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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
156/203

ダーマ

ライトが運転する車は通路を走り続け、男の言う7番地区付近へと到着する。

「・・・・世話になった」

男はシドとライトに頭を下げ、車を降りていく。

シドとライトは顔を見合わせ、男に続いて車を降りる。

「なんだ?」

「いや、その運び屋って奴等と合流できるまでついて行くよ」

「・・・・・・」

「ここで会ったのも何かの縁って事で」

男は何も言わずに足を進める。

2人も男の後ろをついて行った。ちなみに、他者に目撃されれば100%騒ぎになるイデアはお留守番である。

暫く路地を進んでいくと、少し開けた場所に出ることになった。

男はそこで足を止め、辺りを見回す。

「・・・・・まだ来ていないか」

「ここが集合場所か?」

「ああ、17時に集合だ」

シドが時間を確認するとまだ少し時間があった。

「まだ時間あるな。なあ、あんた、名前なんていうんだ?」

「・・・・・・・ダーマだ」

「そっか。俺はシドって言うんだ。コイツはライトな。車の中に居た奴はイデアって名前だ。短い間だろうけどよろしくな」

「よろしくお願いします・・・・・・・その子の名前は?」

「・・・今コイツの事は話題に出さないでくれ。誰が聞いているかわからん」

「・・・・すいません」

ダーマと名乗った男は別地区に来ても警戒を解いていなかった。

あの子供はどういった理由で売られようとしていたのだろうか?

「ダーマもワーカーなのか?一般人にしては鍛えてるみたいだし、服も防護服だよな?それ」

「・・・そうだ。だがまだ2年も活動していないから駆け出しだがな」

それは2人も同じだ。

かなり色々な事があったのが、2人がワーカーになってからまだ1年程度しかたっていない。

ワーカー業界ではまだまだルーキーなのである。

「俺達もだよ。そこそこランクも上がったからミナギ都市でランクアップを図ろうと思ってな」

シドの言葉にダーマは怪訝そうな表情を浮かべてシドを振り返る。

「・・・・ダゴラ都市からミナギ都市に移ってくるワーカーのランクは40以上が相場だ。2年足らずで東に移るのは時期尚早なのではないか?」

ダゴラ都市からミナギ都市に移ってくるワーカーはファーレン遺跡の深層では通用しないが中層では物足りない。

だがランクを上げて装備をグレードアップさせたい者達が多い。

ヤシロ達の様にダゴラ都市に留まってファーレン遺跡に挑み続ける者もいるが少数派だった。

「俺達はランク40以上だぞ。俺が50でライトが45だ」

シドのこの言葉にダーマはさらに表情を険しくする。

ダーマにはその言葉が信じられなかった。

本来ならランク20を超えるまで2年から3年はかかる。ランク40を超えようとすればかなり無茶をしなければ10年は平気でかかってしまうはずだ。

殆どのワーカーはランク30台で足踏みするか、無理を通そうとして死んでしまうものだった。

「たった1・2年でランク50だと?吹かすにも程があるな」

「嘘じゃねーよ。ほら、ライセンス」

シドは自分のライセンスを取り出しダーマに見せる。

「・・・・・・ダゴラ都市所属・・スラムバレット・・・ランク50?!しかも空走許可持ちだと?!」

「な?」

な?では無い。シドの年齢でランク50に到達している者など他には存在しない。

過去に遡ってもいないであろう。それに、空走許可とはかなり上位の権力者が発行する許可である。ただランクがあがれば貰えるものではない。

厳格な審査を通し、権力者に対する御心付けが必要になるのだ。

シドの場合はゴンダバヤシという、本来なら会う事すらできない様な人物から許可を貰っているが、通常ではあり得ない特権であった。

「・・・・お前等、何者だ?」

ダーマは目の前にいる2人組が普通のワーカーではないと考える。

「ワーカーだって言ってるだろ?ランクに関してはかなり頑張ったとしか言えん」

頑張ってどうにかなるレベルの話では無い。

しかし、シドはタカヤやユキという一般から逸脱した友人がおり、ヤシロ達の様な経験豊富なワーカーを知り合いに持つため自分達が特別だと言う認識が希薄だ。

旧文明の身体拡張ユニットを2人共使用している為、これくらいは出来て当然か?という認識でいるのである。

「そういうダーマのランクは幾つなんだ?」

「・・・・・俺は17だ」

「ずいぶん低いな」

シドのド直球な物言いにライトは顔を引きつらせる。

「この都市でワーカーになると遺跡探索なぞ出来ん。装備が整うまでは荒野のモンスターを討伐して金とランクを稼ぐしかないんだ・・・・・まあ、それにも失敗して今ではこの有様だがな」

ダーマは自分の装備を指し苦笑いをする。

「ダゴラ都市に行ったら何とかなるかもな。今はワーカーオフィス主導の訓練所が作られてる最中だから参加するといい。ファーレン遺跡の浅層なら通用するくらいまでは鍛えてくれるだろうからな」

「そうか。楽しみにしておく」

緊張が解れて来たのかダーマの顔にも笑顔が浮かび始める。

そして、時間を確認を行ったライトが声を上げた。

「ねえ、17時過ぎたけど誰も来ないよ?」

ライトの情報収集機にはこの広場に近づいて来る存在は感知していない。

シドの気配察知にも同じように誰も近づいて来るものは居なかった。

「おかしいな・・・・・確かに今日この時間で契約したはずだが・・・・」

ダーマの頭に嫌な予感がよぎる。

「・・・・すっぽかしか?」

シドの言葉はダーマに取って一番言われたくない言葉だっただろう。

彼にとってはそれが最後の命綱であったはずだ。それが絶たれたとなれば、彼が抱える子供と共に死ぬしかなくなってしまう。

「・・・そんなはずは・・・・・もう少し待ってみる・・・・・・」

また無表情に戻ったダーマだが、内心はかなりの焦りを感じていた。




「・・・・・・18時半回ったよ」

ライトが現在の時間を告げる。ここまで待ってこないと言う事は、何かトラブルに巻き込まれたか、ダーマが裏切られたかの2択だった。

ギリッ!

ダーマは歯を食いしばり、必死に崩れ落ちそうになる膝に力を籠める。

確かに今日の17時と契約した。前金も払った。自分と腕の中の子供の分とで100万コールも払ったのだ。

今の彼からすると、ダゴラ都市についたらすぐに働き始めなければ食う物すら買えない状況に成り兼ねない出費だった。それでもこの腕の中にいる命を守るために捻出した大事な大事な金だったのだ。

奥歯が砕けるのではと思う程に噛み締め、暴れだしそうになる自分を抑え続ける。


「車に戻ろう。ワーカーオフィスに行けば話位聞いてくれるだろ」

シドはそう言いながら腰を上げる。

「・・・・・・無理だ。第2防壁外には出張所しかない。あそこは唯ワーカー登録を行うか仕事の清算を行うかしか行わない。この様な場合に対処してくれる様な場所ではない」

「ならその第2防壁を超えればいいじゃないか。俺達ダゴラ都市の防衛隊から通行コードを貰ったんだ。これがあれば防壁は超えられるはずだ」

シドは防衛隊から発行された通行コードをダーマに見せ、車に戻るよう説得する。

「わかった」



一度車に戻り、大通りにから第2防壁の通行門を目指す。

予定よりだいぶ時間が掛かったが都市内での拠点も手に入るだろう。

ミナギ都市のワーカーオフィスの状況にも興味があるシドは胸を躍らせた。

「どんな感じなんだろうな?美味いモンあるかな?」

「どうだろうね?東に行くほど食材の質は下がるって言ってなかった?」

「飯屋なら大丈夫だろう?何気にちゃんとした飲食店は初めてだからな!」

険しい表情をしたダーマを他所に、シドは今日の夕食の事で頭一杯の様だ。


しばらく通路を走り、漸く門が見えてくる。

「あ、あれじゃない?」

「おお~。腹減ったぞ~、オフィスよりまずは飯だな!!」

シドの期待感はさらに上昇していく。





だが、そう話はうまく進まなかったのであった。


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