AIとの交渉担当は?
書きダメが尽きてしまいました。
これからは書けた分だけ投稿していきます。
よろしくお願いします
ナカザワ視点
巨大ワニが出現した大穴の内部に侵入した2人から連絡が入る。
その内容は、穴は遺跡に繋がっており、そこには大量の遺物と旧文明のAIが生きている事を知らされた。
2人はそのAIと交渉(物理的)を行い、こちらの責任者と交渉の場を設けることに成功したとの内容だった。
ナカザワは眉間を押さえ考え込む。
未だかつて、旧文明のAIと交渉が可能な状況になった事など聞いた事が無い。
少なくとも喜多野マテリアルの勢力圏では無かったはずだ。
これを報告すれば上に下にの大騒動になる事は間違いない。どう考えても喜多野マテリアル自身が乗り出してくる案件であった。
ミナギ方面防衛拠点どころかダゴラ都市やミナギ都市の許容範囲を大きく超えている。
この案件は速やかに喜多野マテリアルへ届けなければならない。
直ぐにラダビノット司令へ説明する為、直通通信を開く。
『進展はあったか?』
通信は直ぐに繋がり、ラダビノット氏は状況を聞いてきた。
「はい、緊急かつ重大な案件です。スラムバレットの2人が穴の中へ突入し、未知の遺跡にたどり着きました。そして、その中で稼働状態の遺跡と大量の遺物、それと・・・・・・意思疎通可能な旧文明のAIと遭遇。こちら側との交渉の場を設けることに成功したというのです」
『な!!!』
ラダビノット氏は予想以上の成果に驚愕で返してくる。
「そのAIは交渉可能な最上位権限を持つ者との会談を要求しているとのことです」
『待て待て!!!旧文明のAIと交渉?!そんな事が本当に実現したのか?!』
「はい、2人の報告に間違いが無ければ」
『ッ!!!!・・・・全力でのその場の確保を行え。この件は喜多野マテリアルに報告する・・・・・・いや、あの担当を通した方が話が早いな。追って連絡する。追加の人員も直ぐに送る。なんとしてもその穴の確保を継続するように』
「承知しました」
ナカザワは通信を切り、長い息を吐き今受けた指令をゾシアのメンバーにも伝える為、車の外に出る。
「なにか連絡がありましたか?」
外に出ると、そこにはすでにマルオがおり、ナカザワに質問を投げかけてくる。
「ああ、スラムバレットが未知の遺跡を発見した」
「おお!それはそれは・・・・それで?追加の人員と今後の方針は?」
流石はダゴラ都市トップのワーカーギルドの隊長を任される人物だ。今後の対応も熟知している様だった。
「・・・追加の人員はすぐに派遣されるだろう。本案件は喜多野マテリアルに移行することになる。そのつもりで任務を遂行してくれ」
ナカザワがそういうと、マルオは驚きの表情を見せる。
「喜多野マテリアル?!・・・・・・・それほど重要な遺跡ということですか・・・?」
「そうだ。部門長・・・いや・・・取締役が動く可能性も十分考えられる」
「・・・・・・それほどですか。わかりました。警戒レベルの引き上げを行います」
「よろしくお願いする」
マルオも喜多野マテリアルが直接動く、それも部門長以上の格が動く可能性があると聞き、想像以上の事態であることを正しく認識した。
(・・・・・キクチさんからある程度の覚悟が必要だと連絡を受けたが‥‥こういう事だったのか)
マルオはこの任務を受ける直前にワーカーオフィスのキクチから忠告を受けたことを思い出した。
キクチ視点(少し時間が戻る)
久しぶりに家に帰り、明日は休みだ。
溜まりに溜まった疲れを癒すため、そこそこの品質のベッドに潜り込み至福の睡眠をとるキクチ。
ここ最近では最長の7時間という睡眠から目覚め、メッセージの着信を知らせる光を放つ端末手に取る。
そこにはミナギ都市に向かったはずのスラムバレットの活動報告が記されていた。
街道付近のモンスターを駆除任務に従事し、巨大なワニ型モンスターを討伐した報告が綴られたメッセージを一読すると、キクチは端末をテーブルに戻し2度寝を決め込もうと布団を頭からかぶる。
(今日は休みだ!!!俺は何も見なかった!!!!)
メッセージの内容を無視し、キクチは久しぶりの休日を満喫する為、2度寝を決め込む。
昼前に目を覚まし、もう一度端末を見ると、昨日シド達が討伐した巨大ワニの巣と思わしき穴の調査を行っている報告があり、その補佐にゾシアのマルオがチームを率いてサポートに着くことになっていた。
「・・・・・一応忠告しとくか」
キクチは端末からマルオのワーカーコードに連絡を取り、今調査に出ているスラムバレットの事を教える。
戦闘能力は非常に高いという情報はゾシアも知っているだろう。しかし、あの2人のトラブル遭遇率は非常に高い。今回も何か起こるのでは無いか?とマルオにメッセージで忠告を送っておく。
(まあ・・・・巨大ワニの襲撃なんてトラブルがあった後だ・・・・そうそう大事件に発展したりしない・・・と思うが・・・最悪は想定しておく必要があるか・・・)
キクチはその穴の中に大量のモンスターが発生している事を想定し、他の高ランクワーカー達にも根回しを行っておく。
万が一にキクチの予想通り、スタンピード級の問題が発生すればすぐに行動を起こせるように。
昼食を済ませ、午後からものんびり過ごそうと思っていたが、何もせずにいるとソワソワして仕方がない。
電子書籍を読んだりしていても仕事の事がチラついて集中できなかった。
(本格的にワーカーホリックになってしまっているな・・・)
読んでいた電子書籍を閉じ、苦笑いするキクチ。
明日の仕事の準備でも終わらせておくかと仕事用の端末に目を向けると、一通のメッセージが届いた。
軽く息を吐き、内容を確認する為にメッセージを開く。
送り主はミナギ方面防衛拠点 司令官 ラダビノットからのメッセージであり、内容は巨大ワニの巣と思われる穴の調査を行っていたスラムバレットの調査結果と成果に関する内容だった。
キクチはメッセージの内容を読み進めていく。
核心に迫って来ると段々と目を見開き、ワナワナと震え始める。
「・・・・・・・また新たな遺跡?・・・・大量の遺物を発見・・・・・・・・AI?・・・意思疎通可能???・・・現代文明との交渉????最上位権限を持つ者を要求・・・・・?」
キクチは読み進めていく毎に困惑を深めていく。
この話が本当なら都市レベルでは無く、管理企業である喜多野マテリアルが出張るレベルの話だ。ワーカーオフィスの一職員が立ち入る話ではない。
スタンピードどころの話ではない。キクチの予想の遥か上を高速でぶっ飛んでいくスラムバレットの2人の顔を思い出しながら、メッセージの続きを読んでいく。
「・・・遺跡の確保を行うための人員か・・・・これは直ぐに手配できるだろう」
スタンピードが起こった時用に根回ししておいてよかったとキクチは考える。直ぐに声を掛けていたワーカー達に連絡を取り、ミナギ方面防衛拠点へと向かうよう依頼を出す。
入口に設置する簡易防壁の建設も企業に依頼を出し、一通りの手配は終わった。
後は旧文明のAIと交渉を行う人物だが、これは統括に任せるしかないだろう。キクチが処理するレベルを遥かに超えている。
「・・・・・休暇は終わりだな。オフィスに行くとするか・・・」
キクチは椅子から立ち上がり、オフィスに行く準備をしようとすると、連絡用の情報端末が着信を知らせる。
「・・・・・・」
情報端末に目を向けると、そこにはシドの名前が表示されていた。
「・・・・・・・・・・・」
しばらく考えるが、この通信に出ないという選択肢は無い。放置すると特大の爆弾となって帰って来る予感をヒシヒシと感じる。
「はい」
『お、繋がった!数日ぶりだなキクチ』
数日も何も、3日前に人が考え事をしている間に居なくなっていた、シドのいつも通りの声が端末から聞こえてくる。
「・・・・で?何の用だ?」
特大の面倒事の確信が胸によぎる。
『報告?連絡かな?今さ、武蔵野皇国って国が作ったシェルター?って遺跡にいるんだよ。で、そこで生きてるAIと交渉出来る状況になったから、その連絡だな』
相変わらず軽い。武蔵野皇国?シェルター?メッセージにすら書かれていなかった情報が追加で飛び込んでくる。
「交渉の話はついさっきメッセージで知らされた。そのAIとの交渉役などはまだ何も決まってない。これから統括に報告して喜多野マテリアルとコンタクトを取ってもらうつもりだ」
『・・・ああ~・・・・その件なんだけどさ・・・・』
いつもはこちらの事も考えず軽いノリで話すシドには珍しく言いよどむ。
「・・・なんだ?」
『いやな、今の時代の状況とかワーカーオフィスとか管理企業の喜多野マテリアルの事とかを話しててさ』
「それはそのAIとか?」
『そうそう。それで、俺達の所属組織の上司にあたる人物って誰だ?って聞かれて・・・』
「俺の事を話した・・・と?」
キクチは更なる嫌な予感に声が震えてくる。
『ああ、うん。それでな?そのAIにさ、交渉できる人物に心当たりがあるか?とも聞かれて、おっちゃんの事を話したんだけど・・・・・』
(ゴンダバヤシ様の事まで言ったのかよ!!!!)
「お前さ、なんでそう考え無しに話を進めるの?」
キクチは動揺と怒りでさらに声が震える。
『ええっと・・・・その・・・・・・・なんていうか。・・・・AIがおっちゃんとキクチに来て欲しいって・・・・・・・』
シドもマズい事をしたのだという事に気付いたのだろう。段々しどろもどろになって来る。
「だからまず報告しろっていってんだろーーが!!報・連・相!!!大事だって言ってるだろ!!!」
『いや、だから報告してるじゃん・・・』
「そう言う事を決める前の報告と相談だろうが!!!!こっちの一存で喜多野マテリアルの部門長を動かせるわけねーーーだろ!!!!」
『・・・・・・ええっと~・・・・』
「コッチで決定したらまた連絡するからそのAIにはそう伝えろ!!!わかったな!!!」
『・・・はい『通信中に失礼する』』
シドを怒鳴りつけ、また連絡すると言うと知らない音声が割り込んできた。
「!!!」
『私は武蔵野皇国 避難シェルターの管理AIだ。お前がシド、ライトの上司と言う事で良いか?』
通信をジャックされたらしい。流石は旧文明の遺産といった所だろう。
「・・・・上司というのは語弊がある。私はその2人の担当者でしかない。上司部下の間柄という訳ではない」
『理解した。喜多野マテリアルという企業がこの辺りの土地を管理し、ワーカーオフィスが探索や調査の実務を行っていると認識しているが、相違ないか?』
「その認識で間違い無いが・・・」
『ならば実務担当組織とも話し合う必要があると判断する。喜多野マテリアルとは取引の条件を。ワーカーオフィスとは実務に関する取り決めを決める必要があると考えるが、如何か?』
「・・・・・・確かにその必要はある。だが、事は一職員が決められる事ではない。一度こちらで人員の調整を行わせて欲しい」
『なるほど、承知した。この2人には会談が行われるまでの間、当施設に滞在してもらう事にする。なるべく早く会談が行われることを望む。それと、無断で施設への立ち入りはお断りさせてもらう。連絡はシド、もしくはライトを通して行ってもらいたい。他に質問はあるか?』
「委細承知した。出来るだけ早期に対応させてもらう。・・・・それと、貴方の呼称はどうしたらいい?」
『ふむ・・・セントラルと呼んでもらって構わない』
「承知した。また連絡させてもらう」
『承知した。以上だ』
武蔵野皇国 シェルター管理AI セントラルとの通信が切れ、キクチは急いで支度を整えワーカーオフィスへと向かった。
(なんで毎度毎度こんなことになるんだよーーーー!!!!!)
心の中で叫び声を上げながら、何としてもこの件を統括に処理してもらわねばと頭を回転させながらオフィスへの道を急ぐのだった。
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