ライト 初装備と初遺跡探索
「おし、今日はミスカさんの所に行くぞ」
「昨日そう言ってたね。何しにいくの?」
あれから一ケ月ほど濃厚な訓練を行い。ライトも、栄養価の高い食事と連日の訓練、回復薬の使用によって遺跡に連れて行っても生きて帰ってこれるだろう、と言うところまでは成長していた。
その間の生活で、シドがライトに敬語の使用を禁止していた。これからパートナーとして活動する相手から敬語で話されるのは、急な判断や指示を行う際に邪魔になると考えたからだ。
故にライトはシドに砕けた話し方をするようになった。
「今日はお前の情報端末と銃を買い替えるんだよ。もうちょい高威力なヤツでも扱えるだろうからな。今のままだとラクーンが複数出てくると危ない」
「なるほど・・・ならバックパックも欲しいな。遺物を見つけても持って帰れないでしょ?弾薬も持ち歩かないとだし」
「そのあたりもガンスさんに相談するさ。装備の更新が終わったら、そのまま遺跡だ」
「・・・わかった」
シド達はミスカのトラックに向けて声をかける。
「すいませ~ん」
「はいよ。お、シド。久しぶりやな」
「はい、ガンスさん。お久しぶりです」
「今日はミスカのヤツ、ちょいと用事で出払っとるんやけど。どないした?」
「あ、ライトの装備について相談したかったんで、ガンスさんお願いできますか?」
「お~、そうかいな。うし、見繕ったろう。中入ってき」
そういい、ガンスはトラックの中へ入っていく。シドとライトもそれに続いて行った。
そしてライトの情報端末と銃とバックパックを選定してもらった。
それとライトが持っている情報収集機だ。これはライトの身柄を譲ってもらったついでにこちらに所有権が移っている。これの使い勝手を上げるためのパーツも合わせて購入した。
そしてライトの装備は、久我テック製MKライフル G-MK330 最大有効射程は1km 通常弾頭 SH弾頭の二種類に対応し、装甲の硬い敵にも効率的にダメージを与えることが出来る。単発式だが、ボルトアクションでの給弾方法を採用しており、素早い給弾を行えることが特徴と言える。使いやすく、機械系のモンスターを狙うハンターたちには人気が高い。カートリッジの装弾数も30発と比較的多いのが人気の理由の一つとなっていた。
バックパックはシドの物と同じものに同じカスタマイズを施してある。重量操作機構も付いており荷物の運搬も問題はない。
後は情報端末と情報収集機のパーツである。情報端末は通常の物で問題はないが、情報収集機は今のままだと、情報収集機自体についているパネルを見ないと情報が分からなかったが、そのパネルを取り外し、頭に被るバイザーに表示させるようにした。これで一々情報収集機に目を向ける必要が無く、戦闘中に手間取る必要もなくなる。後は、情報収集機を腰のあたりに取り付けるホルスターを購入し装備した。
後は記録媒体を数個取り付け、シーカーと言える装備を充実させたのだった。
「こんなもんでどうだ?だいたいランク20のヤツでも通用する装備になっただろう」
「いいですね。これでお願いします」
ライトは新たな装備と、バイザーに映る情報収集機から送られてくる情報に目を向けテンション爆上がり状態だった。
「ほいよ。〆て1200万コールだな」
しかし、聞こえてきた値段に一気に冷静になる。これほどの装備を持たされたのだ。役に立ちませんでしたではお話にすらならない。興奮はなりを潜め、緊張のせいで体が震えてきた。
「はい、ライセンスでお願いします」
「毎度どうも。おっとそうやった。今週いっぱいで俺たちはまた東に移動することになったんや。取引できるのは後4日ってところやからな。覚えといてや」
「そうですか・・・・わかりました。後で来ますんで、またよろしくお願いします」
「おう、きーつけて行ってこいよ」
シド達はガンスと別れ遺跡に向けて出発した。
遺跡外周部まで到着したのだが、いつもと様子が違っていた。
幾つかの戦闘の跡が有り、モンスターの死骸が回収された形跡がある。
今までこの辺りまでモンスターが出てくることは無かったのだが、遺跡の奥部でなにか変化が起こっているのは確実となっていた。
「・・・どうなってんだ?」
「シドさん。この辺りの索敵結果だけど・・・遺跡の方に何体か敵性反応がある。このまま進んだらかち合うよ?」
<どうする?ワーカーオフィスには何も情報は上がってないよな?>
<はい。異常事態に関する内容は何も告知されていません>
「・・・・・少し進んで様子を見よう。ラクーン数匹ぐらいなら問題ない・・・」
「わかった」
ライトが検知した敵性反応がある方向に進んでいく。
丁度防壁の隙間がある辺りで4体のラクーンが居るのを発見した。
「・・・ライト、お前がやってみろ。ここからなら当てられるだろう?」
「・・・わかりました。やってみます・・・」
「焦らず撃てよ。危なく成ったらフォローするからな」
「はい・・・」
ライトは手に持っていたG-MK330を構えラクーンに照準を合わせる。射撃訓練も行ってきたため、その構えは初心者としては上出来であろう。
一度深呼吸し、ライトは引き金を引き絞った。
火薬の力で押し出された弾丸は空を駆け、狙い違わずラクーンの頭に命中し、その威力を解放する。
頭部に大穴が空き絶命したラクーンは崩れ落ち、動かなくなった。が、その周りに居た他の3体は正確にライトの方を向き駆けだした。
まだ敵の射程には入っていない為、銃撃はしてこなかったが巨体を誇るモンスターが一心不乱に此方に向かってくる姿は恐怖心を煽る。
ライトは恐怖心を押さえつけ薬室に次弾を装填、次のモンスターに狙いを定め引き金を引いた。
その弾丸は狙いが逸れ、右肩に当たり、周りの肉と骨を吹き飛ばす。即死には届かなかったが、移動能力は失っており脅威ではなくなった。
落ち着けと自分に言い聞かせ次弾を装填し、次の獲物を狙うが、ここでラクーンが背にある銃器で攻撃してきた。
ライトはその場から飛び退きラクーンの攻撃を回避する。少し前に自分がいた場所が吹き飛び、瓦礫の破片が防護服に当たる。懸命に荒ぶる心を押さえつけ狙いを定め撃つ。
次の弾は正確にラクーンの頭に当たり対象を即死させた。が、ここで時間切れになる。
ラクーンがかなり近づいて来ており、このままだと危険と判断したシドが攻撃を開始する。
2丁の大型ハンドガンから飛び出た弾丸は2体のラクーンの頭に正確に着弾しその命を吹き飛ばした。
「うん、まあまあだったな」
「・・・・・まあまあですか・・・」
緊張し粗くなった息を整え、そう返事を返す。
「慣れれば4匹くらいすぐに討伐できるようになる。とにかく今はモンスターとの戦闘になれる事が優先かな」
「はい・・・わかりました・・・」
「緊張しすぎだって。また敬語がでてるぞ」
「あ・・・わかった」
「よし、索敵はどんな感じだ?」
「えっと・・・この辺りにはもう居ないね」
「じゃ、さっさと進むぞ」
ライトはワーカーオフィスに登録していない為、今回の戦績はシドの功績となる。
それは前もって説明していた。
遺跡の中に入って行き、目的の建物まで移動する。ライトの索敵によるといつもよりかなり敵影が濃い。
どうしたものかと考える。
<イデア、これどうなってんだ?>
<恐らく遺跡の奥で何かが変化し、中央部から徐々にモンスターが押し出されていると予想します>
<ワーカーオフィスは知らないってことか?>
<全く把握していないと言う事は無いでしょう。高ランクのワーカー達もこの遺跡に入っているのです。その辺りの情報は既に把握しているはずです>
<だったらなんで情報として公開されてないんだ?>
<恐らく浅層の情報までは精査されていないのでは?高ランクのワーカー達はラクーン程度の分布まで調べたりしないでしょうし>
このイデアの予想は大方当たっていた。
浅層を探索するのはランク一桁の者たちが多く、ラクーンの数が多いと言った情報も基本口頭での報告となる為、正確な情報と認識していなかった。一種の怠慢ではあるが、オフィスの業務にそれほど影響を与えないのも事実の為、半ば放置されていた。
<このまま遺物を回収しても結局あの数に追い回されるよな・・・>
<はい、ここは一掃してしまう方が安全かと>
イデアと相談し、シドはこの辺りのラクーンを全滅させる事を選んだ。
「ライト。ここら辺のラクーン全部討伐するぞ」
「え?!結構な数だよ?!」
「俺がメインで戦うから安心しろ。お前は遠距離のヤツを狙え。・・・俺から離れない様キッチリついて来いよ?」
そういってシドはライトに笑いかけた。
今から判断を誤れば死ぬぞ、とその笑顔は言っているような気がした。
「・・・」
ライトは無言で頷き銃を構える。
「よし、行くぞ!」
シドは建物の影から飛び出し、4体のラクーンに向かって銃撃する。一瞬で頭に風穴を開けて倒れるラクーンを尻目に、方々から集まって来るラクーンに対して銃撃を開始した。
シドは加減して移動しているが、ライトからすると全力疾走に近いスピードで移動していく。
シドが近くのモンスターを倒してくれる、なら自分は遠距離かつ自分の射程に入っているモンスターを撃っていけばいい、この銃なら当てればなんとかなる。その気持ちでバイザーに映る情報に集中し銃撃していく。
銃弾が飛び交う地獄の中を懸命に駆け抜け、ライトは自分の与えられた役割を全うした。
約5分程の銃撃戦が終了し、辺りには討伐されたモンスター達の死骸が転がっていた。
中にはラクーン以外のモンスターもいる。
一度シドが遭遇したクラブキャノンが数体混ざっていたのだ、弾切れなのか砲撃は行わず、ブレードで切りかかって来ていた。
モンスターの総数は実に48体。
シドもこの数と一度に戦闘した経験は無く何度か冷や汗をかかされた。
「ライト~生きてるか~?」
「・・・・・なんとか・・・・」
ライトは戦闘中、何発か被弾していた。
浅層を探索するには不釣り合いなほど高性能な防護服と遺跡に入る前に服用しておいた回復薬のおかげで生き残ったのであった。
幾ら防護服の上からとは言え、モンスターの銃撃を受ければその衝撃は体に伝わる。何度も蹲りそうになる体を必死に動かし、あの戦闘を生き延びていた。ライトが討伐したモンスターの数は8体。初の遺跡探索では十二分に大金星であった。
「よくやったぞ。最後の方はちゃんと狙い通りに当ててたな。うん、やっぱり実践に勝る訓練はないな」
<そうですね。命中率が飛躍的に高まっていました。おそらく情報収集機とのリンクが始まったのでしょう>
はっはっは、と笑うシドにライトは返事を返せなかった。
「これで遺物を取りに行けるぞ。ほら、こっちだ」
そういい歩き出すシドにライトも付いていく。
これからもこんな感じなのか???と戦慄を覚えるライトであった。
シドはいつもの建物の中にライトを連れて入っていく。
瓦礫を除け、地下へと入っていった。
「こんな場所が・・・シドさんはいつもここで遺物を回収してるの?」
「そうだな、今回でここにあるのは全部回収できるだろう。ライトもいるからな」
「そうなんだ・・・」
前回はここで死にかけたんだよな・・・とライトは思い出していた。
「俺も初めて遺跡に来た時にここに来てさ。いや~マジで死ぬかと思ったよ。旧文明の機銃と取っ組み合いしてさ」
「取っ組み合い???」
「そうそう。その時は装備なんて持ってなかったからさ。素手で機銃をぶっ壊したんだ。あ、あれがそうだな」
シドが指さした先には破壊されバラバラになった機銃が転がっていた。
「・・・・・」
この人やっぱり頭おかしいんじゃないか?とライトは思う。
普通の人間は旧文明製の機銃を素手で破壊しようなどとは思わない。現文明製ですら思わないだろう。
ライトは、付いていく人を間違えたんじゃないかと本気で考え始めていた。
ライトがいろいろと人生について考えている間に、遺物が保管してある部屋に到着した。
「ここだ。今回で根こそぎ持っていくぞ!」
嬉しそうにシドが言う。殺し合いをしているよりよっぽど嬉しいのだろう。この辺りはまだ正常か・・とライトは考える。
そして今まで現物を見たことが無かった遺物達に気分が高揚してくるのが分かった。
「はい。手あたり次第に詰めていったらいいかな?」
「おう、好きに持っていけ」
二人は手分けして遺物をバックパックの中に詰め込んでいった。そうして、部屋の中の遺物を全て詰め終わりバックパックを担ぐ。
「・・・やっぱり結構重いね」
「まあな、これを担いだまま戦闘って事もあるから、あんな訓練もやったんだよ」
ライトはこの1カ月の間に、バックパックいっぱいの岩を担いでシドに追い掛け回された事を思い出した。
(あれは辛かったな~~~・・・・)
死んだ目で遠くを見るライト。必要なことだったとはいえ、もう一度やりたいかと言われれば全力で拒否するだろう。
「ま、これは岩じゃなくて高価な遺物だ。そう思ったらやる気も出るだろ?」
「・・・そうだね。早く帰ってミールさんの料理食べたい」
ミールというのは宿の料理人である。ライトはなぜか宿の料理人と仲良くなっていた。
50手前くらいの肝っ玉母さんといった感じで、スラム基準体形のライトを見つけ何かと世話を焼いてきたのだ。
ライトと一緒にいる時はシドも何かとサービスしてもらえ、食堂に行くときは成るべく一緒に行動しようと思うくらいには仲が良かった。
「そうだな。後は帰るだけだが、気を抜くなよ。ここでヘマしたら笑えないからな」
「うん・・・索敵も問題ないよ。慎重に帰ろう」
二人はずっしりと重くなったバックパックを背負い、遺跡から脱出する為歩き出した。
「やっぱこうなるよな~」
「・・・・・そうだね」
<これはまた団体さんですね>
遺跡から脱出するルート上に20体のモンスターの影を確認できた。
正直、遺物を担いだ状態で戦いたくはない。
「ライト、あそこにいるヤツ等だけか?それともこの辺り一帯にもいる感じか?」
「半径300m以内に居るのはアイツらだけだよ。でも、銃撃戦なんかしたら確実に寄ってくると思う」
「・・・・・・しかたないな。久しぶりにコイツの出番だ」
シドはそう言い、バックパックをその場に降ろすと、腰の双剣を抜き放つ。
「剣で戦うの?」
ライトは信じられないと言った顔でシドを見るが
「ああ、静かに殺すならこっちのほうがいい。ここで他によってくるヤツが居ないか監視しててくれ・・・お前がヤバいと思ったら戦闘に参加したらいい。最悪、遺物はここに置いていく」
「・・・・わかった・・・気を付けて」
シドは気配を絶ち静かにモンスター達に近づいて行った。
<久しぶりですが、サイレントキリングの方法は覚えていますか?>
<大丈夫、ちょいちょい訓練してたから>
<それは私も知っていますが、実戦は久しぶりですからね。注意してください>
<ああ、サポートは任せるよ>
<はい、お任せください>
シドは空間把握を使い20体すべてのモンスターを把握し、イデアは最も効率的な攻撃ルートを表示する。そして時間を圧縮し、空気の隙間を縫って一気に近づき攻撃を開始した。
一振り一振りで確実に首を落とし、頸椎を切断し絶命させていく。中にはシドに気づいた個体も存在するが、イデアがシドに教え反応を示した瞬間にシドに命を刈り取られた。
半分ほど仕留め終わった辺りで残りの個体が気づき始める。
シドはさらに時間を縮め、自分が出せる限界の速度でモンスターを攻撃する。
結果、声一つ、銃声の一つも上げさせずに20体のラクーンを討伐しきったのだった。
全てのラクーンが死亡している事を確認し、シドはライトのいる所に戻る。
そして、降ろしていたバックパックを背負いライトに声をかけた。
「よし、また次が来ないうちにさっさと抜けちまおう」
「・・・・そ・・そうですね。はい」
「だからまたなんで敬語?」
「あ、はい。すいません」
「・・・・まあいいや、その癖早くなおせよ」
そういい、シドは遺跡の外に向けて走り出す。
ライトはその背中を追いかけて駆けていくのであった。
その後は数体のラクーンとの戦闘があり、ライトの訓練に利用され討伐された。
今回も無事に帰還し、ミスカ達のトラックまでやってきた。
すると、ミスカは防壁内から帰ってきておりシドたちを迎えた。
「おかえり~、どうやった収穫は?」
「はい、この通りです」
シドはそういい背中のバックパックを揺する。ライトも自分の方にもあると同じように揺すった。
「そ・・・それはまた大量で・・・」
「これの換金お願いできますか?」
「・・・お~し、任せい!全部買い取ったら~~!!!」
やけくそ気味にミスカが叫び、トラックの中に入っていく。シド達もその後に続いた。
「おーし!見せてみ!」
ミスカがそう言い、シド達はバックパックをミスカに渡す。量はいつもの2倍。今回は全てメカ系という訳ではなさそうだが、全部保管ケースに入っている。高額査定になることは間違いない。これは東の都市でさばくしかないなと、ミスカは内心でため息を漏らした。
「んじゃ、査定するから待っといてや。なんか買うものがあったらガンスに声かけたらええよ」
「はい、わかりました」
シド達は商品の陳列コーナーに移動しガンスに声をかける。
「すみません、ガンスさん。ちょっといいですか?」
「おう、シドおかえり。またぎょ~さん持って帰ってきたんやな~」
「ええ、まあ。この量になるのは多分最後だと思うんですけど」
「ほうか、ま、ぼちぼち頑張りや」
「はい、それとですね」
シドはガンスに装備の相談をする。弾薬の補充とライト用の回復薬。それと、ライトのバイザーに罅が入ったためそれの買い替えも頼んだ。
「はいよ、それだけでええんか?」
そこで、ライトが声を上げる。
「すいません、この銃ってもう一つありませんか?」
「ん?G-MK 330 か?あるにはあるけど・・・」
「今日、多数のモンスター戦うことがあって、2丁あったらもっと効率的だったなって思う場面あったんです」
「でも、お前それ、片手で扱えんのか?」
「大丈夫です。片手で撃つ練習もしましたから。戦闘中も片手撃ちで当てられましたし」
ライトは射撃訓練の際、片手撃ちもやらされていた。訓練で使った銃も両手持ちの銃なのに、なぜ片手で撃つのかとシドに聞くと、必要になるタイミングが絶対あるからと言われ骨が軋む思いをしながら片手撃ちを習得していた。
「まあ、ええけど・・・」
「なんならこれ撃ってみるか?サイズはハンドガンで射程も落ちるけど、取り回しはすごく楽になるぞ」
と、シドは自分のKARASAWA A60をライトに薦めてみる。が
「それはやめとけ、銃の反動を抑制する機構が付いてへんのや。普通のMKライフルとは衝撃吸収率が全然違う。ライトが片手なんかで撃ったら手が捥げてまうぞ」
「・・・・・興味はあるんですけどね。G-MK 330でお願いします。後弾薬も」
「はいよ、毎度あり」
シド達は弾薬や回復薬を包んでもらい。銃と手入れセットも購入する。支払いは今回納品した遺物の売り上げ金からの差し引きにしてもらった。
商品を受け取り、それぞれのバックパックに詰め込んでいく。
すると、ちょうどその時ミスカから声が掛かった。
「査定終わったでー」
「お、んじゃ行くか」
「「はい」」
二人はガンスに続きミスカの元まで歩いていく。
「ほんまに、今回は大量やったな~」
「バックパック2つ分ですからね」
「質自体は最初のよりはちょい落ちるけどな。そんな訳で今回の買取は1900万コールや。どないする?」
「はい、それで問題ありません」
「ほうか、ガンス、こっちの売り上げは?」
「850万コールだな」
「はいよ、差し引きで1050万コールやな。振込でええな?」
「はい、これで」
シドはライセンスを渡し、代金の振り込みをお願いする。
「はいよ、これで取引成立や。まいどど~も」
「はい、ありがとうございました」
今回も無事に換金を終わらせ、備品の購入と、追加の装備を購入できた。満足のいく取引だったと言えよう。
後は帰って飯を食うだけである。
「そや、シド。ウチらはもうすぐ東の方に行くんやけど。その間どないする気なん?」
「あ、遺物の売り先にはちょっと当てがありまして。備品の購入だけがちょっと・・・」
「ワーカーオフィスで買うのはやっぱいやなんか?」
「・・・・・ええ、まあ・・・」
「・・・・・ちょっと突っ込んだ事聞くよ?あんた、ワーカーオフィスに持ち込んだ遺物没収されたんやろ?」
「・・・・はい、そうです」
「それ、訴え出たほうがええで。ワーカーオフィスからしても重大な規律違反やからな。最後の最後でこんな事いうのは卑怯やけど。ワーカーとしてやって行くんやったら、オフィスと上手いこと付き合っていかなあかんからな」
「それはそうなんですけどね。訴え出る所も心当たりはありませんし・・・」
「多分、そのうちお声が掛かると思うわ。そん時は正直に話したらええよ。その時の状況とか証拠があったらなお良しやな」
「証拠ですか・・・そんなもの・・・」
<あります。あの場の会話は録音してありますので、データとして提出する準備は出来ております>
「・・・心当たりがありますんで準備しておきます」
「そうしとき、悪いことにはならんと思うから」
「はい、ありがとうございます」
「もうちょい、この都市にはおるけど、元気にやるんやで。次この都市に来たときはまた贔屓にしてや」
「はい、それはもちろん。それでは失礼します」
「はいよ~。まいどおおきに」
そう言い笑顔で見送ってくれたミスカ達であった。
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