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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
114/213

キクチの出世? と増える仕事

シドとライトは自分たちの拠点まで帰ってくる。

既に火は消し止められているが、2階と3階は真っ黒になっておりここに住み続けることは無理だろうという事は見てわかる。

しかし、シドの装備はまだ建物の中に残っているし、車や弾薬などは運び出さなければならない。


車と弾薬は一階の車庫に保管されており、シドはそれらの事をライトに任せ自分の装備を確認する為に2階に上がって行った。


リビングルームに上がると、あのナパーム攻撃のせいで完全に焼けてしまい、家具からその他設備まで完全に使い物にならなくなっている事が一目でわかる。

ソファーやテーブル、高性能という触れ込みで買ったモニターは燃えてしまい見る影もない、キッチンの方に目を向ければ調理台は溶解し、買いそろえた食器や調理器具、長期間生鮮食材を保存できる高性能冷蔵庫も高熱により変形していた。中の食材たちは確認するまでもなく全滅している事が分かる。


シドは今まで暮らしていた生活空間が破壊されている事を目にし、再び怒りの感情が沸き上がって来た。

<クソ・・・・あいつら、もっと痛めつけてやれば良かった・・・・特にイザワ!!!>

<仕方ありません。それに、彼らを拷問に掛けたとしても時間が巻き戻る訳ではありません>

「・・・・・・・ふ~・・・・」

シドは湧きあがる怒りを抑え込み、自分の装備が仕舞ってある保管庫の方を確かめに行く。


銃や刀を収納しているケースは表面を炎に焙られ、若干の変形はあるが中身は完全に保存されている事が確認できた。

防護服を保管している専用の収納ケースの方は、あの炎の中でも無事で、多少煤けてはいるものの変形や損傷は見られない。中の防護服も完璧に保存されており、着用にも問題なかった。

「相変わらず高性能なことだな・・・・」

<流石は唐澤重工といった所でしょうか>


シドは防護服を着用し、収納ケースの中からS200と刀を取り出す。ちなみにPST-バレルは車の中のガンラックに置いていた為、火災の影響を受けていなかった。

それをそれぞれ身に着け、唯一無事と言える防護服のケースを持つと再度部屋の中を見渡した。

もう一度、部屋の惨状を目に焼き付けライトが作業している1階の車庫へと降りて行った。


1階に降りると、ライトは弾薬などの積み込みを終わらせており、シドの事を待っていた。

「あ、お帰りシドさん」

「ああ・・・・コイツらが無事でよかったよ」

そう言い、シドは自分の装備に目を向ける。

「そうだね、装備がPST-バレルだけだったら遺跡にも行けないし。ミスカさん達が戻ってくるまで都市でジッとしてないといけない所だったよ」

「そうだな・・・・」

元気のないシドの様子を見てライトは上の惨状を察する。

「・・・・・やっぱり全滅だった?」

「・・・・ああ」

「そっか・・・」

ライトも残念なのだろう。居住空間にやたらと手を加えていたのはライトの方だったのだから。

「とりあえずダゴラ・インに行こう。あそこならまだ快適に過ごせるからね」

「そうだな、キクチにまた拠点の手配を頼まないとな」

「そうだね」


2人は車に乗り込むと、昨日チェックアウトしたばかりのダゴラ・インへ向かって車を走らせた。



その頃のキクチ達


キクチは、中央崇拝者達がアジトにしていた施設を探索したワーカー達から上がってくる報告を処理し、ヤシロ達が救出して来た一般人達の保護に追われていた。

ヤシロ達の報告では、施設内にもう生きている敵はいないとの事でスカベンジャー達にも協力を仰ぎ、施設内の死体と設備や記録などを運ばせる。

これらのモノはワーカーオフィスへと運ばれ、徹底的に調べられるだろう。


救出された一般人の数は全員で63人。シドから聞いた通り、殆ど者は動く気力も無い様で地上に運ぶのも一苦労だった。

彼らはワーカーオフィスが用意した施設に一時滞在し、治療と聞き取り調査を行った後、住んでいた都市にまで送られることになった。


ブルーキャッスルの捕縛に向かった警備部門の者たちからも、全員の捕縛が完了したとの連絡が入っている。

その中にはブルーキャッスルのギルドマスターと都市幹部の一部も含まれており、そのままワーカーオフィスの留置所に運ばれていったようだ。


これでこの騒動もひと段落かと思っていたがそうでもない。

ミナギ方面防衛拠点にまで遠征させられていた防衛隊と治安維持部隊だが、スタンピードの予兆が偽情報だったと言う事に気付いたのだ。

防衛拠点に到着した際に情報のすり合わせを行おうとすると、防衛拠点担当者は何のことか分からなかった。

全く話が噛み合わず、ダゴラ都市に連絡を取っても確認すると言うのみで話が進まない。

どうなっているのか?と防衛隊と治安維持部隊の責任者同士で相談をしている所に、喜多野マテリアル 部門長ゴンダバヤシ直下の担当者から連絡が入る。


その時に、自分達に指令を出す都市幹部達が自分達の利益のために企業を裏切っていたことを知らされた。

自分達が嘘の危機情報で遠征させられている間に、防壁内で銃撃戦が行われたと言うのだ。

両隊の責任者はその話を聞き呆然とした後、直ぐに隊員たちに説明。全員をすぐさま纏め上げ、全速で都市にまで帰還した。


今現在、都市に帰還した両隊は、ゴンダバヤシの命令を受け都市幹部を対象とした大捕り物を行っている最中の様だ。

防衛隊と治安維持部隊の隊員達は、モンスターの脅威や犯罪から都市を守ることに強い誇りを持っている者達が多い。

なのに都市を守ることを第一に考えなければならない立場の幹部達が、私利私欲の為に中央崇拝者と繋がり騒乱の引き金を引いたと聞いて怒り狂っているらしい。

かなり過激に捕縛作業を行っている様で、それが終わればワーカーオフィスとも会議の場を設けたいと言って来ている様だ。


統括直々にその話をされ、寝不足で霞掛かった思考を無理やり引き締める。

そうしていると、ヤシロとレオナがキクチの所にやって来た。


「ようキクチ。おつかれさん」

「おつかれ~キクチ。お弁当持ってきたよ、ヤシロが」


流石高ランクワーカーなだけあり、徹夜明けだというのに二人とも元気だなとキクチは思う。

「ああ、ありがとう。コイツの中で食わせてくれ」

キクチはトレーラーを指し、2人をトレーラーの中へ案内する。

「こんなのしか無いが勘弁してくれ」

キクチは水が入ったボトルをヤシロとレオナそれぞれに放り投げ、自分も席に着く。

夜通し作戦の指揮を執っていたため腹ペコだった。

ヤシロから貰った弁当の梱包を解きパッケージを見ると、【極厚焼肉弁当!ニンニクビタビタ!!】と書いてあった。

流石にこれを徹夜明けの一般人が食うのはキツイと思い、2人を見る。

すると2人も同じ弁当をテーブルの上に広げ、食いつこうとしている所だった。

「・・・・・お前等、徹夜明けにコレ食うのか?」

豪快な一口を頬張り咀嚼しているヤシロにそう尋ねる。

「ん?・・・・モグモグ・・・ゴックン・・・そりゃーな、ワーカーは体力勝負だ。ガッツリ食っとかねーと体力が持たねーだろ?」

俺はワーカーじゃねーよ!!とキクチは思ったが、奢ってもらった弁当に文句をつけるのも非常識かと思い、仕方なく弁当の包装を開ける。

キクチの様子に気付いたのか、レオナがキクチに声を掛けた。

「キクチに焼肉はきつかったかな?ならコッチ食べる?」

レオナが渡してきたのは円柱の弁当箱だった。

「これは?」

「これはね、ダゴラ・インで最近作られた雑炊弁当だよ。あそこの料理人がさ、この前の訓練で胃が普通の食事を受け付けられないって言ってた子の為に作ったんだって。評判が凄くよくて商品化されたみたいだよ」

「ほ~・・・」

あそこの料理人はなぜ防壁外の宿で仕事をしているのかと思うくらいに腕がいい。

新しい訓練所ができたら、そこで腕を振るってほしいと思うくらいだ。

「ここのボタンを押すと温めてくれるみたいだよ」

レオナはそういい、弁当箱の横にある赤いボタンを押す。

10秒ほどで温め終わったのかランプが消え、キクチは蓋を開けてみる。

中は程よく温まった雑炊が入っており、食べやすいように細かく刻まれた野菜や肉の姿も見える。

一口食べてみると、雑炊はホカホカとした温度を保っており、程よい塩気と出汁の優しい味が舌に感じられる。野菜も肉も柔らかく煮込まれており、出汁を吸った米と一緒に食べても違和感が無く非常に美味しい。少しだけ味噌とショウガの香りが立ち、弱った胃に優しく、それでいて食欲を掻き立ててくれる。

一口食べると、胃が空腹を思い出したのかの様に次を要求してくる。

キクチは雑炊を掬うスプーンを速め、一息に雑炊を平らげた。

「ふ~・・・・」

一息ついてみるが、なんだかまだまだ食べられそうな気がする。

ヤシロとレオナの方に目を向けると、2人は既に食べ終わっており、キクチの様子を観察していた。

「ま、それだけ食えるなら心配なさそうだな」

「そうだね~、これからも事後処理があるんだろうし、がんばってね」

そういうヤシロとレオナの前には空の弁当箱が積まれており、この短時間でどれだけ食ったんだとキクチは呆れてしまう。

レオナは小さいケースからタブレットを取り出し口に入れ噛み砕く。ヤシロの口にも無理やり突っ込んでいた。


「・・・・ああ、助かったよ。レオナ、それは?」

「ああ、コレ?これは匂い消しだよ。乙女としてニンニク臭は消しとかないとね~♪」

レオナはケースをフリフリしながらそう言った。

「・・・乙女?」

「なんだいキクチ?死にたいのかな?」

レオナは笑顔でキクチを脅す。

「ああ・・いや、何でもない・・・・・それで、あまり詳しくは聞いてなかったが、施設の中の様子はどうだった?」

キクチは、緩めてしまいそうな意識を引き締め、ワーカーオフィス職員としての職務を果たそうとする。

「・・・・あの施設の中では、なにかの生体実験が行われていたのは間違いない。設備やデータも出来るだけ回収したから調査すれば全容がハッキリするだろう」

「そうだね、軽く目を通したけど、たぶん身体拡張に関する実験だと思うな」

レオナは奴等の研究データを見て、内容をある程度推測している様だった。

「身体拡張?」

「そう、今ワーカー達が受ける身体拡張みたいに、外部からナノマシンを補給するタイプじゃなくて無補給で拡張状態が継続されるモノを研究してたんじゃないかな?」

「・・・・・そんなモノが開発されてあのキチガイ共に広まったら・・・・」

「そうだね、それこそ6大企業が手を組んで当たらないとマズい事になる可能性が出てくるんじゃないかな?」

キクチはこの案件はさらに大きいモノになるのでは?と考え始める。

「まあ、この施設は接収できたし、逃げようとした連中はライトが完全に抹殺してる。そこまで心配する必要ないと思うぞ」

ヤシロがそういい、考え込みそうになっていたキクチを止める。

「・・・・・・そうだな。この件は不幸中の幸いか・・・」

キクチは奴等の実験内容はとりあえず考えない事にした。

「それで?シドの大暴れの結果はどうだったんだ?」

「・・・・・・・」

「・・・・・まあ・・・ね。だいぶ怒らせたんだなってのは一発で分かったよ」

施設内は余程酷いことになっている様だ。

「そこら中に潰された敵の残骸があってな・・・・」

「戦闘用オートマタに襲撃されてもあそこまで酷いことにならないんじゃないかって思うくらいに・・・」

この2人が言い淀むという事はかなりの惨状なのだろう。回収に向かったスカベンジャー達には気の毒なことだった。

「・・・・連中はシドに何やったんだ?普通あそこまでの殺され方はしないぞ?」

「ライトの話だとブルーキャッスルの連中と組んで、シド達の拠点にナパーム弾をぶち込んだらしい。拠点は2階以上は全焼してるだろうって炎の勢いだった・・・・」

「・・・・・本当に余計な事しかしねー連中だな・・・」

「ほんとに・・・・・・」

ヤシロとレオナはブルーキャッスルの名前を聞くと顔を顰める。

「そうだな・・・カズマってヤツはライトと戦って頭を吹っ飛ばされてたよ・・・」

元ギルドメンバーの最悪の最後を聞き、2人は沈痛な表情を浮かべる。ヤシロもカズマの事は嫌っていたが、事務・教育派閥の行き過ぎた優遇と教育方針が無ければギルドを支える柱の1本に成れるかもしれない才能が有ったことは間違いなかった。

このまま奴等を放置すればギルドが真っ二つに成りかねない。

どうにかして抑え込むか、排除する方法を考えなければと悩むヤシロ。

ヤシロはギルド古参メンバーの中では若手に入る。だが、今のギルドマスターに拾われ、才能を開花させてもらった恩があり、天覇に対する思いは人一倍強かった。

「とりあえず、今回の事はこれで終わりだね。中央崇拝者の生き残りもいないし、処理が終わったらこのチームも解散かな?」

レオナがそういうと、キクチも同意した。

「ああ、もうじき撤収作業に入るだろう。お前たちもご苦労だった」

「緊急依頼を受けておけば評価も上がるしな。問題ない」

「また困ったことがあったら声かけてよ。事務仕事以外で」

レオナは茶化す様にキクチにいう。これからキクチは報告書の作成などにかからなければならない。つい先ほどの話だが、統括の意向により、キクチは総務から新しく作られたイレギュラー対応部(仮)に部署替えされたのだ。

当然の様に、部員はキクチ一人。本来なら左遷と取っても可笑しくないのだが、キクチの裁量は他部の部長より上であり、かなりの裁量と権限が与えられている。

このことから統括であるクリスティア・マガラがシドとライトに注視している事を示し、キクチは彼らの担当から逃げられなくなった事を示していた。

(直ぐにでも人員が欲しい処だな・・・・)

これからもあの2人が起こす?遭遇する?騒動の後始末に翻弄される日々を想像してキクチは一人肩を落とすのだった。



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