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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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穴の調査 開始

翌日、シドとライトは弾薬の補給を済ませ、昨日の巨大ワニが出現したポイントに向かっていた。


2人は今日の予定をどうするか考えていると、司令部の方から昨日の巨大ワニが開けた穴の周辺調査を依頼されたのだ。

万が一、穴からモンスターが湧き出ていたら、その種類やサイズ、規模等を大まかでもいいから調べて来て欲しいと依頼を出された。モンスターが居なかった場合は、穴の中にドローンを飛ばし、内部がどうなっているのかを調べて欲しいと言われる。

報酬は1億と高額であったが、またあの巨大ワニと戦闘する事を考えれば安い部類だろうと考えられる。今回の調査にはワーカー達の同行は無く、シド達の車に防衛隊の職員を一人乗せ、その者が調査の記録を取り、2人は戦闘もしくは撤退に全力を尽くす様に依頼される。

何故他のワーカー達が同行しないのかと言うと、単純に足手まといだからだ。

大勢で車をはしらせると、それだけでモンスターを刺激し大量の群れに襲われる危険が上がるし、巨大ワニクラスのモンスターが出現した場合は逃げ切る事も難しくなる。

しかし、この2人ならば戦闘も撤退も十分に熟せると評価され指名されたと言う訳だ。


そう言う訳で、昨日指揮車に乗っていた職員がシド達に同行し、T6に調査機材を積み込んで出発。

今荒野の中を突き進んでいると言う訳である。


「そういえば、ナカザワさん。あの巨大ワニって回収されたんですか?」

出発前に合流し、お互いに自己紹介を行った職員にライトが質問した。

「いや、モンスターの数も異例だったのでな、スカベンジャー達には依頼していない。今回の調査である程度の安全性が確認されれば回収依頼がかかるだろう・・・・・まあ、死骸が残っていればだがな」

昨日の駆除任務では、かなりの数のモンスターが襲い掛かって来た。あれが普通なのかと思っていたが、かなり多かったらしい。

その割には、平然と任務を熟していたように思う。その事を質問すると、

「数は多かったが余裕をもって撃退出来ていると判断した。お前たちの活躍を当て込んでだが、事実あの巨大ワニが出てくるまでは問題なく駆除で来ていただろう?」

そう言われるとそうかと考える。

「死骸が残ってれば・・・ね。他のモンスターに食われたりするんですか?あまりほっとくと腐りそうですけど」

「生物系のモンスターは死んでも中々腐ったりしない。本体が死んでも体内のナノマシンが生きており、状態を維持しようとするみたいだな。お前達も遺跡の中で腐敗臭などは感じた事はないだろう?」

たしかに、遺跡の中で腐敗臭がしたことは無い。ワーカーの死体も腐る前にモンスターに食われてしまうし、モンスターの死体も腐りにくい為の様だ。

この前の中央崇拝者のアジトを壊滅させた時に、スカベンジャー達がせっせと死体を運んでいたのは死体の腐敗が始まる前に綺麗にしたかった事もあるのだろう。腐敗臭が立ち込める中での施設の調査など誰もが嫌に決まっている。

「あのワニに関しては食われるというより、あの攻撃で消滅しているんじゃないかと思うが?バラバラになった後、あの球体の中に消えていっただろう?」

「・・・・そう言えばそうですね」

「そこの所も出来れば調査したい。体の一部でも回収できれば解析が行われ、どのモンスターから進化したのかを確定することも出来るかもしれん」

「なるほど、わかりました・・・・・あ、シドさんモンスターだよ」

「お?何が出てきた?」

「サンドシャークみたい。全部で4匹かな」

サンドシャークとは半機械の生物系モンスターで、硬い地面を発生させたエネルギーシールドで砂状に変化させながら泳ぐモンスターだ。

胴体の部分に組み込まれたシールド発生器を破壊すれば、文字道理、陸の上の魚状態になるのだが、岩盤を瞬時に分解して砂状にしてしまう強力なエネルギーシールドを身にまとっている為、通常の弾丸は効果が無い。

爆圧で吹き飛ばすか、レーザーの様なエネルギーガンで対処するのが普通だ。

ナカザワはT6に積んであるミサイルで迎撃するだろうと思っていたが、シドがバイクに乗って飛び出していった。

「おい、あの武装で大丈夫なのか?あのバイクには実弾兵器しか積んでいないだろう?」

「大丈夫ですよ」

ライトはそう答え、他のモンスターが寄ってこないかを監視し続ける。

ナカザワはシドがどうやってサンドシャークを討伐するのかを興味深げに観察し始める。


<モンスターは地下だな。どうやっておびき出すかね?>

シドもサンドシャークが何処にいるのかは感知している。しかし、相手は地面の下を泳ぐため地上から攻撃するのは難しい。ヤツ等を討伐するには地上に引き摺り出す必要があった。

<銃撃すれば簡単に釣れると思います>

<そうか・・・取りあえずやってみるか>

イデアの提案でシドは両脇のガトリングを作動させ、地下のサンドシャークを狙って撃ち放った。

4匹中2匹を狙って放たれた複数の特殊徹甲弾は、地面を穿り返しサンドシャークに到達。そのほとんどはサンドシャークが発生させたエネルギーシールドに阻まれ粉砕されてしまったが、少数がシールドを貫通し命中した。

安全と思っていた地下で銃撃を受け、サンドシャークは痛みに身をよじる。

<当たったぞ?実弾は意味ないんじゃなかったか?>

<全てを完全に防ぎきる訳でない様です。それほどのシールドを発生させているのならどんどん地下に埋まっていく事になりますから。恐らく強力なシールドは地上に飛び上がった際に発生させるのではと予測します>

<なるほど>

シドがイデアと話していると、他の2匹が飛び上がり大口を開けてシドに食らいつこうとして来る。

シドはバイクを操作し、サンドシャークの軌道からズレると腰に取り付けている双刀を抜き放つ。自身のエネルギーシールドで刀身を包み込み、サンドシャークを避け様に切り裂いた。

両手で一振りずつ振り抜き、胴体部分のエネルギー発生装置を破壊。内部の肉まで深々と切り裂くことに成功する。

シールドを張ることが出来なくなったサンドシャークは飛び出した勢いのまま地面に激突し、シドに切り裂かれた部分から真っ二つに千切れ飛ぶ。

<おお~、初めて斬ったけどスゲー切れ味だな。エネルギーシールドも機械の部分もほとんど抵抗が感じられなかったぞ>

<シドのシールドでサンドシャークのシールドを中和しました。もともとアレは防御のためのシールドではありませんからね、戦闘用オートマタのシールドよりかなり強度が低いはずです。装置も装甲と言う訳では有りませんからそこまで頑丈ではありません。あれに弾かれている様では対オートマタ用として購入した刀としては性能不足の評価をせざるを得ない所でした>

シドが刀の切れ味に感動していると、銃撃の痛みから復活した2匹も地上に向けて飛び出してくる。飛び出す場所もタイミングも感知しているシドにとっては、ただ自分から斬られに来る様なものだった。

先程と同じように避け様の攻撃で2匹のサンドシャークを切り裂き、短時間で殲滅を終わらせる。


シドはサンドシャークの絶命を確認すると、ライト達の元にバイクを向ける。

<コッチは終わった。そっちはどうだ?>

<新しく来てるね。まあ、これくらいの規模ならボクだけで十分だよ>

<なんだ、手伝おうかと思ったのに>

<NLXの方がGRKー185より弾薬費も安いし>

ライトはそういい、近づいてくるモンスターの群れに複合銃を向け弾丸を発射。複数の銃口から放たれた弾丸はそれぞれが高威力を発揮し、モンスター達を殲滅していく。

瞬く間に数を削り取られたモンスターの群れは消え失せ、ライトは複合銃を待機状態に戻すと、何事も無かったかのように車を走らせた。

シドは車に追いつき、後部のハッチまで来ると、ハッチが開き始める。

バイクを車の中に滑り込ませ、ホルダーに格納するとナビシートに腰を下ろした。

「襲撃もずっとこんな感じなら楽なんだけどな」

「そうだね。でも、穴の周辺にはモンスターが湧いてる可能性もあるんだから油断は禁物だよ」

「そうだな。あ、ナカザワさん。さっきのモンスターって討伐報酬でます?」

今回は常時討伐依頼を受けている訳ではない。シドは先程戦ったモンスター達の討伐報酬が支払われるかをナカザワに聞いてみた。

「・・・ああ、問題なく支払われる。この依頼はモンスター討伐も報酬に含まれるからな」

「そっか、良かった。弾薬費くらいにはなりそうだな」

「そうだね、GRKー185って連射力が高い分費用が嵩むよ」


(あれだけのモンスターを討伐して、心配するのは弾薬費だけか・・・・)

ナカザワはこの2人の実力は昨日の任務である程度把握している。

しかし、こうして間近で観察すると印象は大きく変わった。サンドシャークはこの辺りに稀に出没するモンスターだが、しつこく追跡してくるわけでもなく、移動スピードも速くは無い。それでいて地下に潜んで活動し、実弾兵器は効果がほとんどない為ワーカー達は戦闘では無く撤退を選択する者が多い。それなのに、シドは単独かつ短時間で4体も仕留めてしまった。

銃撃でおびき出し、近接武器で撫で切りにするなど普通のワーカーが行う行動では無かった。


ライトの方も、小規模の群れとはいえ、あの短時間で効率的に始末している。

情報取集機と遠隔操作の兵器を使用し、あのレベルの命中精度を誇るシーカーなどナカザワは見た事が無かった。


(ランク50と45か・・・これでも控えめな評価なのかもしれないな)


この事も本部に報告すべきかとナカザワは考え、端末に報告案件を書き込んでいく。


「そろそろ昨日のポイントに着きますよ」

ライトから声が掛かり、ナカザワは顔を上げて本来の任務を行うため、持ち込んだ機器を起動し始める。


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