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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
166/214

変なおじさん

<ちょっとシドさ~~ん>

<毎回毎回俺のせいにすんじゃねーよ!!>

シドとライトはワーカー達の救援要請に駆け付け、取り囲んでいたモンスターを粗方討伐した。

しかし、その直後、ワーカー達の車の中からオートマタが飛び出してきたのである。

最初はイデアの様に誰かが使っているオートマタなのかと考えたが、シド達の姿を確認するや否や両肩に取り付けられた短ライフルで攻撃してくる。

2人はすぐさまバイクと車を動かし、射線から退避するが、シドのバイクはともかくT6では小型モンスターに分類されるオートマタと戦うのはやりにくい。

シドはバイクの操縦権をライトに譲渡すると、バイクから飛び降りその足でオートマタに向けて駆けだした。


この状況で銃撃を行えば、外れた弾丸が他のワーカー達を傷付ける可能性が有る。シドは双刀を抜き超近距離戦を仕掛けた。

体内電気を使用し、爆発的に速度を高めたシドは、一気に肉薄しオートマタへと切りかかった。

しかし、オートマタはその両腕に取り付けられていたチェーンソーの様なブレードでどシドの斬撃を受け止める。

シドのアダマント製の刀とオートマタの回転式ブレードが接触し、甲高い金属音と火花が飛び散る。

キョウグチ地下街遺跡で戦った時は力負けしたが、あれからのトレーニングでシドの腕力はかなり向上している。今度は片手の力だけでオートマタを弾き飛ばす事に成功した。

(うん!強くなってるぞ!)

今まで雑魚か強敵かの両極端な相手としか戦ってこなかった為、自分の成長に若干懐疑的であったが、先程の一当てで自分の成長を実感する事ができた。

しかし、相手はオートマタだ。油断していて勝てる相手でもない。

相手のオートマタはシドに弾かれよろめきながらも肩にあるライフルでシドを照準し撃って来る。

シドは飛んで来る弾丸を躱し、距離を詰めるために足を踏み出す。オートマタは超近距離戦闘では分が悪いと判断したのか距離を取ろうとした。

速度だけならばシドの方が速い。しかし、オートマタの戦闘システムは優秀な様でシドの斬撃を食らわない様に絶妙な距離を保ち、刀で弾かれる勢いを使って距離を保とうとしていた。

間合いと詰め刀を振るっても上手くいなされ右に左に躱されてしまう。

(チ、しゃーない)

<ライト頼む>

<了解>

一瞬のうちにライトと意思疎通を図り、シドは頭部への振り下ろしを叩き込もうとする。

オートマタはまたその衝撃を利用して後ろに飛ぼうと両脚を屈め、両腕を頭の上に配置した。シドの振るった刀がオートマタのブレードに接触する瞬間。シドは手首の力を抜き、衝撃を透かす。

オートマタが衝撃を受け止め弾き飛ばされようと押し出した両手が空振り、体のバランスが崩れる。

それとほぼ同時にシドはオートマタの両膝を狙って左手の刀を振り抜く。それを感知したオートマタは不格好ながらに飛び跳ね、後方へと退避しようとした。


しかし、オートマタの背後からライトに誘導された無数の弾丸が命中。

両肩に搭載されていたライフル銃が破壊され、オートマタ本体も弾丸から発生した衝撃で前方の方へ押し戻される。


そこに待っていたのは、必中の構えを整えたシドである。

右手は袈裟切り、左手は逆袈裟切りの軌道を描き、オートマタの装甲に食い込む。

セントラルから提供された動画で、刀の正しい扱い方を学んだシドの斬撃はいとも簡単にオートマタの装甲を切り裂いた。


オートマタの体は斜めにズレ、上半身はシドを飛び越え下半身は地面を転がっていく。

まだ残留エネルギーがあるのだろう。

切断面からバチバチと放電しながらも動こうとしていたが、ユックリとその機能を停止させ、やがては完全に動かなくなった。


シドは体を起こし、双刀を鞘に納める。

気配のする方を見ると、ライトがバイクに跨り、その後ろからT6が走って来る。

「お疲れ様」

「おう、まあなんだ。俺達もちゃんと成長してたな」

「そうだね」

今回のオートマタはシドだけでは梃子摺ったかもしれない。

S200を存分に使用できる状況であればまた違った戦闘になっていたであろうが、ライトと2人で行動していればオートマタと遭遇しても問題なく討伐できる事が証明された。

自分達の成長が確認でき、今回の間引き任務は実りのあるものになったと言えよう。



そう綺麗に話を〆、帰ろうかと考えていると、バリケードの中から大声を上げながらこちらに向かって爆走してくる男の姿が見えた。


「~~~~~~~!!!!」

「・・・なんだ?」

「なんだろう?」

シドとライトは不思議そうに男の様子を伺っていた。

段々と近づいて来ると、男の表情がはっきり見えてくる。


男は両目から瀑布の様な涙を流し、怒りで真っ赤に顔を染めていた。

「ぁぁぁぁあああああ~~!!!!君たちはなんて事を~~~!!!!!!」

男はシド達の元まで走って来ると、ズザザザーー!と膝滑りをしながら既に動かなくなったオートマタに縋りついた。

「うおおおおぉぉぉぉ~~!!!完璧な・・・!!!完璧な保存状態だったのに~~~~!!!!!・・・・ああぁあぁ!!こんなに傷ついて・・・ゲホゲホ!!!・・・・おぇぇ~~・・・・」

最愛の恋人が目の前で切り殺されたかの様な反応である。

男の異様な様子にシドとライトは無言で眺めるばかりであった。

「あなたたちはなんて事を!!!アビーが一体何をしたと言うのですか!!!!」

((あびー?))

何をしたも何も襲ってきたのだ。自己防衛の為に戦ったまでの事なのだが、大きく見開かれ眼球が充血した目に睨みつけられ、シドとライトは怯んだ。

いや、男の様子に引いてしまった。

<なあ、コイツなに?>

<なんだろ?・・・・どこかの研究者だったり??>

2人が男の事を考察していると、その向こう側から数人の男たちがこちらに走って来る。

「おーーい!博士!!勝手に走って行くな!!!」

恐らくこの男の護衛を受け持っていたワーカーなのだろう。ゴツいパワードアーマーを着込み、大型のライフルを手に持って走って来た。

「あああ!!!ゴルバチョフさん!!私のアビーが!!こんな無残な姿に~~!!!」

「いやまだあんたの物じゃねーよ。買い取り云々の話も終わってなかっただろうが・・・・おっと、すまんな。そのオートマタは俺達が運んでたモノなんだが・・・・まさか起動するとは思わなかった」


詳しく話を聞くと彼らは企業の依頼を受け、企業の職員を伴い遺跡探索を行っていたらしい。

この男は企業の研究者で、遺跡の中で未起動のオートマタを発見。是が非でもこのまま持って帰りたいと駄々をこねたらしい。彼らの意見は最大限尊重する内容の契約だったため、ゴルバチョフチームはオートマタが収まっていたケース毎遺跡から引っぺがしミナギ都市に帰還する所だった様だ。

しかし、帰還途中に大規模のモンスターの群れに見つかり追い掛け回された挙句、先程の状況に陥ってしまったらしい。

「救援要請を出したら、最近ミナギ都市に移って来た腕っこきを寄越すって言われたんだが、まさかこんな若い奴等だとは思わなかったぜ」

ゴルバチョフが呵々大笑し、シド達に向かって礼を言った。

「助かったぜ。あの大群でもちとヤバかったんだが、俺達じゃあの起動したオートマタは絶望的だったからな」

その言葉にシドは不思議そうに首を傾げる。

「そうなのか?あんた達全員でかかったらあのオートマタくらいなんとかなると思うけど」

シドの言葉にゴルバチョフは顔を顰め理由を説明する。

「フル装備ならなんとかなったかもしれん。だが、遺跡探索で結構弾薬を使っちまってな。そこに来てあの大群だ。肝が冷えたぜ・・・・・・・そこで済まねーんだが、ミナギ都市まで護衛を頼めないか?」

「そうだな、俺達も帰ろうと思ってた所だし」

シドはライトの目を向けると、ライトも無言で頷く。

「そうか!助かる!救援に対する報酬も色を付けさせてもらうぜ!オートマタの件についてはワーカーオフィスを通して話し合いたいんだが構わないか?」

「ああ、それで構わない」

「助かる!・・・おい博士!いつまで泣いてんだよ。さっさと行こうぜ。他の連中が待ちくたびれちまう」


ゴルバチョフはまだオートマタをぺたぺた触りながら泣いている博士を抱え上げ、部下たちは分断されたオートマタを担ぎ自分達の車へ戻って行く。


「・・・博士って変わったヤツなんだな」

「皆があんな感じじゃないと思うけどね・・・」

ゴルバチョフの逞しいパワードスーツに抱え上げられながらも、まだジタバタと暴れている博士を見送り、シド達も車に乗り込みミナギ都市を目指し出発する。


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― 新着の感想 ―
企業の物であると主張するなら、その管理を外れて襲ってきたことには責任を持たなきゃいけないから無傷のオートマタに相応する賠償が貰えるんじゃないのという感じだ。 イデアを知ったらしつこく付きまといそうな人…
よく見る研究しか興味を示さず現場はからっきしなタイプですね 状況で判断できないお荷物抱えるのは大変だぁ
向かってきたオートマタ、倒した者の戦利品になるんじゃないの?
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