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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
161/199

シド ぶった切る

シドはワーカーオフィスを後にし、第2防壁をくぐりスラム街へと戻って来た。

今頃ライトが弾薬の補充を済ませている頃だろう。


まだ時間は午前10時にもなっていない。ライトと合流して手慣らしに近辺の討伐依頼でも受けようかと考えながらテクテクと道を歩いて行く。

<シド、囲まれていますよ>

<・・・はぁ~・・・そうだよな~>

シドは自分を包囲するように動く気配を感じ取り足を止める。

<なんだと思う?>

<タイミング的に昨日の荒くれ者達の仲間では無いかと>

イデアの言う通り、それしか心当たりはない。

さてどうしたモノかと考えていると、包囲が完了し男たちがシドを取り囲む様に姿を現す。

全員が銃で武装しており、着ている防護服もダゴラ都市のスラム街とは違い、ちゃんとした機能を持っている様だ。

「小僧、昨日匿った男と赤ん坊の居場所を教えろ」

シドの目の前に立った男はシドに銃を向けながらそう言い放つ。

顔面の半分は義体化されており、恐らく体の方にも義体化を施しているのだろう。着ている防護服も他の連中と比べれば高性能な物を着用しているらしい。

この男がこのチームを率いているとシドは判断する。

「断る」

シドが端的に断ると、男はシドの右足に向けて弾丸を放って来た。

体を半身にし、飛んで来る弾丸を避けると、シドは意識を完全に戦闘態勢へと移行させる。


シドが弾丸を避けた事を見た男は、舌打ちを打つ。

「チッ!面倒な・・・・」

男が左手を上げると、シドの背後や左右の建物に布陣していた男たちも手にしている銃をシドへ向ける。

「お前に逃げ場はねー。大人しく情報を吐くなら楽に殺してやる」

「どの道殺すつもりかよ」

「当然だ。お前はウチの連中を殺しているからな。それとも拷問がお好みか?そうなったら情報を吐いても苦しむことになるぞ?・・・・まさかこの包囲から逃げ切れると思ってんじゃねーよな?」

男は圧倒的優位に立っていると考えている。

まだ子供のワーカーで、ミナギ都市に移って来た事を考えると他都市ではそこそこの実績を積んできたのだろう。

だが、このミナギ都市は西側の都市とは比べ物にならない程高い戦闘能力が求められる。

ダゴラ都市のランク40の者達ですら通用せずに逃げ帰る事例すらあるのだ。

まだ20歳にも届かない様な子供のワーカーに構成員を殺され、ターゲットと商品を横取りされたままダンマリを決め込めば、組織としての体裁が揺らいでしまう。

男はシドを生かし返すつもりはなく。殺した後も見せしめとして吊るし上げるくらいの事はするつもりだった。


「昨日の連中の仲間か?なら人売りの組織の人間とみて間違いないな?」

シドはそう最後の確認を取る。


男はシドがこの数に囲まれても焦り一つ起こさない事を不審に思いながら、自分で死刑執行のボタンを押す。


「ふん!今時この都市で人売りなんざ珍しくもねーんだよ。随分平和な世界から来たんだな坊や。下手な正義感を出した自分をうら・・・ バシィーー~~ン!!!  ・・・!!」

男のセリフが終わる前に電撃音が迸り、男の胸部に命中する。


シドが放った電撃は、男のサイバーパーツの耐電圧を超えショートを引き起こす。

半身を機械化していた男は立っている事が出来なくなりその場に崩れ落ちた。

周りにいた男たちは、不可思議な攻撃に一瞬狼狽えるものの、この都市で長らく暴力で飯を食って来た連中である。すぐさま気を引き締め直し、シドを狙っていた銃の引き金を引き絞る。

しかし、すでにその場にシドはおらず無駄に放たれた銃弾は地面や壁をえぐるだけに終わった。


<銃撃は最小限にしましょう。今の残弾数では後から増援が来た場合対応が難しくなります>

<わかった>

シドは腰から双刀を引き抜き、まずはリーダー格の周りにいる連中の首を切り落とす。

地下シェルターでデンベの指導(肉体言語)を受け飛躍的に高効率で体を動かせるようになったシドは、イレギュラーと言われる者達で無ければ対応できない程のスピードを手に入れることが出来たのである。


シドが男たちの首に刀を叩き込んだ後、シドが立っていた場所に銃弾が降り注いだ。


(地上に居る奴からヤるか)

シドはターゲットの位置を再度確認し、地面を蹴る。

常人には認識できない速度での移動を行い、1秒とかからずに地上に居た者達の首を跳ね飛ばす。

そして、刀に僅かに付着していた血を血振りで払い飛ばし、双刀を鞘に納めた。

<シド?>

<ふふふ・・・>

シドは左腰の刀の鞘に左手を添え、右手で柄を握る。

腰を落とし、両脚を大きく開いた構えを取る。

<ちょ!シド!!>

<食らえ!!!>

「瞬閃!!!!」

技名を叫び全身の筋肉と関節を連動させ、その力を刀の刃先へと伝える。

大きく振り抜かれたその切っ先は音速を超え、模擬戦の際にデンベが見せた蹴り技と同じ現象を引き起こす。


鋭い切れ味を持った衝撃波は建物の壁を、窓から身を乗り出していた組織の組員達を通り過ぎて行く。

シドは振り切った刀を指先で回転させ、逆手に持つと鞘の中へと収める。


最後にキンと音を立てて納刀すると、組織の組員の体が2つに割れ、上半身がボトボトと地面へと落ちてくる。


(・・・・・・決まった・・・)

シドは地下シェルターのシアタールームで居合切りで遠くの物を切るシーンを観た。

そして思ったのだ。自分もあれをやってみたいと。

実際に蹴りで同じような事を起こしたデンベに頼み込み、デンベと共にそのアニメを鑑賞。

技術指導を行って貰い、漸く習得するに至ったのだ。

技名を叫んだのもアニメの影響である。

至極満足そうな表情で体を起こすシドにイデアが警告を発する。

<今すぐその場から離れて下さい>

<ん?なんでだ?敵は全員殺しただろ?>

最初に電撃を浴びせた男以外は確かに死んでいる。しかし、危機は去ってはいない。

<いえ、建物が倒れます>

「え?」

イデアの言葉に先程斬撃を飛ばした建物に目を向けると、ズズッという音と共に少しずつズレてきているのがはっきりと目に見えた。

「・・・・・あ」

<あ、ではありません。直ぐに撤退するべきです>

<わ・・・わかった>

<あの男の回収を忘れない様に。折角生かした情報源ですので>

少しイデアの声に怒りが混じっているような気がした。

(やばいやばいやばい・・・・・)

シドは自分のしでかしたことに青くなりながら、麻痺して動けなくなっている半サイボーグの男の頭部をひっつかみ、ライトが居る区画の方へ走り出す。


(やっちまった!!!!)

後悔しても遅い。

シドの背後から建物が崩れ落ちた轟音が鳴り響き、振り返ると建物の隙間から土煙が舞い上がっているのが見て取れる。

(どうしよ~~~!!!!)


シドの頭の中には建物を倒壊させてしまったという事の他に、もっと恐ろしい事が浮かんでいる。


即ち、イデアとライトが行うであろう説教である。


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― 新着の感想 ―
アキラメロン
崩れたビルに住んでいた人は、当然死んだのでしょうね。
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