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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
172/213

久しぶりの探索 2

気配からして下から岩壁を登って来たであろうモンスター。

体形は細長く頭には大きな複眼がついておりその下には口がある。皮膚は茶色く体毛などは一切生えていない。手足も細長いが筋肉は発達しており皮膚を押し上げ、その形をハッキリと写しだしていた。

背筋は異常に発達しており、その盛り上がった背中には2対の羽根が生えている。

例えるなら哺乳類をトンボに改造した様な見た目をしていた。


2人は銃を抜き油断なく相手の出方を伺う。

部屋に入って来たモンスターは頻りに首を振り辺りを見回しているようだが、大きな複眼は一瞬たりとも2人から外れていない。

恐らくこのモンスターには腹の下くらいしか死角は存在しないだろう。

その死角もトカゲの様に腹ばいになっている限り利用する事は出来そうにない。幸いな事に生物系でそれほど頑丈では無さそうだった。

シドとライトの一斉射撃に耐えられるだけの耐久力を持っている様には見えない。

<ライト、このモンスターの種類は?>

<・・・・・・わからない>

シドはモンスターの種類をライトに聞くが、ライトは分からないと答える。ライトはワーカーオフィの情報サイトと照らし合わせ、発見・討伐されたモンスターデータから種類を特定してきたが、目の前のモンスターはどのデータを見ても載っていなかった。

<わからない?>

<ワーカーオフィスのデータベースに載ってない!>

<未発見のモンスターということですね。注意してください>


部屋の確認でも終わったのか、キョロキョロとしていたモンスターは首の動きを止め口を開く。

口内には灰色の一枚歯が上下に付いており、それを勢いよく2度3度と嚙合わせる。そして噛み締めたまま左右に擦り合わせ始め、辺りにはギャリギャリと不快な音が鳴り始める。

シドは様子見を止め引き金を引こうと指に力を籠めるが、弾丸が発射されるより先にモンスターの口から炎弾が飛び出てくる。

その炎弾は人の頭程のサイズがあり、青白い色をしている事からかなりの高温であることが察せられる。

しかし

(遅いな)

シドとライトからすれば弾速は非常に遅く、避ける事は容易い。炎弾を回避し、モンスターの頭部へ狙いを付け発砲する。

モンスターは羽根を高速で動かし、回避しようとするも避けきることが出来ず右側の前足?と羽根を吹き飛ばされた。

「キイイイィィィィーーーーアアアァァァーーーー!!」

痛みを感じる機能はある様で、地面に落ちた後にジタバタと藻掻き始める。

そこにライトから放たれた弾丸が複数頭部に命中し、首が千切れ飛んだ。


首は部屋が途切れているギリギリの所まで転がり、頭を失った体はピクピクと痙攣している。

シドとライトはモンスターにもう戦闘能力は無いと判断し銃を降ろした。


「強くはなかったね」

「そうだな。一発目を外されたのは驚いたけど」

「生物系にしては反射速度が速かったね。普通は食らいながら体を修復して襲い掛かって来るか数で押し込もうとして来るのに・・・・」

「そうだな。それにさ、火を吐くやつって今までいたか?」

「毒はあるけどね。体内で弾薬まで生成するんだから炎くらい吐けるヤツが居ても不思議じゃないよ」


2人は痙攣すら止まり、完全に絶命したモンスターの近くまで寄って行く。

「未発見種なら高く売れるんじゃないか?」

「どうだろう?一応持って帰る?ここは流石にスカベンジャー達も回収に来れないと思うけど」

「う~ん・・・下も探索して、余裕があったら持って帰るってのはどうだ?」

「なるほど、そうしようか」


2人は下の方に見える連絡通路と思われる穴まで降りて行き、中の探索を続けた。

やはりこちらもガランとしており、突風の影響で外へ吐き出されてしまったのだろうか?と考えながら奥へと進んで行く。一番奥まで進んで行くとロックされた扉があり、ライトが解除を試みる。

「・・・・うん、空いたよ」

ライトがそう言うと、プシュッと言う音と共に扉が上方向に向かって開く。

扉の奥にはガラスの様な材質で区切られた区画が並んでおり、区画の中には規則正しく並んでいたであろう棚の姿も見受けられる。

しかし、仕切りとなっている壁には罅が入り、中には完全に砕けてしまっている箇所もある。

中に並んでいたであろう棚達は軒並み倒れ、床には様々な遺物が転がっている有様であった。しかし、あまり遺物の発見がなかった遺跡で完全に手付かずの場所を見つけた事にシドのテンションは上がる。

「おお!ここなら遺物も見つかるんじゃないか?!てか、めっちゃ転がってる」

「そうだね、モンスターの気配もないし手分けして良さげな物を持って帰ろう」


2人はそこで別れ、それぞれ価値のありそうな遺物の収集を行っていく事にした。

ライトは一つ一つサーチを行い、大まかな価値を調べながら拾い、シドは何となく価値の高そうなメカ系の遺物をツールボックスの中へ放り込んで行く。

<いや~取り放題だな>

<うん、結構な収入になるよ。持って帰るのは厳選しないとね>

シドは久しぶりにワーカーらしい活動に、ライトは期待していなかった大成果に機嫌よく遺物を拾っていく。


地割れの影響か、倒れた棚に押しつぶされ完全に壊れてしまっている遺物や、経年劣化で朽ち果てている物も多く普通のワーカーなら価値がある遺物を見つけるのも一苦労するのだが、シドは感覚器官を、ライトは情報収集機を使い効率的に遺物を集めて回っていた。


暫く遺物収集に励んでいると、シドの耳に物音が届く。

遺物を拾おうとしていた手を止め耳を澄ませると、奥の方からガラスを踏みつけて何者かがこちらに向かって来る音が聞こえた。

ライトの気配がある方向とは真逆の為、自分達以外の存在であることは間違いない。

シドはS200を抜きライトに声を掛ける。

<ライト、俺から見て10時の方向。何かいる。わかるか?>

<・・・・・・・ごめん、この遺跡の特性か索敵の距離が短い・・・・ボクの方じゃわからないな>

<わかった。一旦合流するぞ>

<了解>

遺物収集を中断。シドはライトと合流し、徐々に近づいて来る謎の存在を警戒した。

<ここでの出現モンスターってまだハッキリわかってなかったんだよな?>

<うん、遺跡に入ること自体が難しいから殆ど調査されてないんだ。上にいたモンスターと同じならやりやすいんだけどね・・・>

まだ相手には気付かれていない様で、音はシド達とは違う方向に向かって行く。

<よし、コッチから仕掛けるぞ>

<わかった>

2人は足元にシールドを張り、足音を立てない様にモンスターの気配がする方向へと疾走する。

すると、すぐそこの天井に新たな気配が現れ隣を走るライトに向かって攻撃してきた。

シドはライトを蹴飛ばし攻撃の直撃を防ぐ。

敵に目を向けると、天井の剥がれた場所に入り込み擬態していたらしい。真下を通りそうになっていたライトに向かって細長い腕についた鋭い鉤爪を振り下ろしたのだ。

(クソ!!わからなかった!!)

シドは銃口をモンスターに向け撃ち放つ。幸いモンスターの耐久力は高くなく、通常弾でも簡単に吹き飛ばす事が出来た。

しかし、シドの攻撃音に刺激されたモンスター達が一斉に擬態を解除し金切声を上げ始める。


ライト視点


ライトはシドの隣を並走し、未知のモンスターを捕捉しようとする。

(おかしい・・・何も映らない・・・)

幾ら旧文明の建材に阻まれようとここまで索敵範囲が狭まると言う事はなかった。

(・・・・もしかして・・・探知できない?!)

最悪な展開を予想した瞬間。

隣を走っていたシドに蹴り飛ばされる。

「ぐ!」

なにを!?と思った瞬間。一瞬前にライトがいた場所に何かが通過する音が聞こえた。シドの助けがなければ無防備なまま攻撃が直撃していただろう。

音と風の流れから恐らく天井からの攻撃のはずだ。

だが、情報収集機から送られて来る情報には何も映っていない。モンスターは直ぐにシドが銃撃したようだが、その攻撃が効いているのかいないのかすら判別できなかった。

この建物は地下深くに埋まっており、光源などは何もない。完全な暗闇の中では、ライトは情報収集機が映し出すデータでしか判別できなかった。

ライトの身体拡張はシドの様に超人的な視力までは与えてくれてはいない。

最悪な予想が確定したと同時に、シドの攻撃音に反応したモンスター達が雄たけびを上げ始めライトは一瞬パニックに陥る。

「ライト!照らせ!!」

シドの指示に我に返り、上に羽織っていたコートに取り付けられた極小ライトを点灯させ辺りを照らす。

全周に向かって放たれた光は周囲を照らし、ライトは目を顰める。

今まで暗闇の中活動していた為、突然の光に目に痛みが走る。しかし、そんな事に気を取られている場合ではなかった。

拡張された肉体は瞬時に瞳孔を絞り、いつもと同じ視界をライトに齎す。


辺りを見渡すとそこかしこから灰色のモンスターが擬態を解き自分達に向かって突進してきた。


天上や床に張り付き擬態していたモンスター達は灰色の肌をしており、細長い手足とブヨブヨと動く胴体を持っていた。

頭部という物は無く、本来首が着いているであろう箇所に口の様な穴があり、ぐにぐにと動いていた。

恐らく手足を折りたたみ自由に変形する胴体を使って天上や床の凹みや亀裂と一体化していたのだろう。


ライトは瞬時に視線を巡らし、情報収集機から送られてくる周りの状況と目視で得たモンスターの位置関係を統合し両手のハンター5で銃撃を開始する。

ハンター5の威力でも十分通用するようで、そう何発も撃ち込まなくても討伐できた。

シドもライトの状況を把握している様で、ライトの背中を守る様に迫って来るモンスターを迎撃していく。

(これならなんとか!)

数は多いが視界さえ確保できれば戦える。そう考え時間圧縮を使いながら目の前から群がって来るモンスターを討伐していく。

銃弾を受け、紫色の血と肉片を撒き散らしながら千切れ飛んでいくモンスターを視界に捉えながら必死に眼球を動かす。


この情報収集機を手に入れてから全方位かつ広範囲を見渡せるようになり、視界に頼った戦闘から遠ざかっていたライト。

今は情報収集機での索敵が当てに出来ない為、自分の視界に入る範囲でしか把握できない。

気配を察知する能力が鈍っている事を感じながら戦い続け、漸く視界内のモンスターを殲滅出来たと思った瞬間。視界の端からライトに向かって伸びてくる攻撃を察知。直ぐにシールドを展開し反撃しようとするが、あろうことかその触手はシールド等無いかの様にライトに向かって突き進んでくる。

(しま・・・)

今のタイミングからでは避けられない。シールドスーツはエネルギーシールドで攻撃を防ぐことを念頭に置かれた防護服だ。

シールドスーツ自体の防御力は無いに等しい。


今から回避行動をとって直撃は防げてもこのコースでは肺を抉られてしまう。

その瞬間、シドの足払いがライトの脹脛に直撃しライトは仰向けに倒れ込む。間一髪の所で直撃を避け、触手はライトの額の少し削るだけに終わった。




シドはライトと転倒させた後、刀を抜き触手を切り払う。

切断された触手は本体の方へ戻ろうとするが、戻り切る前にシドのS200がモンスターに向けられた。

それを察知したのかモンスターは遮蔽物に隠れようとする。

シドは弾丸をSH弾頭へと変更しトリガーを引く。

一息の内に放たれた24発の弾丸は、壁を貫きモンスターへと命中。モンスターを貫通した弾丸は奥の壁にも穴を開けた。

体中に穴を開けられたモンスターは痛みに悶えながら体液を撒き散らし、やがては動かなくなる。


シドは全神経を集中させ、この区画に動くものが居ないかを確認し銃を降ろした。


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