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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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追加人員

ライトが運転する車は、昨日巨大ワニが現れたポイント付近に到着し、ナカザワが広範囲索敵機を起動する。

索敵範囲が10kmを超える装置が作動し、付近に存在するモンスターの位置を特定していった。

その情報はライトにも送られており、ライトからシドにも送られこの場の全員で共有していた。


「・・・・・・直径4km付近にはモンスターの影は無し。このまま巨大ワニが開けた穴へと向かってくれ」

「わかりました」

ライトはナカザワの指示通りに車を走らせ、大穴の開いている場所まで向かって行く。

暫く進んでいると、ELシューター01の破壊跡が目に入って来た。

広範囲に渡りお椀型に窪んでおり、高温で焼かれガラス化している。

そこから少しズレた場所に、件の大穴が開いていた。周囲にモンスターの気配は無く、あれほど居たモンスターの死骸も見当たらない。全てあのエネルギー界に引きずり込まれて消滅してしまったのだろう。


「・・・・・・一つお願いがあるんだが・・・」

ナカザワがその惨状を目にし、シドとライトに言う。

「あの兵器は本当に危ない時だけに使って貰えないか?」

「・・・はい、それは勿論です」

近距離でELシューター01の爪痕を見た2人もナカザワの言葉に同意する。

クレーターの横を通り過ぎ、大穴の近くへ寄っていく。

「この辺りで止めてくれ。万が一崩落でもされてはかなわん」

「はい、わかりました」

「俺は一応バイクで外にいるよ。もし何か出てきても対応出来るようにな」

「わかった。お願いね」

シドはバイクに跨り外に出ると、大穴の方を見る。

(改めて見るとデッカイ穴だな・・・・)

あの巨体が通って来たのだから当然だが、直径で40mはあるのでは?と思うほどの穴が開いていた。

<前線にいったらあのレベルのモンスターがゴロゴロいるのかな?>

<それはわかりません。しかし、あの兵器でも一撃で仕留められないモンスターが居ると言うのは確実でしょう>

<そうだよな・・・>

前線に行く頃には自分達の装備はどうなっているのだろうか?と想像するシド。

そのシドの上を数機のドローンが飛び越えていった。

<ナカザワが放ったドローンの様ですね>

<そうだな>

ドローンは大穴の中に飛び込み見えなくなる。その姿を見送ったシドは、索敵機から送られてくる情報と、自分の感覚器で辺りの警戒を始める。




「・・・・・かなり深いな。これをたった十数秒で掘ったとは考えられん・・」

ナカザワがドローンを飛ばし穴の中を調査し始めてから15分程が経過している。穴は50mほどは真下へ続いていたが、途中からは斜めになっていき、最終的には横穴へと変わっていた。

ドローンは穴の中を限界距離まで飛んでみたが、最終地点にまでたどり着かなかった。これ以上はドローンの操作電波が届かなくなり、調査が不可能だ。

ドローンを自動で帰還させ、この結果を本部へ送信する。


「ナカザワさん。あれは巨大ワニ単体の巣だと思います?それとも他の地下遺跡に繋がってると思います?」

ライトもドローンから送られてくる映像を見ており、ナカザワの率直な意見が聞きたかった。

「わからん。巨大ワニの巣だった場合、巣の持ち主は討伐されているから埋めて終わりだ。しかし、他の場所へ通じているなら調査は必須だろう」

「でも、大きいと言っても穴です。中に入ってあの巨大ワニクラスのモンスターが出てきたら太刀打ちできませんよ?」

ナカザワとしてもそれが問題だった。

入口が斜めになっているなら車両でも通行可能だが、この穴の入り口は垂直になっている。航空機で中に入る事も難しい。直線での動きは早くとも旋回や停止などの融通が利きにくく、この様な閉鎖空間に侵入するのは不向きだ。

この場で可能性があるのは。

「シドさんのバイク・・・かな」

ライトの発言通り、シドのバイクならこの穴は十分な広さと言える。どういう技術で走っているのかナカザワには分からないが、空中を疾走できる性能をもったバイクほど、この穴の調査に適した乗り物は考えられなかった。

「とは言え、彼一人で突入させる訳には行くまい。だが、君も一緒に行けば・・・」

「この車は無防備になりますし、ナカザワさんは一人になってしまいます。それはあまりにも危険ですよね」

ライトと状況認識を統一し、ナカザワは少し悩む。

今のまま帰っては、この辺りにモンスターが屯していない、くらいしかわからない。

もう少し探りたいのが本音だった。

「・・・・・本部に腕の立つ・・・いや、今はこの場所を確保し続けられるワーカーは居ないか・・・・」

「一応本部に問い合わせてみては?ボク達の代わりが出来そうなワーカーが居ないのならこのまま帰還でいいと思いますけど」

「そうだな。一度本部に問い合わせてみるか」

ナカザワはそう言うと、通信機を取り出し本部と連絡を取り始める。


<シドさん、聞いてた?>

ライトは外にいるシドに確認を取る。

<ああ、それで問題ないと思うぞ。でも、この中に入るなら俺たちの装備だけで大丈夫か?大型種はなんとか逃げ切れても小型がウヨウヨでてきたら面倒臭いことになるぞ?>

<それならNLXを持って行くよ。これならまだシールドで保持出来るし>

<そうなのか?>

<うん、スペック的には問題ないよ。拡張弾倉もバイクに取り付けられるアタッチメント付けてもらってるし。バイクからエネルギーは供給して貰う必要があるけど>

<なるほどな。わかった。決まったらまた教えてくれ>


シドとライトの話は決まり、後は拠点本部の決定待ちとなる。

ナカザワの話が纏まるのを待っていると、ナカザワが通信を切りライトに言う。

「話は決まった。このまま調査続行だ。今日、ダゴラ都市から到着したワーカーがこちらに向かうことになった」

「そうなんですね。どんなチームが来るんですか?」

「ギルド ゾシアのワーカー達だ。ランク40台が7人。この場を保持し続けるのなら十分なメンバーだろう」

「わかりました。ボク達が離れている間の車の制御はナカザワさんにお任せします。それと、車の武装を一部取り外して持って行きますけど、それでも構いませんか?」

「ああ、分かった。緊急時の車両制御委託契約の手続きを行う。それが終われば準備に入ってくれ」

「わかりました」


車両制御委託契約の内容は簡単に言えば4つの項目で構成されていた。

・緊急時は指定された職員が車両の運転を行う

・車両の武装の使用を許可する

・使用された弾薬は都市が補填する

・車両の破損・全損した場合は都市が保証を行う

この他にも細かい内容はあるが、纏めるとこんなところだ。

シド達が地下に潜っている間、モンスターの襲撃などで地上の確保が難しくなった場合は、ナカザワとワーカーチームは撤退する。

2人は自力で脱出するか、後日のモンスター討伐作戦まで生き延びてもらう事になる。

「よし、これでライセンスを翳して認証したら終わりだ。直ぐに突入準備にかかってくれ」

「わかりました」


ライトは契約を結ぶと、車の上部に上りNLXを取り外す作業に入る。エネルギーシールドで銃を保持し、説明を受けた方法で銃を取り外す。

車庫の中に入り、拡張弾倉を2つ抱え、シドが乗るバイクの元へと向かった。

「じゃーこれを積むね。ガトリングの邪魔にはならないから安心していいよ」

「・・・・ああ、わかった。・・・でもさ、いつの間にこんなパーツ手に入れてたんだ?」

「え?そりゃー改造の時だよ。シブサワさんから要らないか?って言われたのさ」

「・・・・そうなのか?」

<シドはELシューター01に夢中で気づいていませんでしたね>

ライトはバイクに拡張弾倉を取り付け、NLXと接続し、バイクのジェネレーターからもエネルギーコードを伸ばし自分のシールドスーツに接続する。こうすればエネルギーシールドの使用限界を伸ばすことが出来、バイクに乗っている限り経戦時間を飛躍的に伸ばすことが可能だった。

「これで追加のワーカー達が着くのを待つだけだね」



1時間後、追加のワーカー達の車が到着した。

荒野車2台に乗ってきており、車にはゾシアのマークが描かれている。

(・・・マークか・・・・チームのマーク・・・・カッコいいな!)

シドは天覇やゾシアなど、ギルド等が己の所属を示すマークに興味を持つ。

(俺らのマークにするなら・・<シド。良からぬことを考えていませんか?>)

シドの思考が任務から離れようとすると、イデアがそれを察知し突っ込んでくる。

<いや、別に・・・>

<何を考えていたかは分かりませんが、今は探索に集中するべきです>

<・・・はい>

シドがイデアから注意を受けていると、ナカザワがゾシアのメンバーに話しかける。

「増援感謝する。そちらのリーダーは?」

「俺です。チームリーダーを任されているマルオといいます。このチームは主に護衛任務を専門にしています。よろしくお願いします」

重厚なパワードスーツの頭部が開き、収納されると、雰囲気の柔らかい男が顔を出した。

マルオと名乗った男は、メンバーのIDをナカザワに送信し任務の詳しい話を聞いてくる。

「今からスラムバレットの2人がモンスターが這い出てきた大穴の調査に向かう。君たちは2人が帰還するか、緊急事態が発生するまでこの場の確保をお願いしたい。確保が難しい状況と判断されれば、私を護衛し防衛拠点まで戻ってもらう」

「契約通りの内容だな。その場合、チーム スラムバレットはどうなる?」

「この2人には自力で生還してもらうか、モンスター討伐作戦が開始されるまで生き延びて貰うしかないな」

「・・・・なるほど。2人との連絡方法は?」

「2人には通信中継器をいくつか渡してある。3km毎に壁か天井に撃ち込んで行けば問題なく連絡が取れるはずだ」

「ふむ、2人はそれで問題は無いか?」

マルオはシドとライトに確認を取って来る。

「はい、問題ありません」

「わかった。では気を付けて行ってくれ。良き探索を」

「ありがとうございます」


マルオからも承諾を得られ、シドとライトはバイクに跨り大穴に向けて走り出した。


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