが、オーダーメイドでしょうか?」

イデアを見つめながらそう聞いてくるナギ。

彼のミナギ都市での奇行を思い出せば、オートマタに並々ならぬ興味を抱いているのは間違いない。

この質問にシドとライトはどこまで答えて良いのかわからずラルフに視線を飛ばす。

「・・・んん・・・・このオートマタの入手情報に関しては詳しい情報を公開出来ません。喜多野マテリアルからもそこは厳重に注意を受けています」

シド達の代わりにラルフが答える。

「喜多野マテリアルから・・・ですか~・・・・」

ナギは顔を顰めて溜息を吐く。流石の変態も喜多野マテリアルの秘密事項に突っ込むようなことは出来ない様だ。

「ええ、とある遺跡でシドが発見しオーナー登録を行ったとだけ・・・・」

「なるほど・・・・ならオートマタの主人はシド君と言う事でよろしいでしょうか?」

その質問にラルフがシドとイデアに視線を返す。

「はい、私のマスターはシドと登録されています」

ラルフの視線を受けると、イデアがナギの質問に答えた。

「ほお!オートマタが返答を・・・・・」

オートマタマニアのナギは、イデアから返答を貰えたことに全身を震わせる。

今まで彼が見てきた旧文明のオートマタは、経年劣化でボロボロになった機体や一部分のパーツがほとんどで、ミナギ都市周辺の遺跡で手に入れた(シドが真っ二つにしたヤツ)オートマタがもっとも状態の良い機体である。

当然動く訳も無く、音声会話が可能な機体など皆無であった。

「では!けんきゅ・・・・機体のメンテナンス等いかがでしょう!?」

「メンテナンス?」

「はい!遺跡から発掘されたと言う事は長期間モスボール処置を施されていたとはいえ劣化が起こっていても可笑しくはありません我が社の技術であるならば新品に限りなく近くメンテナンスを行う事が可能であると保証しますエネルギージェネレーター等の劣化が致命的な損傷に繋がるパーツの交換新調も可能になりますしここは一度精密な検査を!!!」


ナギはここぞとばかりにメンテナンスを進めてくる。余程興奮しているのか、息継ぎもせずに一気に言い切った。

「ふむ・・・・・」

目の部分を点滅させ、考えるような雰囲気を出すイデア。

<イデア、お前メンテナンスなんているのか?>

<このボディーが組み上げられたのは、報酬として受け渡された時です。まだ3ヶ月も経っていない為、本格的なメンテナンスの必要性は皆無ですし、内臓ナノマシンによる全自動メンテナンスですから外傷による故障以外でメンテナンスは必要としません>

<なら断れば?それ、旧文明の技術・・・それも武蔵野皇国製でしょ?いくら唐澤重工でもメンテナンスなんて出来るとは思えないけど・・・>

<理論的に考えれば不可能でしょう。武蔵野皇国と現代文明の技術は開きが大きすぎます。ですが、唐澤重工の発想力があれば・・・・・>


皆は忘れているかもしれないが、イデアの中で唐澤重工の評価は非常に高い。

自分達の技術力で旧文明の銃に匹敵するKARASAWA A60を開発し、さらに機能を向上させている事から始まり、他の企業にはないチャレンジ精神と確かな技術力を持っていると評価していた。

故に、ナギの言うメンテナンスについて若干前向きである。


そう3人で相談をしている時、ナギの言い出したことにシブサワが待ったを掛ける。

「ナギさん、待ってください。このオートマタは旧文明の遺物です。しかも現代人に追従する唯一と言っていい存在ですよ。もし再起動できなかった場合、もしくは著しく性能が損なわれてしまった場合に我が社にその損害を補填する方法が有りません」

シブサワが言う事も当然だ。

現代人類の敵である旧文明のオートマタ。それが現代人に着き従っていること自体が有り得ない事である。

シブサワが軽く調べただけでもイデアの機体性能が現代製のオートマタの遥か上を行く事は直ぐに分かった。高出力のレーザー兵器を内蔵し、複数の強化外装を瞬く間に破壊したという情報もある。

普通なら過剰な表現がされていると判断する所なのだが、今まで非常識を体現してきたシドとライトに付随しているオートマタなのだ。これでもまだ控え目な評価である可能性もある。

その様な貴重な存在を、一研究者の思い付きで弄らせるなどあり得ない話であった。


さらにシブサワに援護射撃を行ってきたのは、調整チームのワカバヤシである。

「そうですよナギ主任。主要動力も全く不明。AIの構成もわからない。もとい、機体を構成している材質や機体構成も全く分からないモノのメンテナンスなど不可能でしょう」

「私ならば可能だ!私はこの時を夢見て数多の企業を渡り歩き、幾つもの都市を追放されてまでオートマタの残骸を研究してきた!この大陸に私以上に旧文明オートマタに詳しい者など存在しない!!」

ナギはイデアを見つめたまま叫ぶ。

稼働しているオートマタに触れる。それは彼にとって千載一遇のチャンスであった。

「・・・・・・ふむ、では、条件を付けましょう」

ナギを見返しながらイデアが発言する。その言葉を聞き、ナギの体が小さく跳ねた。

「・・・・それは?」

勤めて冷静に聞き返すナギ。だが、テーブルの上で強く握り込まれた拳が震えだす。

「ボディーの性能を落とさないことは当然として、継戦能力の向上を要求します。私の主兵装はエネルギー兵器ですが、今のエネルギー容量では不足気味ですので。そして、万が一再起動が不可能になった場合、スラムバレットへの装備や弾薬の提供、今後行われるサービスは全て無料で行う事を要求します」

「わかりました」

イデアの要求に間髪入れず返答するナギ。

これに慌てたのがシブサワとワカバヤシである。

「ちょっ!!そんな簡単に!!!」「この様な重大案件!主任権限で決められる訳が無いでしょう!!これは重役会議に提出すべき案件です!!!」

「大丈夫だ!任せたまえ!!」

そう大声を上げ、「準備に取り掛かる」と言うとナギは応接室を出て行ってしまう。

「ちょっと!!待ちなさい!!!ナギ主任!!」

その後を大急ぎで追ってワカバヤシも部屋から出て行ってしまった。


「「「「・・・・・・・・」」」」

その様子を呆気にとられて見送る4人。

「・・・・・イデア。ホントにいいのか?気に入ってるんだろ?そのボディー」

「はい、最悪再起不能になったとしてもスラムバレットに損にはなりません」

<その場合、セントラルに修理してもらえばいいだけですから>

<・・・・・それもそうか>

その場合、セントラルに何を要求されるかは定かではない。だが、最悪の場合でもイデアのボディーは治す方法があると言う事は確実だった。

「まあ、イデアがそういうなら俺は何も言わないけどな」

「・・・本当にいいの?そのオートマタ・・・・・ワンオフ機といっても過言じゃないわよ?」

イデアの出所を知らないフィアは驚いた表情でシドに確認を取る。

「まあ・・・・・・大丈夫だろ。この企業にはある意味信用があるしな・・・・・」

「ははは!そう言って頂けると、開発者としては本望です」

そう言って笑ったのは兵器開発チームのマクワであった。

「同じ研究開発に携わる者として、ナギさんの気持ちは痛い程良く分かる。人としてどうかと思う部分はありますが、技術と知識は本物ですので完璧にやり遂げるでしょう」

「そうね、私も協力するわ。旧文明のセンサーに興味もあるし」

そう言ってイデアに視線を向けるレミリア。


唐澤重工のチームリーダー達は、他部署の仕事に興味が薄い。

万が一、大ポカをやらかしたとしても、やった本人と経営陣が対処すればいい程度の認識であった。自分達の研究が最優先。

こんな連中を纏めている経営陣はもしかしたら非常に優秀なのかもしれない。


イデアを見つめるレミリアにライトが声を掛ける。

「えっと、レミリアさんがEX80を作ったんですよね?」

「ええ、そうよ」

「これなんですけど・・・・」

そういいながらライトが自分のツールボックスから布の様な物を取り出す。

「これ、ミナギ都市の近くにある地下遺跡で出てきた生物の皮なんですけど、EX80の機能では感知できないんです。研究用にと思って取っておいたんですけど・・・・」

ライトはあの地下遺跡で遭遇した野生生物の皮を取り出しレミリアに渡した。

ライトはEX80に全幅の信頼を置いており、あの生物の存在を検知できずに不意打ちを食らいそうになった事を覚えていたのだ。

あの後、地下シェルターで気配察知や体術の訓練はみっちり行ったが、ライトはこの手の技術を苦手としており情報収集機のバージョンアップが可能であればそれに越したことは無いと考えていた。


「・・・・・」

レミリアはライトから生物の皮を受け取ると、真剣な表情で検分を始める。

左目の義眼の光彩が目まぐるしく変化し、皮の特徴を調べようとしているらしい。

「・・・・・確かに、既存の探知方法には引っかからないわね・・・・・これがモンスターでは無く野生生物の皮なの?」

「はい、新種だと言ってました」

「ワーカーオフィスでもサンプルは入手しています。登録されているモンスター、その他の野生生物に同じ特徴を持つ存在は確認されておらず、新たに発見された新種として登録されています」

ライトの言葉にラルフが追加で情報を提供する。

「・・・・・そう・・・・この眼だけじゃわからないわね・・・・・・詳しく調べて・・・・・・アレも試してみないと・・・・・・」

皮に目を落としながらブツブツと呟くレミリアは、視線を上げると

「私はコレを詳しく調べるわ。有用な情報をありがとう、ライト君」

そう言うと皮を持ってスタスタと部屋を出て行ってしまう。


彼女が出て行くと、

「さて・・・」

「次は私たちの番だね」

兵器開発チームのマクワと、防具開発チームのマクスウェルが笑顔で話しかけてくる。

「私は新しい銃を開発した所なんだ」

「なんでもSV5が短期間で破損したと聞いた。その時の詳しい話を聞きたい」

「ああっと・・・ええっと・・・・」

2人に話しかけられ混乱するシド。

「安心してくれ」

「時間はたっぷりあるのだから」

そう交互に行ってくる2人に、みっちり兵器のプレゼンと防護服が壊れた経緯の聞き取り調査を受けるシドであった。


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マッドサイエンティストばかり抱える企業とか間接部門には絶対所属したくないな…ブラック労働なんてレベルじゃなさそう
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