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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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AIの課す試練?後編

壁に叩きつけられ、気絶しているのか力無く落下するシド。

ライトはその様子を情報収集機で感知しながらも、シドの救護に当たる事は出来なかった。

(クソ!!なんて硬さだ!!)

計6丁の銃で撃ちまくっても表面を削る程度のダメージしか与えることが出来ない。

(せめてNLXの徹甲弾は持ってくるべきだった・・・)

ライトはここまでの事態に発展するとは思っておらず、嵩張る徹甲弾のカートリッジは持ってこなかった。弾丸を一点に集中させればあの硬い装甲も貫くことが出来るだろうが、巨体に見合わない速度で動き回る為弾丸を集中させることが出来ない。

その上、胸部のガトリングやミサイル、キャノン砲の対処もしなければならない。


ライトはバイクで縦横無尽に駆け回り、オートマタのターゲットがシドに向かわない様にするのが精一杯だった。

<シドさん!>

<ライト、シドの息はあります。もう少し時間を稼いでください>

<イデア!その場所からシドさんを移動させられない?!>

<DMDが破損し私が動かすことが出来ません。今シドの体を動かす事も推奨できません。治療が終わるまで不可能です>

ライトは顔を顰め、オートマタを出来るだけシドから離そうと試みる。

<何とかやってみる。いよいよとなったら専用弾を撃つからね>

<はい、私の方でシールドを発生させます>

その言葉を聞き、ライトはオートマタを誘う様に行動を開始した。


雨の様に飛んで来るガトリング弾を掻い潜り、飛んで来るミサイルを迎撃する。

キャノン砲が発射される気配を感知すれば、2門のガトリングで砲身を攻撃。砲弾が打ち出されてすぐに誘爆させ、オートマタのエネルギーシールドを減衰させる。

その隙に全ての銃器でオートマタを狙い、少しずつダメージを与えていった。

しかし、このまま戦っていてもオートマタが壊れる前にライトが弾薬切れに追い込まれるだろう。いくら拡張弾倉を積んでいるとはいえ、無限に撃てるわけでは無い。

(何とか動きだけでも止めないと・・・)

ライトはその方法を考えながら柱の裏側へ隠れキャノン砲の砲弾を防いだ。

(流石旧文明製の柱だね。頑丈だよ、ホント・・・・・・ん?これ使えないかな?)

ライトはオートマタとの距離を一気に詰め、近距離での戦闘に切り替える。

近距離兵器が届きそうな距離からガトリングで撃ち、相手の遠距離兵器の射線に入らない様、目の前をウロチョロすると左手の回転兵器が動き始める。

(来るか?!)

ライトはバイクの方向を変え、距離を取る様に全力でバイクを走らせる。

するとオートマタはその両足で地面を蹴ると同時に、背後のカバーに仕舞われていたスラスターを展開し点火、猛烈な勢いでライト目掛けて突撃してくる。

「グゥ!!」

ライトはバイクを操り、間一髪で突進攻撃を避ける。

オートマタはライトに避けられたと感知するや否や、右手のチェーンソーを横凪に振るった。

(掛かった!!!)

ライトはその動きを見るとバイクを上方へ向けオートマタを頭部の上まで一気に駆け上がる。右手のチェーンソーはライトに当たることなく、その背後にあった柱へ深々と切り込んだ。

凄まじい異音が鳴り響き、柱の半分程まで食い込んだチェーンソーだが、旧文明の柱を切り倒す力は無かったらしく、途中で止まってしまう。

ライトはその隙を狙い、シドが傷付けた頭部めがけてガトリングと複合銃を集中的に発射。

オートマタのエネルギーシールドを貫き、装甲を凹ませ内部を傷つける。

「食らえ!!!」

ライトはトドメとばかりにハンター5専用弾をオートマタへ撃ち込んだ。専用弾を撃ち込まれた衝撃でオートマタは大きく体勢を崩し倒れそうになる。

そして、頭部にめり込んだ専用弾の高性能爆薬が炸裂し、大爆発を起こす。

ライトはバイクを操り、爆発範囲から逃れながらエネルギーシールドを最大出力で発生させ爆炎と衝撃波から身を守った。

青白い炎が辺りを包み込み、あの美しかったロビー?が焼き払われていく。


ライトの乗ったバイクは爆風に煽られ、制御不能に陥りそうになるが墜落する寸前になんとか制御を取り戻す。


専用弾は相変わらずの威力だが、これでもまだ安心はできない。キョウグチの戦闘用オートマタもハンター5専用弾の直撃に耐えたのだ。あの機体が耐えられないとは思えない。

背中のミサイルが誘爆しているのだろうか?複数の爆発音も聞こえてくる。

情報収集機から送られてくるデータは、ノイズが走っているがまだオートマタが立っている事が分かる。


<ライト!!もう一発だ!!>

「!」

ライトはもう片方のハンター5をオートマタに向けると、それと同時にオートマタが2回銃撃を受けた音が響き、視界に移るデータも体勢を崩す。

そして、イデアが送って来たのだろう。オートマタの左胸にターゲットマークが表示され、それ目掛けてハンター5専用弾を撃ち込んだ。

ターゲットマークに正確に命中した専用弾は、オートマタの内部に侵入し内部で爆発。

再度爆炎がまき散らされる。

その光景を目尻に、ライトは取り合えずシドと合流しようとシドの反応にむけてバイクを走らせた。



「シドさん!」


ライトはバイクを走らせシドの元まで駆けつける。

シドはPST-バレルを手に立っており、身に着けた防護服はひび割れが入り防護服として機能していないのは明らかだった。

「おう、ライト。フォロー助かったぞ。あれが無かったら死んでたな」

そういいながらも、あっけらかんと答えるシド。

「体の方は?」

「まあ、なんとか立てるぞ」

<未だ治療中です。万全とは言えません>

「まあ、あんな威力の爆発を至近距離で受けたからな。死んでないだけ有難いよ」

「・・・・動ける?」

「まあ、なんとかな。悪いが後ろに乗せてくれ」

シドはそう言うと、ライトの後ろに乗り込んだ。

「・・・・倒せたかな?」

「倒せた・・・・と言いたいけどな。あれでもまだ動く可能性はありそうだ」

<エネルギー反応は消滅していません。警戒は怠らない様にしてください>

シドはPST-バレルに専用弾を装填し、左手に刀を握る。ライトは冷却が終わったハンター5に専用弾を装填し、複合銃とガトリングの照準をオートマタへ向けたまま、オートマタの方へゆっくりバイクを走らせる。


次第に煙が晴れ、オートマタの姿が確認できるようになってきた。


煙の中から現れたオートマタは上半身の左側は吹き飛んでおり、抉れた部分は融解している。頭部も損傷が激しく、8つあったカメラアイも今では1つしか機能していない。

制御系も損傷したのだろう。右腕や脚部を動かそうとしているのだろうが、バランスが崩れフラフラしている。

「・・・・想像はしてたけど、あれでも動けるのが信じられねーな」

「そうだね。あの専用弾、装甲車くらいなら一発で吹き飛ぶんだけどな・・・」

<流石は武蔵野皇国製のオートマタですね>

まだ与えられた指令を行おうとしているのだろうか。真面に動かない体を動かし、まだ戦おうとしているオートマタに止めを刺す為、シドは刀を握る手に力を籠める。

すると、急にオートマタのカメラアイの光が消え、力が抜けたように座り込んだ。

「「?」」

「そこまでで十分だ。君たちの実力は確認させて貰った」

すると、管理AIのホログラムが現れそう言ってくる。

「・・・そうか。で?どうだった?」

「及第点といった所だろう。この施設に常備している警備マシンが破壊されたのだ。君たち以上のワーカーとやらが大量に現れればこちらも無視できない損害を被ることが確認できた」

管理AIはそういい、こちら側と前向きな話し合いを行う事を約束してくれた。

<あれで警備レベルなのか?>

<旧文明・・どうなってるの?>

<あれは武蔵野皇国の基準の様です>

3人は皇国人頭おかしいと認識を一致させたところで、管理AIは話を続ける。

「そちらとの話し合いの場はどうやって設けることになる?」

「ああ~・・・とりあえず責任者に報告して、上位の役職の人と話してもらえると助かる」

「承知した。出来るだけ決定権のある人物がいい。その方が話が速いからな」

管理AIからそう言われ、シドとライトは少し頭を悩ませる。

このレベルの話を持って行く相手となると心当たりは喜多野マテリアル 部門長 ゴンダバヤシしかいない。しかし、彼はすでにダゴラ都市を離れており、彼女?と会談を行うのは困難だろう。

「う~ん、一応本部に連絡するけどちょっと時間が掛かると思う。大丈夫か?」

「問題ない。話が決着するまでに侵入者がいた場合は排除させてもらうがな」

「それはそうだな。直ぐに連絡を取るから待っててくれ」

シドはそういい、ライトと外部と連絡を取れる位置まで戻ろうとすると、

「外部との連絡ラインは施設の近くに撃ち込まれている中継器を通すのだろう?こちらで通信を通せば問題なく連絡が可能になるはずだ」

管理AIはそういうと、直ぐに外部との通信環境を整えてしまう。

ライトはナカザワとの通信が繋がる事を確認すると、通信を飛ばし、今起きている事の説明と今後管理AIとの話し合いに向けた都市側の決定を急いでほしい事を伝えた。


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