KARASAWA A60
シドはビルから商人を紹介してもらい、遺物の換金や装備の補充が出来るようになった。
定宿からの距離はそこそこあるが、ワーカーオフィスで腹立たしい思いをするよりよっぽどマシである。
勉強にある程度の区切りをつけ、シドは遺物の回収の為遺跡に来ていた。
今日こそ遺物をしっかり換金し、新しい装備を購入するのだ。せっかく拡張性の高いバックパックも購入したのだから、いろいろカスタマイズしてみたい。
シドの中の男の子がメラメラと気炎を上げていた。
<今日こそ新装備を手に入れるぞ!>
<そうですね。新しい装備を購入し、さらに遺跡の奥へ向かうのがいいでしょう。しかし、遺物をワーカーオフィスに買い取りに出せないとなると、ランクの上昇はなかなか見込めませんね>
<ランクは正直どうでもいいよ。常時討伐依頼でもちょこちょこ上がってるんだろ?>
<はい、今シドのランクは5になっています>
<ならいいじゃん。今日もちゃんと依頼は受けてるんだし>
<早めに防壁内に拠点を構えた方が効率がいいのですが・・・>
<ワーカーオフィスには持ち込まないぞ。また難癖付けられて取られたら大損だ。あれじゃいくらオフィスに持ち込んでも金も手に入らないし、ランクも上がったりしないだろ?なら、金が確実に入る方がいい>
シドはワーカーオフィスに対して、完全にヘソを曲げていた。
それも仕方がない。第三区画出身と言うだけで犯罪者扱いされたのだ、シドが怒るのは当たり前であった。
<少しでもランクが上がる様、遭遇したモンスターは積極的に狩っていきましょう>
<よし、気合入れていきますか>
某警備会社跡地に到着し、倉庫から残りの遺物をバックパックに詰め込んでいく。
前回もここの遺物を回収したが、まだまだ残っている。
あまり頻繁に来ると、他のワーカーに感づかれる可能性が有るが今の所は大丈夫そうだ。
バックパックいっぱいに遺物を詰め、建物から出ていく。
遺跡についてから直行した為、まだ昼にもなっていない時間帯だった。
<イデアこれからどうする?目的の遺物は回収したけど、このまま帰るってのも早すぎないか?>
<そうですね、せめて15時くらいまではモンスター駆除を行った方がいいかもしれません>
<そうだな。空間把握の質も上げたいし・・・ちょっとモンスターを探してみるか・・・でもな~、若干ラクーンには飽きてきたんだよな~>
<そういう油断に繋がる思考は良くありません。今は遺物も背負っていますし、ここは遺跡です。慎重に行動するに越したことはありません>
シドはここ何日かでラクーン種を50体以上討伐している。そのせいで、ラクーン種の戦闘パターンに慣れてしまい、飽きてきていたのだ。
<慣れた頃が一番油断しやすく危険が大きいのです。気を引き締めて下さい>
<・・・そうだな。まだ、余裕かませるほど強くなって無いか。悪い、気張っていく>
<はい、お願いします>
シドは気を引き締めなおし、初めて遺跡に足を踏み入れた時の緊張感を思い出しながらモンスターを探した。
しばらく辺りを探索していると、シドは右前方から高速でこちらに飛来する物体を感知。
その場から飛び退き躱した。
それはモンスターが放った弾丸だった。シドの横の壁に当たり、壁を砕いて建物の中に消えていった。
ラクーン種が放つどの攻撃よりも高威力なのは間違いない。
シドは建物の影に隠れ、弾丸が飛んできた方向を窺う。
<イデア、今の何処から飛んできた?>
<右前方のビル群の隙間を通して射撃されていたようです。この位置からではわかりません>
シドは弾道から凡その辺りを付け、建物に隠れながらモンスターが居るであろう方向に走り出す。
弾速から、自分の空間把握であれば感知してから避けられる。それはさっきの攻撃で実証された。
あとは敵を見つけ撃破するのみ。
300m程走ると、もう一度狙撃を受ける。
今度もしっかり躱し、相手の方を注視する。シドの視界が遠視用に拡張され、遠方のビルに取り付いているモンスターを発見した。平たいボディーに4本の足が付いており。両脇に1本づつ砲身が取り付けられていた。
<居た!>
<機械系モンスターの様ですね。総じて硬い装甲を持っており、パーツの欠損程度では停止しません。正確に急所への攻撃が必要です>
<了解!>
モンスターは射線が大きく開けたことにより、シドに向けて砲撃を連射する。
シドは視界に映る射線に当たらない様、地面・壁・瓦礫を蹴り高速でモンスターとの距離を詰める。
モンスターの砲撃が、シドが一瞬前に通った場所を吹き飛ばす。瓦礫が飛び散り、地面が抉れる。
空中で身動きが取れない所を攻撃され、シドは体を捻り、無理やり射線から体をずらし躱す。
避けられない弾丸は双剣で弾き弾道を変えモンスターに向かっていく。
あと50mほどに距離が詰まると、モンスターは砲撃でシドを仕留められないと判断したのか、アームが稼働しその先にエネルギーブレードを展開、4本の足を使いビルの壁を駆け下り距離を詰めてきた。
<!!>
今まで経験した事の無い攻撃である。シドはさらに時間を圧縮し、相手の行動を注視する。
モンスターはシドの動きに合わせブレードをX字に振り下ろした。
シドはモンスターの上側に飛び上がり、すれ違い様に縦に体を捻り、両手で双剣を叩き込んだ。
シドの振るった双剣により、上部を割られたモンスターは自分で飛び出した勢いのまま地面に叩きつけられ、放電を繰り返し機能を停止させる。
<う~~ん、遠距離攻撃を持ってる相手に双剣で戦うのはやっぱ危ないな>
<そうですね。この辺りにクラブキャノンが出現する情報は無かったのですが>
<クラブキャノン?>
<このモンスターの名称です>
<クラブ・・・コイツ蟹か?>
<ブレードを鋏に見立てているのでは?>
<なるほど・・・なんか前回の大型のラクーンといい。なんなんだろうな?この辺りに出ないモンスターによく襲われるんだけど・・・>
<わかりません。ワーカーオフィスには何も情報は公開されておりません>
<そうか・・・これって持って帰った方がいいのか?>
<常時討伐依頼で討伐データは送っています。その内回収されるでしょう>
<そっか。なら放置でいいな。そろそろ昼飯にして、この辺りを回ってみようか>
<承知しました。索敵は私の方で行っておきます>
<よろしく>
シドは適当なビルに入り食事を取り、周辺のモンスターを討伐してまわった。
情報データにないモンスターの出現。この危険性について、シドは気付くことなく本日の探索を終了する。
都市に戻り、シドは背中の遺物を換金する為、東門の自由市に足を運んだ。
目的のトラックを見つけ、後部の扉を覗く。そこには先日ビルから紹介を受けた女商人、ミスカともう一人 大柄の男が居た。
「お?いらっしゃ~い、今日はどないしたん?」
「今日は遺物の買い取りをして欲しいですけど」
「了解了解~。あ、それと紹介しとくわ。コイツ、ウチの相棒で旦那のガンスや」
「どうも、シドです。よろしくお願いします」
「おう、ガンスや。よろしゅ~な。お前がミスカの言うとったシドか・・・これからも贔屓にしたってくれや」
「んじゃ、早速遺物みせてーな」
「はい。この中身全部お願いします」
シドはミスカにバックパックを渡し、中身を全部買い取ってもらうよう頼んだ。
「ほいほい・・(ズシッ)・・・・っ・・・・・了解。ちょっとまっといてや。あ、なんか装備買うんやったらガンスに相談したらええで。コイツが装備担当やから」
シドはガンスに目を向ける。
「おう、なんでも聞いてくれ。つっても予算が分からねーと何とも言えねーよな。遺物の査定が終わるまで、ウチの商品でも見といてくれ」
ガンスにそう言われ、シドはトラックの中の装備を見学する事になった。
ミスカ視点
シドからバックパックを受け取り、ミスカはその重さに驚愕する。
(これ、このバックパックいっぱいに入れてきたんか・・・この重さ・・・多分ほとんどメカ系の遺物やな・・・これは気合いれなあかんで・・・)
メカ系の遺物は高く売れる。
ミスカ達は、ワーカーから買い取った遺物を中小規模の企業に売り渡すことによって利益を得ていた。
ワーカーが持ち帰った遺物は、本来ワーカーオフィスが買い取り、競売の形を取って企業に卸される。
その場合、資本力が高い大企業などが買い取ってしまい、中小企業はその残り物しか手に入らないのだ。
どの企業も旧文明の技術が詰まったメカ系の遺物を欲しており、出品されると高額で落札される。
よって、ワーカーオフィスでも目玉商品として扱われているのだ。
しかし、この販売システムでは、大企業に資金力で劣る中小企業はほとんどメカ系の遺物を購入出来ない。
これでは大きい企業はさらに大きくなり、小さい企業は小さいままとなってしまう。
どの企業も、技術力を上げ大企業に追いつきたい、さらには追い抜きたいと思っている。
その為中小企業は、技術の塊であるメカ系の遺物を欲していた。
そう言う場合、中小企業はミスカ達の様な流れの行商人から遺物を購入するのだ。
現に、ダゴラ都市に所属している企業から遺物取引の案件が何件も問い合わせが来ていた。
遺物を作業台の上に並べる。すべてが保存用のケースに入っており、ケースを開け、中を確認してみると、遺物は従来の性能をそのままに保存されていた。
よく持ち込まれる経年劣化で故障したものや、戦闘の余波などで破壊された遺物とは一線を画す。
大企業ですら、大枚叩いて買い付けに来るだろう。
この遺物達の価値は計り知れなかった。
ミスカは歓喜とも恐れともつかない感情に翻弄される。
(これ・・・そのまま捌いたらどえらいことになるな・・・)
あまりシドを待たせる訳にもいかない。だが慎重に査定しなければ成らない。
思っていた以上の大仕事にミスカは頭を抱えるのだった。
トラック内の陳列棚に掛けられた銃器達をシドは夢中で眺めていた。
ワーカーの力の象徴であり、シドの憧れである。前回奪ったクソザコ銃とは違い、確かな性能を持った銃がそこにはあった。
シドは旧文明製の双剣を持っている。遺跡の浅層ではコレで十分戦えるのだが、欲しいものは欲しい。
強力な銃を装備し、さらに遺跡の奥へ。
陳列された銃を見ると、シドはさらにその想いを強くしていった。
そうしてアレやコレやとガンスに質問していると
「ガンス~、ちょいこっち来て~や」
と、トラックの奥からミスカの声が聞こえた。
悪いな、とシドに一声かけ ガンスは奥に消えていった。
<イデア、どれを買う?>
シドはウキウキとした声でイデアに問う。
<遺物の販売価格によりますね。今のところ生活資金には困っていませんので、今回の収入分を予算とするのはいかがでしょう?>
<いいな!弾薬の購入費も考えないと・・・あとバックパックのカスタマイズもお願いするか!>
ワーカーオフィスで換金した時はたった2つで500万コールになった。その時は選りすぐりの物であったとは言え、今回は量を持ち込んでいる。
その辺りの金額を思い浮かべ、相応の価格帯である銃を探す。
連射可能なアサルトライフル・弾幕を張ることができるミニガン・連射は出来ないが一撃の威力を高めたMKライフル・2kmを超える射程を持つスナイパーライフル・変わり種では大型のハンドガンもあった。
いいな~欲しいな~ よし拠点を手に入れたらここにあるの全部買って壁に飾って眺めよう とアホな妄想が頭の中を駆け巡っていた。
「おーいシドー、査定終わったでー」
「あ、はいわかりました」
シドはミスカの声で我に返り、声のするほうに向かった。
奥には二人が決済端末をもってシドを待っていた。
「それで、幾らになりました?」
「あ~それがやね・・・」
ミスカが価格を言い渋り、シドは少し不安になる。
「えっと、あまり値が付きませんでしたか?」
銃の購入計画が・・・と嫌な方向に思考が飛ぶ。ここまで来てまたおあずけは勘弁してほしい。
「いやいやいや、結構な金額になったで。〆て1800万コールや」
「・・・・・」
予想を遥かに超えた金額だった。シドの頭に先ほどの壁に掛けられた銃達の映像が浮かび上がってくる。
<シド、落ち着いてください。この金額ではシドの妄想は実現できません>
<・・・イデア、思考を読むなよ>
<何を考えているか大体予想出来ましたので>
「せ・・・1800万コールですか。結構な金額になりましたね・・・」
「そうやねん。ぜ~んぶ保管ケースに入っとったからな。保存状態も最高なモンばっかりやったで。で、この値段でええか?」
「ふぁい、問題ありません」
返事のセリフを噛むシド
「よし、商談成立や!ライセンスに振り込む形でええな?」
「あ・・・いえ、その、その金額で銃と弾薬を見繕って欲しいんです。あとバックパックのカスタマイズも・・・」
「お~、ウチで買ってくれるんか!ありがたいわ~。んじゃガンス お客さん任せたで」
ミスカはガンスにパスを出す。
「おう、1800万の商談や。気合いれて対応すんで」
厳つい顔に笑顔を浮かべ、シドを連れて装備コーナーに向かうガンス。
ミスカは穏便に話が付いたことに安堵の息を吐いた。
「ほんで、どんな銃が欲しいんや?」
ガンスはシドに要望を聞いてくる。
「ん~、俺は一人で活動してるんですけど、多数のモンスターに囲まれると結構苦戦するんですよね。あと遠距離から狙撃してくるヤツにも困らされます」
「なるほどな。殲滅力が高いんはアサルトライフルやミニガンなんやが、頑丈な敵には効果が薄い。ミニガンなんかは嵩張るしな。MKライフルやスナイパーライフルは威力も射程も申し分ないんやけど、取り回しが難しくてな、近距離の敵には使いづらいな」
「ん~近距離でもある程度の威力は欲しいですね」
「アサルトライフルでもラクーン程度なら簡単に討伐できる威力はあるで。せやけど機械系のモンスターにはちと威力不足って感じやな」
「他のワーカー達はどうしてるんですか?」
「モンスター討伐を主にやっとるハンターなんかは何種類か持ち歩いとるな。その場その場で使い分けるって感じや」
「なるほど~・・・」
<シド、あのハンドガンについて質問してください>
<ん?ハンドガン?>
<はい、あのハンドガンは私のデータにあるものと酷似しています>
イデアの言うハンドガンは、普通の拳銃よりかなり大振りのものだった。
サイズも50cmを超える全長を持ち、肉厚で口径もかなり大きい。全体的に四角く、引き金やグリップの部分を覆うハンドガードが付いていた。
「えーっと、ガンスさん。あのハンドガンについて聞いてもいいですか?」
「ん?・・・あー、あれはKARASAWA A60 ってゆうてな。かなり大型のハンドガンや・・・説明聞くか?」
シドが頷くと、ガンスはこのハンドガンの説明を詳しく話してくれた。
KARASAWA A60 は唐澤重工が開発したハンドガンだった。旧文明の技術を解析し、その技術をつぎ込んで開発された。その口径はハンドガンとしてはかなり大きく、対モンスター用のMKライフル並みの大きさをもつ。
MKライフル用の弾薬を使用する事を前提に設計されており、弾丸も通常弾頭・貫通に長けたPN弾頭・衝撃を与える事に特化したSH弾頭の3種類に対応していてカスタマイズも豊富。消音機・弾頭選択装置・レーザーサイト照準器・小型拡張マガジン等々、幅広い拡張性を持っている。ライフルに比べると短銃身だが、非常に直進性が良く、減衰率も優秀である。最大有効射程は600mとライフル並みの長射程であった。カスタマイズ次第では1000mに達する事も出来る。そして極めつけは単発式では無く連射も出来るのだ、1秒間に7発の弾丸を発射可能としていた。
頑丈でメンテナンス性も高く、コツさえ掴めば簡単に分解でき、数分でメンテが完了する。
こうして聞くと非常に優秀そうに聞こえるが、この銃はワーカー達に売れなかった。
ハンドガンと言うにはかなり重く、MKライフル弾を使用するため弾薬代も嵩む。そして何より、発射の衝撃が強すぎて真面に扱えないのだ。生身の人間はもちろん低価格のパワードスーツ着用者が使用すると、撃った衝撃で後ろに吹っ飛んでいくくらいの扱いづらさ、いや、欠陥品である。
開発者「身体拡張者やサイボーグなら可能だ!」、経営・営業「なるほど!」身体拡張者「いや、普通にライフル使うって」
という具合で全く誰にも使われずにいたのだ。
単発でも真面に撃てないのに連射できます!って言われても誰も聞かない。それに拡張マガジンを買わないと3・4秒程度で全弾撃ち尽くす。正しく、どうしろってんだよこんなの、という評価に相応しい銃であった。
「とまあ、こんな感じや。参考になったか?」
シドは頷く。
<参考になった?>
<はい、理想的な銃です>
・・・・・・・・・・
<ねえ、今ガンスさんの話聞いてたよね?>
<はい。高威力で有効射程距離も長く、連射もでき耐久性・メンテナンス性に優れ、拡張性にも優れています。その上、サイズはハンドガンの域を出ませんので取り回しは非常に良いでしょう。これを選ばない理由はないと思います>
<いや、反動がすごくて使えないって・・>
<シドは身体拡張者です。それも旧文明基準での軍用身体拡張者です。いまだ全てのコーディネイトは終わっていませんが、問題なく使用できるスペックを持っていると判断します>
<いや・・・さ>
<KARASAWAを使用できるなら、中途半端な性能のライフルを購入する必要はありません。もう一丁用意するなら長射程のスナイパーライフルをお勧めします>
くっ!反論しても的確に返され、渋ったところでしっかり逃げ道を用意された。イデアは言っているのだ、ただの好みで選ぶのならスナイパーライフルにしろ・・・と。おそらく、ほとんど使うことはないのだろう。
仕方がない。ここはイデアの選択に従おうじゃないか。
「すいません、ガンスさん。このKARASAWA持たせてもらっていいですか?」
「は?!お前、これ買うつもりかいな!?」
「う~ん・・・ちょっと面白そうかなって・・・」
苦しい言い訳だ、だがガンスは棚からKARASAWAを取り出しシドに渡した。
シドは銃を握り、感触を確かめる。これでサイズが合わず持ちにくかったりしたら、文句をつけて(イデアに)買わないということもできたのだが、意外にもシックリくる。身体強化されたシドなら重さも問題なく、むしろ双剣より軽く感じる。
「・・・・・」
<問題ありませんね>
「・・・・・ガンスさん、これください」
<2丁買ってください>
「・・・・・2つお願いします」
「おう・・・毎度あり。でも・・・ホンマにええんか?」
「はい、これが良いらしいので・・・」
「?」
「あ、いや・・・それとこいつの拡張マガジンと弾薬。それとスナイパーライフルとバックパックのカスタマイズをなんかを・・・こう・・・いい感じに」
「了解や。ホンマに1800万コール使い切る感じでええんやな?」
「はい、お願いします」
ガンスが選んだスナイパーライフルはKARASAWA A60と同じ唐澤重工製のAPC 430 最大有効射程 2.5km、専用のHS弾頭を使えば発射後0.5秒で目標に着弾でき大型に分類されるモンスターにもダメージを与えられ、唐澤重工製としては一般のワーカー向けの商品となっている。
それに高性能スコープ・射撃安定機構・消音装置の取り付けを行う。
あとはバックパックのカスタマイズだ。
弾薬を大量に収納できる専用カートリッジを取り付け、マガジンをセットすると自動で給弾してくれる。ノーマル品で容量拡張式となっており、見た目からは考えられない弾数を保持できる。旧文明の技術を使用して開発されたパーツだ。
それをそれぞれの弾種によって取り付け連携させる。これでマガジンをセットすると、3種類の弾丸を消費した量に合わせて給弾してくれる。
重量操作機構をさらに高性能の物に取り換え、大重量の荷物になっても使用者の負担を軽減できるようになった。
最後に防護服だ。今着ている物の基本性能を向上させ、頭部はフードではなく簡易エネルギーシールドで守られ視界の確保が容易となる。
高性能グローブがセットになっており、高反動の銃を使うワーカーには人気の品だった。そしてバックパックが邪魔にならないところに補助アームがあり、銃器やマガジンの複数保持が可能になっている品だった。
なかなかな欲張り仕様である。
「こんなもんか?これ以上ってなると揃えるまで1.2週間は時間がかかってまうな」
「いえ、これで十分です。ありがとうございました」
「おう、久々の大商いや!こっちこそ毎度おおきに!!」
シドは、遺物の売値から購入した装備の値段を引いた分をライセンスに入金してもらい、トラックから出て宿に帰っていった。
それを見送るガンス・ミスカの二人。
「ホンマにごっついガキやったな~」
「ビルから普通や無いって聞いとったけど・・・あれは異常やで」
「マジでほぼ つこーてく(使っていく)とは思わなんだわ」
「これはこれからええ商売が出来るかもしらへんで?!」
「その前に、お前はあのブツ捌く方法考えや」
「・・・・うん」
客が帰っても二人の仕事は終わらない。
そして、二人は知らない。シドはまた、同じような遺物を持ち込んでくることを。